気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2013-01-28 18:40:15 | 朝日歌壇
サファイアの指輪を埋めたような眼で石首魚(いしもち)が見る包丁の下
(横浜市 中川節子)

地のちから一本ごとに感じつつ大根をひく地震(なゐ)を恐れて
(岐阜県 高岡勉)

特急が金沢駅に置いてゆく越中の雪越前の雪
(高岡市 池田典恵)

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一首目。作者は一尾の魚を料理できる方なのだ。まな板の上の石首魚を調理しようとした瞬間、魚と目が合ってしまって、それがサファイアのように輝いて見えた。多少の罪悪感はあっても、料理はされたのだろう。比喩が秀逸な一首。
二首目。地のちからは、大根を育てる土の養分のことだろう。きっと太くて立派な大根なのだ。しかし、一本を抜くと、それがきっかけとなって地震が起きないかと心配になる。まさに杞憂であるが、時期が時期だけに、不謹慎ながらおかしみを感じてしまう。
三首目。特急電車の屋根に積もった雪は、電車が通ってきた道すがら載せてしまったもの。その雪が金沢駅に落とされてゆく。冬の旅情を感じさせる歌。いや、こういう見方は雪で大変な地域のことを「他人事」と見ている冷たい視線なのだろうか。