気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

川明歌集 たましづめのうた嘉義丸

2007-10-10 21:58:09 | つれづれ
<戦死せる父>を持たざる選良のかろがろと説く九条改廃

おぢいちやんと呼ばるることなく<戦死>せり非武装商船船長の父

「民間船無差別攻撃あつたなど知りませんでした」とテレビマン言へり

戦死せし父の最期を見し人とやうやく逅(あ)ひ得き 六十二年・・・

「お父様は船長室に鍵をかけ船と一緒に沈まれました」

<戦死>せる徴用船員名簿見つ 十四歳は九百五名

父の墓西日を背負ひ湾越えて噴煙あぐる桜島にむく

(川明 たましづめのうた角川書店)

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短歌人の同人、川明の『たましづめのうた嘉義丸』を読む。
作者のお父さまは、非武装商船嘉義丸の船長であり、船が米軍の魚雷に撃沈されたことにより<戦死>された。作者はその事実を、62年ぶりにテレビの取材をきっかけに深く知ることになる。その無念を後世に伝えるのに、短歌連作という方法で、実践されたのがこれらの作品。多くの人に実際に本を手にとって、作品全部を読んでいただいたいと願う。