2010年にローマを訪れたが、3日間の滞在中、多数の遺跡、充実の美術館・博物館に圧倒されっぱなしだった。そのローマのカピトリーノの丘に建つ、世界的にもっとも古い美術館の一つといわれるカピトリーノ美術館のコレクションが展示されるということで、早速訪れた。ローマ訪問時は、とにかく見どころばかりで、観光疲れで、カピトリーノ美術館は行けなかった。
建国神話から古代ローマからルネッサンスを経て17世紀にいたるまで、彫刻・絵画・コインなどの遺物(複製品も含まれるが気にならない)が展示されている。たっぷりとローマ世界に浸れる。私には、絵画よりも彫刻がローマらしく、強烈な引力に引き寄せられた。
中でも、目玉作品の一つである《カピトリーノのヴィーナス》の美しさは別格。初来日であることはもちろんのこと、海外に出て展示されたのは3回しか無いという逸品である。そのリアリティある豊かな肉感の美しさは格別。さらに、胸や恥部を隠す仕草が仄かに官能的。エロおやじに見られるのは癪だが、その場を離れることを許さないような磁力があった。この作品を見るだけでも、本展に来る価値があると思う。
(ポスターから)
歴代ローマ皇帝たちの彫像も素晴らしい。有名なヨーロッパの美術館に行けば必ず置いてあるものだが、久しぶりにアウグストゥス帝、カラカラ帝、ハドリアヌス帝らの再会は懐かしい。《コンスタンティヌス帝の巨像》もその大きさに圧倒される。貪って読んだ塩野七生さんの『ローマ人の物語』がまた読みたくなった。
(パネル)
トラヤヌス帝記念柱関連の展示も良かった。ローマで現物を見ているはずなのだが、とにかく遺跡が多すぎて、何をどこまで見たのか記憶がぼやけている。ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ《トラヤヌス帝記念柱の正面全景》のエッチングの精巧さは目を見張るし、トラヤヌス帝の偉業が彫られた柱の一部の複製展示も、彫り込まれたその時代の出来事に想像が及ぶ。
モエシアの艦隊(トラヤヌス帝記念柱からの石膏複製)
デケパルスの自殺(トラヤヌス帝記念柱からの石膏複製)
展示品の数は80程で、さほど多くはなく、金曜の夜間開館時間帯に訪れたので、とっても落ち着いて鑑賞できた。ローマ好き、イタリア好きの人には堪らない展示である。
2023年9月29日訪問