(sculpture/by Thomas Houseago)
戦死やあわれ 兵隊の死ぬるやあわれ 遠い他国で ひょんと死ぬるや だまって だれもいないところで ひょんと死ぬるや ふるさとの風や こいびとの眼や ひょんと消ゆるや 国のため 大君のため 死んでしまうや
その心や
白い箱にて 故国をながめる 音もなく なんにもなく 帰ってはきましたけれど 故国のよそよそしさや 自分の事務や女のみだしなみが大切で
骨は骨 骨を愛する人もなし 骨は骨として 勲章をもらい 高く崇められ ほまれは高し なれど骨は聞きたかった 絶大な愛情のひびきをききたかった
がらがらどんどんと事務と常識が流れ 故国は発展にいそがしかった 女は化粧にいそがしかった
ああ 戦死やあわれ 兵隊の死ぬるや あわれ こらえきれないさびしさや 国のため 大君のため 死んでしまうや
その心や
-竹内浩三「骨のうたう」
Adagio by Quantz with three Pardessus viols