気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2007-10-22 22:27:39 | 朝日歌壇
全身を火がつらぬきて母となるみどりごに乳吸われたるとき
(神戸市 西塚洋子)

「あなたのこと少し忘れていいですか」曼殊沙華咲く夫の忌日
(町田市 古河公子)

ひそかにも慕いし人の訃報知りわが生涯の秘めごと終る
(福岡市 財津育子)

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一首目。上句の表現が強烈。母となるということは、そのくらいの衝撃のあることなのだ。子供にお乳を飲ませた記憶は、わずかに残っていて、ふと気持ちを和ませてくれる。
二首目。結句に夫の忌日とあるところを見ると、作者のだんなさまは亡くなられたのだろう。それでも思い続けていて、少し忘れていいですか・・と尋ねている。なんともいじらしいが、関西人の私としたら「ほんまかいな」とつっこみたくなる。生きている夫であっても、いつも心配していたら、こちらの身が持たない。夫婦にもいろいろある。
三首目。つい作者は独身だろうかと気になった。既婚でこういう歌が新聞にでれば、やはり問題ではないだろうか。結社誌なら、別に問題ないが。わが生涯の秘めごととは、大げさな表現。そのくらい強く言わなくては読み手のこころを動かせないのだろう。

ほんたうのことはいつでも壺の中ときのまにまに窯変しをり
(近藤かすみ)