気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人1月号 同人のうた その2

2013-01-09 23:53:15 | 短歌人同人のうた
鬱という字面はむしろ安らけし森の深きに憩うに似れば
(宮田長洋)

海に向き頭を垂れるひとのいて陸前高田のふかきゆうぐれ
(佐藤慶子)

通り雨たちまち過ぎて物干しへ戻すTシャツ触りて選ぶ
(林悠子)

木の椅子の背凭れに古き傷ありて隈なく照らす天心の月
(平野久美子)

自転車を漕ぎては母のまくらべへ行きは追ひ風かへり向かひ風
(小池光)

若き日の五人の写真を覗きこむ無事詠み継げるはこの友とわれ
(蒔田さくら子)

誕生日より忌日を記憶することの多しと気づく秋明菊のまへ
(斎藤典子)

霜を踏む運動靴のよろこびを知りたる吾は昭和の子供
(藤原龍一郎)

水溜りに雲往き鳥往き人往きて乾きたるのち何も映さず
(菊池孝彦)

今もなお私の前に母が居て数多の針に糸通しおり
(卯城えみこ)

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短歌人1月号、同人1欄より。

肩かぜをひくよと母のこゑのして枕屏風に咲く萩のはな
(近藤かすみ 短歌人1月号)