気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2013-02-18 20:49:49 | 朝日歌壇
シェアしてた体に別れの一蹴りを加えて我が子は生まれ出でいく
(東京都 黒河内葉子)

蠟梅は琥珀色した莟(つぼみ)からひいふうみいと時間をほどく
(松阪市 こやまはつみ)

一時間犬と話して帰りゆく女子中学生ありがたうと言ひ
(前橋市 荻原葉月)

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一首目。出産の歌だが、珍しい視点で詠まれていて新鮮に感じた。母親の胎内に子供を宿すとは言うが「シェア」には驚いた。確かにそうなんだ。別れの一蹴りというのにも、カラっとしたユーモアを感じる。
二首目。蠟梅は寒い時期にも春に先駆けて咲く花。下句の「ひいふうみい」がゆったりした時間の流れを感じさせる。
三首目。女子中学生は犬と話しながら、自分と対話しているのだ。また、家族や友達に言えないことを言っているのかもしれない。人間関係に不器用な様子が窺える。こういう時期を経て、大人になっていくのだろう。「ありがたう」に彼女のやさしさが表れている。

短歌人2月号 同人のうた その2

2013-02-18 01:02:40 | 短歌人同人のうた
つはぶきの葉に半身をうづめたる石仏に師走一日の光(かげ)
(大森益雄)

人形を作らぬ秋はさびしいと退(ひ)きていふ菊師はわれと同年
(蒔田さくら子)

ゆるやかにほどかれてゆく心根に若草のごとき老境はあり
(三井ゆき)

はなびらの剥がれるように忘れゆくあなたの顔を声よりはやく
(内山晶太)

洗たくもの干せばはしから凍みてゆくふるさとのふゆ遺詠のごとし
(紺野裕子)

ながく病み味覚おちると思ふ日の柚子の葛湯は胃腑をあたたむ
(椎木英輔)

母は子を亡くした後も母なりや関東平野に火事を求めて
(八木博信)

天皇の病状報ずる新聞にくるまれていた未使用の皿
(村田馨)

物思い一日分の重みかなかりんひとつを手にまろばせて
(守谷茂泰)

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短歌人2月号、同人1欄より。

そのをとこ心斎橋を渡りゆくむかしなじみの魚の目つれて
(近藤かすみ)