気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2012-01-23 19:39:34 | 朝日歌壇
泣きやみし生徒と体育館へ行きたった一人の終業式する
(稚内市 藤林正則)

青丹よし奈良の都の冬すみれ礎石に添いてほつほつと咲く
(蓮田市 斎藤哲哉)

玉鋼(たまはがね)作り出す炉の工事なり清めて始め終りて清む
(前橋市 船戸菅男)

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一首目。過疎地の生徒数の少ない学校だろう。一首のなかで、生徒と先生の気持ちや状況やさまざまなことが読み手にわかる。情報の入れ方がうまい。
二首目。とくに変わったことも詠っていないのだが、さりげなさが魅力。枕詞の使い方もよく、冬すみれのけなげな様子が目に浮かぶ。
三首目。「作り出す」「なり」「清めて」「始め」「終りて」「清む」と一首の中に六個もの動詞が入っている。普通、動詞は二、三個と言われているが、工事の躍動感や安全を祈る気持ちが伝わってくる。短歌を作るとき、たいていはこうするというノウハウがあるが、それをはみ出して成功した歌だ。