気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2009-08-04 01:43:27 | 朝日歌壇
あの、あの、あのガーファンクルが歌ってるオペラグラスの中に目があう
(さいたま市 田中富子)

バスを待つかこの風に乗ってしまおうか夏が私のとなりで笑う
(富山市 松田由紀子)

額縁の絵のごと軍艦島ありて置き去りの町置き去りの靴
(茨木市 瀬川幸子)

*************************************

一首目。作者はサイモン&ガーファンクルの日本公演に行かれたのだろう。長いあいだ待ち続けた二人を見て、興奮している様子がよくわかる。「あの、あの、あの」という初句を見たのははじめてではないだろうか。臨場感のある一首。
二首目。バス停で、バスを待つか歩くか迷っている歌。下句の「夏が私のとなりで笑う」が秀逸。清涼飲料水のキャッチコピーにもなりそうな名文句。それも上句の場面設定があればこそなのだが。
三首目。ウィキペディアで調べると、
「端島(はしま)とは、長崎県長崎市(旧高島町)にある島である。かつては海底炭鉱によって栄え東京以上の人口密度を有していたが、閉山とともに島民が島を離れ現在は無人島である。その外観から軍艦島(ぐんかんじま)の通称で知られている」とある。
下句で視点が「置き去りの街」から「置き去りの靴」へと、小さいところに行くのが面白い。