気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2013-02-25 18:05:39 | 朝日歌壇
ああつひに席譲らるる日の来たり決めたとほりにありがたう言ふ
(半田市 石橋美津子)

柔らかき冬日の中に目を細め膨らんでいる雀の孤独
(千葉市 愛川弘文)

諭吉らは今より長き毎日に恵まれしかやヅーフの写本
(京田辺市 田内正夫)

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一首目。年配になるとバスや電車で席を譲られる日が、いずれ来るだろうと覚悟していて、やはりそうなったという歌。「決めたとほりに」で作者の事前の覚悟がわかる。しかし、年配に見えるかどうかを別にして、荷物が多い人を見かけると席を譲ることも、譲られることもあり、作者の意識がやや過剰な気もする。「ありがたう」に作者の人柄が垣間見える。
二首目。四句目までは写実の歌だが、結句に「雀の孤独」を置いたことで、擬人法の歌になった。孤独なのは、作者の方で、その意識の反映として「孤独」という言葉が出たのではないか。結句を「一羽の雀」などとして写実に徹する方法もあるだろう。
三首目。「ヅーフの写本」は、幕末の蘭和辞典のことらしい。諭吉の時代に比べて、今の私たちは携帯電話やインターネットの普及で、いつも人と繋がっていて、なんと忙しいことか・・・。作者の嘆きが聞こえてくる。