気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2014-05-19 19:18:44 | 朝日歌壇
全村避難の村の桜はさみしかろしいんと咲いてしいんと散って
(福島市 美原凍子)

日本人の顔は変わりぬ喜多院の五百羅漢に仲間はおらず
(東京都 野上卓)

百体の木彫りの仏像一体ずつ横に寝かせて閉館の五時
(東京都 豊英二)

***************************************

一首目。東日本大震災から三年以上が経ち、離れている者は忘れがちだが、全村避難という現実を思い出させる歌。桜に思いを寄せて詠って、切ない。「しいんと」の繰り返しが効いている。
二首目。喜多院の五百羅漢を知らなかったので、ネットで検索して川越にあることを知る。石像を見て自分の親に似た像を見つけるという歌をときどき見るが、この作者は、日本人の顔が変わって見つけられないという。これもまた独自の見方かと思う。確かに日本人はおしゃれになって、若い人でこのような顔の人は少ないが、年配だとどうだろう。いずれにしろ、言いきっているところが強い。
三首目。こちらは木彫りの仏像を寝かせるという。博物館だろうか。地震などで壊れないように、閉館後は寝かせる。その場で働いていると、こういう仕事もあるのかと感心した。