南無煩悩大菩薩

今日是好日也

酔うことの美徳

2018-06-12 | 酔唄抄。
(picture/source)

常に酔っていなければならない。ほかのことはどうでもよい。ただそれだけが問題なのだ。

君の肩をくじき、君の体を地に圧し曲げる恐ろしい「時」の重荷を感じたくないなら、君は絶え間なく酔っていなければならない。
 
しかし何で酔うのだ? 酒でも、詩でも、道徳でも、何でも君のすきなもので。が、とにかく酔いたまえ。
 
もしどうかいうことで王宮の階段の上や、堀端の青草の上や、君の室の陰惨な孤独の中で、既に君の酔いが覚めかゝるか、覚めきるかして目が覚めるやうなことがあったら、風にでも、波にでも、星にでも、鳥にでも、時計にでも、すべての飛び行くものにでも、すべての唸くものにでも、すべての廻転するものにでも、すべての歌うものにでも、すべての話すものにでも、今は何時だときいてみたまえ。

風も、波も、星も、鳥も、時計も君に答へるだらう。

「今は酔うべき時です! 『時』に虐げられる奴隷になりたくないなら、絶え間なくお酔いなさい! 酒でも、詩でも、道徳でも、何でもおすきなもので。」

-ボードレール「酔え!」富永太郎訳