その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

N響定演 Aプロ/ブロムシュテット/ブラームス交響曲 第2番、3番

2013-09-23 19:35:12 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 オーケストラの音合わせが終わって、コンサートマスターが席に着く。暫く間を置いて、指揮者が舞台袖から登場し、聴衆は拍手で出迎える。この時の拍手の大きさや質はその日の指揮者によって大きく違ってくる。

 ブロムシュテットさんを迎える拍手は大きく、何より暖かい。85歳の高齢にはとても見えない溌剌としたマエストロに、聴衆は皆、歓迎の意と尊敬の念そしてこの日の演奏への大きな期待を併せて拍手を送る。ほんの数秒の出来事なのだが、私にはこの場に一緒に居合わせることができた幸福感が一杯に満たされる。

 そして、その拍手に期待通り応えるこの日のパフォーマンスだった。Bプロのブラームス交響曲1番で始まったブラームスチクルスは、この日は2番、3番。交響曲2番は、軽快で爽やかな演奏。冒頭から団員の皆さんも気合十分なことは3階席にも十二分に伝わってくる。暗譜で振るブロムシュテットさんの棒先とオーケストラの集中力が舞台上で激突するオーラを感じる。

 そして交響曲3番は今のN響の最高の力が発揮された演奏と言って良いのではないだろうか。この曲は、2012年6月にウィーンフィルのロンドン公演でサイモン・ラトルの指揮で受けた衝撃がまだ残っている(こちら→)のだが、この日のN響の演奏スタイルはそれと違って、簡潔で明確、かつ暖かさを感じるもので、ブロムシュテットさんの人柄そのもの(もちろんどんな方かは私は全く存じ上げないが)が現れているのではないかと思わせる演奏だった。弦も管もどれも素晴らしい出来で、弦と管の取り合わせの妙がブラームスの交響曲の面白さとどこかに書いてあったが、まさにそれを堪能させてくれた。あのNHKホールが小さく感じるほどの音量にもびっくり。

 終演後の拍手はお迎えの拍手を数倍上回る大きなもので「ブラボー」も四方八方から飛んでくる。私も負けまいと手が痛くなるまで拍手を送り続けた。3階席の自由席も売り切れになったこの日のNHKホールの皆が、マエストロとオーケストラへ感動と敬意を拍手にして表現していた。

 あとは交響曲4番のCプロを残すのみとなった。悔しいのだが、私は仕事と私用でCプロは両日とも行くことは叶わない。「画龍点睛を欠く」とはこのことだろう。う~ん、残念。是非、足を運べる人は行って欲しい。きっと、N響史に残るブラームスチクルスの有終の美を飾るに相応しい演奏を聞かせてくれるに違いない。


≪ブラボー!!!≫



第1761回 定期公演 Aプログラム
2013年9月22日(日) 開場 2:00pm 開演 3:00pm

NHKホール

ブラームス/交響曲 第2番 ニ長調 作品73
ブラームス/交響曲 第3番 ヘ長調 作品90

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
NHK交響楽団

No.1761 Subscription (Program A)
Sunday, September 22, 2013 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Brahms / Symphony No.2 D major op.73
Brahms / Symphony No.3 F major op.90

Herbert Blomstedt, conductor

コメント (4)
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