気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

草舟  花山多佳子

2009-08-20 19:58:57 | つれづれ
制服のスカート上げて河の中ゆく少女らは楽譜のごとし

夜の風に花火流るる大きい子小さい子それぞれ持てる高さに

家に来て二日目になる人形が吾子と夕餉の卓につきたり

鉢植えの小さき合歓も病葉を落とし尽せる一日がありぬ

壁に貼る地図・カレンダー少しずつ剥がれ傾ぎて立秋を過ぐ

腰のあたりに帯のようなる熱気あり驟雨のあとの秋草の上

従き来ると思いし吾子は道に見えずしだれ桃の葉雨滴せり

咳を鎮める歌集はなきか積み置ける中ほどより抜く咳をしながら

永遠が行ってしまったという顔のウサギの口より蔓草垂るる

洗濯機の暗き底より拾い上ぐる縒れた赤い羽根・学校の名札

(花山多佳子 草舟 花神社)

**************************

先日、下鴨神社の古本まつりで購入した花山多佳子の第四歌集『草舟』を読む。
1993年4月発行なので、十六年前の歌集である。ながらみ現代短歌賞を受賞している。
二人のお子さんの歌、植物の歌が多い。上の娘さんの花山周子さんは当時中学生だったようだ。
ウサギを飼っていたり、花山家は雑然としている様子。これを読むと私は芯から心が慰められる。
二首目。姉と弟が花火をしている様子が、背の高さに注目することで巧みに描かれている。
五首目、六首目はちょうど今の季節にぴったりの歌。今年は秋が来るのが早い気がするが・・・。
七首目。こうして子供はだんだん親から離れていく。結句は「あめしずくせり」と読むのだろう。下句で子供と関係のない植物を持ってきたのが、花山多佳子らしい。だからさみしいなどとは言わない。
八首目。これは笑ってしまう。私も同じようなことをしているから。
洗濯機の歌も、赤い羽根、学校の名札という具体が出て面白い。