その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

吉田羊さんのハムレット:PARCO STAGE「ハムレットQ1」(演出:森新太郎)

2024-06-04 07:33:19 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

(時系列ぐちゃぐちゃの投稿続きますが、先月見たお芝居の感想です。)

吉田羊さんがハムレットを演じるということで、慌ててチケットを購入した。Q1のテキストも安西徹雄  訳で一読済。

想定通り、非常にサクサクとテンポよく進む展開で、鑑賞者の集中力が途切れることがない。吉田羊さん、吉田栄作さんを始め、テレビ等のメディアで目にする俳優さんも多く出演し、熱籠ったプロの演技を楽しんだ。

吉田羊さんのハムレットは、女性が演じていることを感じさせない若き貴公子ハムレットだった。凛々しい。台詞廻しも歯切れ良く、所作もスマートで美しい。復讐のための欺きとして、気が触れたふりをする阿呆ぶりも、声の変化が豊かで楽しめる。流石、ここ数年引っ張りだこの女優さんという感じだ。悩める青年ぶりは少し弱いと感じたが、これはむしろQ1の台本に拠るものだと思われる。

もう一方の吉田栄作さんは、先のデンマーク王(亡霊)と現王クローディアスの2役を演じた。興味深かったのはクローディアスの演じ方で、この物語の契機となる先王を殺した諸悪の源の悪人としてはあまりにも格好良すぎて、立派だった。クローディアスは、人間的に醜悪で、権力欲にまみれ、ギトギトしたエロオヤジの理解なのだが、そうは見えない人物に見えたのは、そういう人物設定としての解釈なのか、それとも吉田栄作さん自身のかっこいいオーラが強すぎたせいなのかは、ちょっと私には判別つがず。いずれにしても、この王であれば、王妃ガートルードが、先夫が無くなって2ヵ月もしないうちに、その弟である現王と再婚するのも致し方ないか。逆に、ガートルードこそ色狂いではないかとも思ってしまう。

このドラマ、ポローニアスが隠れ主役とも言えると思うが、佐藤哲さんがしっかりと安定して、俗物ぶりを演じていて良かった。途中、台詞忘れ?にも見えなくもないところもあったが、その凌ぎ方も流石(私の誤認であればゴメンナサイです)。

オフィーリア役の飯豊まりえさんも頑張って、ひたむきな演技。驚いたのは、フォーティンブラス役も担当。このノルウエイの若王子ぶりが凛々しくて、惚れ惚れ。最初誰だかわからず、「これは誰?」と動揺した。

舞台は、岩山を背景にしたような基本セットを照明や幕等を上手く使って、セット変更は無く様々な場面を作っていた。音楽が時折挿入されたり、劇中劇は歌で台詞を語るところもあり、こんな見せ方もあるのねと楽しめた。

丁度、彩の国の劇場で『ハムレット』を上演中で、そちらも興味があったのだが、日とチケットの空きが合わず観劇ならず残念。比較出来たらなお、楽しめただろう。

それにしても、シェイクスピア劇は特にそうだが、外国の芝居は本当に言葉の洪水だ。よくもまあ、あれだけの言葉を発することができるものだと感心する。そもそも比較が適切かという問題はあるが、前回見た平田オリザさんの『S高原から』の沈黙や間の長さとのあまりにも違いに戸惑うほどだ。良い悪いではないが、外国劇は疲れるわ~。

(2024年5月14日)

 

作:ウィリアム・シェイクスピア
訳:松岡和子
演出:森新太郎

出演
吉田 羊 飯豊まりえ 牧島 輝 大鶴佐助 広岡由里子
佐藤 誓 駒木根隆介 永島敬三
青山達三 佐川和正 鈴木崇乃 高間智子 友部柚里 西岡未央 西本竜樹
吉田栄作

STAFF
美術=堀尾幸男 照明=佐藤 啓 音響=高橋 巌 音楽=落合崇史 衣裳=西原梨恵 ヘアメイク=河村陽子 アクション指導=渥美 博 演出助手=石田恭子 舞台監督=林 和宏

宣伝=DIPPS PLANET 宣伝美術=東 學(一八八) 宣伝写真=渞 忠之 宣伝衣裳=宮本真由美 宣伝ヘアメイク=河村陽子

制作=麻場優美・大友 泉 ラインプロデューサー=冨士田 卓 プロデューサー=尾形真由美 製作=小林大介


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