(gif/source:https://www.newpaltz.k12.ny.us/domain/1134)
ここでちょっとお話したいのですが、人を斬る呼吸ですな。これはとても一朝一夕にお話は出来ませんし、先祖伝来の秘伝もありますが、もとより万物の霊長の首を斬るのですから、気合呼吸、こいつに真念覚悟ということが何より大事なのです。
それゆえ刑場へ参りますと多くは罪人のほうを見ません。罪人を見るとどうもいけませんから、まず自分の役廻りとならない間は、刀を手挟んで空を仰いだり草木を眺めたりしています。
さてそうしているうちに用意万端が整って、よろしいとなると、いきなり罪人の側へ出まして、ハッタと睨み付け「汝は国賊なるぞッ」といって一歩進める。途端に柄に右手をかけます。
これは今まで誰にも口外しませんでしたが、この時涅槃経の四句を心の内で誦むのです。
第一柄に手をかけ、右手の人差し指を下ろすとき「諸行無常」中指を下ろすとき「是生滅法」薬指を下ろすとき「生滅滅巳」小指を下ろすが早いか「寂滅為楽」という途端に首が落ちるのです。
-明治百話「首斬朝右衛門」より
いずれ逝くであろう私の墓床の近くには、人斬り以蔵の墓がある。
防人の詩 ナターシャ・グジー / Sakimori no Uta by Nataliya Gudziy
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