道草、より道、まち歩き。

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此の岸のこと(ゆうばり映画祭)

2011年03月04日 00時40分36秒 | 映画
Konokishiこれは、あなたとあなたの大切な人に訪れる、最も現実的な最後の刻(とき)。

老老介護の果てに、思い出の湖畔で心中を図った夫婦の、台詞のない物語。

30分の短編で、まったく台詞はありません。
何度か声にならない呻きのような声が聞こえるだけです。

もう寝たきりになって自分では食事も排泄もできなくなった妻を見るのは自分も年老いた夫。
部屋はしっかり片付け、妻の髪も綺麗に整え、寒くないよう服を着せてあげて車椅子で病院に連れて行く。
食事を食べさせようとご飯を口に運ぶ夫であったが、食欲がないのか何もかも分らなくなっているのか拒絶し、スプーンを持つ夫の手を振り払う妻。夫も右手の震えが始まり、長年の介護生活の疲れが表情にも現れるようになった。
病院の待合室で見た赤ん坊の寝顔。おむつを替える姿を自分と妻に置き換えているのか何かを想う夫。
他に家族も頼る宛も周りとの交流もないのか次第に思い詰めていく。
部屋に飾られている写真は、湖畔で撮ったボートに乗っている自分と元気な頃の妻の姿。
体の自由が効かない妻をボートに乗せ漕ぎ出す夫。
最後の刻を迎えた時、気が付くと元気で笑顔になった妻と・・・。

認知症。老老介護。死。

身近でもこういったことを抱えているせいか、言葉のない静かな静かな映画ですが何度も何度も涙が溢れた。久しぶりにこんなに泣いた。ちょっと前は老後の事なんて考えることもなかったのに、両親だったり、友達だったり、知人だったりの病気や死を目の前にすると、すぐ目の前にきている自分の事なのだと考えさせられます。

奥さん役はほとんどが無表情で寝ているシーンですが、元気だった頃の笑顔がとてもチャーミング。旦那さんの俳優さんも表情だけで喜怒哀楽を表現していて、特に食事を滅茶滅茶にされた時の自棄になったところや、最初の明るい笑顔で介護をしていた時から変化していく表情は感心させられました。

映画が終わって外山監督と主演の二人が撮影の事など色々聞かせてくれました。
外山監督は何とまだ30歳。まだまだこれからの作品が期待できます。

Img_2665
主演の二人はさいたまゴールド・シアターという、蜷川幸雄さんの主催する55歳以上の劇団集団の俳優さんなのだそうで、百元さんは映画でも上品な感じでしたが実際はもっと上品で美しい方でした。
旦那さんの役をした遠山さんは、しゃべりだしたら止まらないという感じの、まだまだ元気一杯で卓球も教えているという75歳。
黙っている役は辛くなかったかな~と思ってしまいます。

この映画祭にはちょっと異質な映画なのですが、同じ時間にやっていたホラー映画を見に行かなくて良かった
現実にはもっともっと過酷な環境に置かれている人がいたり、介護や医療の現場は裏側には見えない事も沢山あります。
ぜひ政治家や厚生労働省の全職員には見て欲しいな~と思う映画です。
もしそんな機会があったら、ちゃんと自分でお金を払って観てね

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