昨日の久高選手の世界王座挑戦は完敗に終わりました。
消化不良という声さえあがる敗戦ではありましたが、それにより挑戦にこぎ着けた過程の価値が変わるわけではありません。技術と圧力に長けたチャンピオンに挑んだ世界戦らしい世界戦でした。
ひたすら右のカウンターを狙い続けた久高選手。右構えと左構えを試合中に器用にスウィッチして的の絞りにくいカサレス選手に対してあえて困難を承知でカウンターで挑んだ戦いぶりは魂のこもった12ラウンズでした。2度も素晴らしい右カウンターでチャンピオンをグラつかせたものの追撃のパンチは外される。相手の技術が上でした。
生命線の右カウンターを狙って手数が減っていき、ズルズルとポイントを失っていく展開。右を固めて構えたまま至近距離で左のみを降るいつつ、何度となくタイミングを伺う久高選手。その間にチャンピオンの細かなパンチが何発も彼を捉える。
想いや諸々が報われることなく着々と貴重な時が過ぎてゆく。
激闘や興奮、感動を巻き起こすに至らず試合を終えることになってしまう。選手の、ファンの想いが行き場を失いリングの周囲に漂う…何度も観たこの風景も、実はあまりにボクシング的でした。
興奮や感動があらかじめ用意されているわけじゃないのだ。
つまらない、と思った人もいると思う。
それでも僕にとっては、人間が激しく倒れたりする異種格闘技やK1、そしてカメダ一家の試合なんかよりも…。
盛り上がりも、わかり易いヤマ場もなかったこの日のボクシングのこそが遥かに魅力的で、心を動かされるものなのです。