気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2009-08-10 23:53:49 | 朝日歌壇
塀越しに凌霄花(ノウゼンカズラ)の咲く里はどこ見ても夏寝ていても夏
(茨城県 木野内清太郎)

一匹の蟻テーブルに遊ばせて茗荷の花の絵手紙を描く
(熊本市 徳丸征子)

両羽も尾羽も広げて庭に干す梅雨の晴れ間の二羽の山鳩
(四万十市 島村宣暢)

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一首目。凌霄花(ノウゼンカズラ)はいまごろの季節によく見かける花。正岡子規の句に「凌霄や温泉の宿の裏二階」がある。身近にあり夏らしい趣がある。結句の「寝ていても夏」が夏の盛りの暑さ、倦怠感を醸し出す。
二首目。一時期、流行した絵手紙はいまも流行っているのだろうか。一生の趣味として楽しむ人も多いと思う。絵手紙を描いているテーブルに蟻が載っていても気にしない。むしろ絵のモデルとして描いてみようと作者は思っている。「遊ばせて」ということばから、茗荷の花も蟻も材料にするおおらかさを感じる。余談だが、私は茗荷が大好き。味噌汁に入れて食べるが、あの独特の風味がたまらない。
三首目。鳩などの鳥が羽根を広げて干すという発想が面白い。人間も梅雨の晴れ間には、いそいで布団や洗濯物を干すのだから、鳩も干しているのか。日にあてて干した羽根で飛ぶと気持ちがよいのだろうか。想像ではあるが、ありそうな話だ。初句「両羽も」が四音で字足らずなのが、気になる。「りょうば」と読むのか、ほかの読み方があるのだろうか。
「両の羽も」「両翼も」として五音にする工夫があってもよい気がする。