南無煩悩大菩薩

今日是好日也

誠(まこと)について。

2020-06-24 | 古今北東西南の切抜
(画像/映画「切腹」より)

武士的気風は、日を遂(お)うて頽(くず)れてくる。

これはもとより困ったことには相違ないが、しかしおれは今更のようには驚かない。それは封建制度が破れれば、こうなるということは、ちゃんと前から分かっていたのだ。

今でもおれが非常な大金持ちであったら、4,5年のうちにはきっとこの風を挽回してみせる。

それはほかでもない。全体封建制度の武士というものは、田を耕すことも要らねば、物を売買することも要らず、そんなことは百姓や町人にさせておいて、自分らはお上から禄を貰って、朝から晩まで遊んでいても、決して喰うことに困るなどという心配はないのだ。

それゆえに厭でも応でも是非に書物でも読んで、忠義とか廉恥とか騒がなければ仕方がなかっのだ。それだから封建制度が破れて、武士の常禄というものがなくなれば、したがって武士気質もだんだん衰えるのは当たり前のことさ。

その証拠には、今もし彼らに金をくれてやって、昔のごとく気楽なことばかり言われるようにしてさえやれば、きっと武士道も挽回することができるに相違ない。


世間の人はややもすると、芳を千載に遺すとか、臭を万世に流すとかいって、それを出処進退の標準にするが、そんなけちな了見で何が出来るものか。

男児世に処する、ただ誠意正心をもって現在に応ずるだけのことさ。あてにもならない後世の歴史が、狂と言おうが、賊と言おうが、そんなことは構うものか。

要するに、処世の秘訣は誠の一字だ。

(切抜/勝海舟「氷川清話」より)


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