前項の続きです。
ですから、考え方の方向としては、まず角が90°、60°、36°の球面三角形があって、その辺を球の中心から見た中心角、φ、χ、ψを計算した、ということ。
この球面三角形は辺で折り返して行くと球面を120個の合同な球面三角形で、ちょうど1回だけ埋め尽くします。この図は印象的かつ大切な図で、見ておく方が良いでしょう。
日本語版Wikipediaの正二十面体のページで「完全正二十面体的対称性(英語版)」の図がそれです。完全は裏表を考えた場合の対称性です。図形的には裏返さず(全体の鏡映は考えず)回転だけで考える回転群の数が採用されます。
よく見ると、正三角形(球面)や正五角形が見えてきて、もちろん正20面体と正12面体に直接関係しています。
同様の球面三角形には、正四面体群の90°、60°、60°の三角形、正八面体群の90°、60°、45°の三角形があって、前者は24枚、後者は48枚で球面をちょうど1回だけ埋め尽くします。対称性の球面の図を描くと、正四面体群の方は正八面体群に完全に重なってしまうので、ZOMETOOLに追加したいとすれば、正八面体群の方の三角形、その角がπ/2、π/3、π/4の球面三角形が欲しい、ということになり、それを実現するのが緑棒(G/HG)です。
前項の写真の左下が、角が90°、60°、36°の球面三角形を表したもので、球面があって球面三角形の頂点になっていると考えてください。右下が 角が90°、60°、45°の球面三角形を表した物で、緑棒が使われています。球面上の頂点を青(B)、緑(G)、黄(Y)で表すと、
∠BGY = 90°、 ∠GYB = 60°、 ∠YBG = 45°
となっています。ミソはBとYの中心角が異なっている点で、左下では隣接した穴なのに、右下では少し離れています。
写真の右下の棒間の中心角は、
φ#4 = ∠BWG = (1/4)π = 45°
ψ#4 = ∠GWY = κ = (1/2)arccos(1/3) ≒ 35°15′52″ ≒ 35.264°
χ#4 = ∠YWB = (1/2)π - κ ≒ 54°44′
で、写真右上ではφ#4は現れていますが、χ#4とψ#4はZOMEボールでは同一平面には来ないので、黄棒はわざと抜いていて、青と緑の棒だけで撮影しました。
つまり、元の正二十面体の対称性を表す球面三角形が赤(36°)、青(90°)、黄(60°)であるところに、緑を加えた結果、青(45°)、緑(90°)、黄(60°)の球面三角形が追加された形になります。この緑の方角は赤と黄を結ぶ線分(大円の一部)の赤寄りの位置にあって、赤の先の青から45°の角度(角度で距離を表す地球の緯度みたいな感じ)の場所です。上式に沿えば、赤から黄へ向かう線上、(1/4)π - κ(≒ 9.7356°)の位置です。
黄棒の役割は同一ですが、元の赤(5回軸)の役割が青(4回軸)になっていて、青(2回軸)が緑(2回軸)、となれば完璧でしたが、まあ、世の中、そううまくは行きません。制限付きと思います。それでも、緑棒の存在によって、対称性では重要な図形がいくつも出てくるので、すばらしいアイデアだと思います。
ちなみに、完全な平行移動だけですと緑の60の角度の中で12方向のみが正解、となりますが、螺旋モデルなどでは局所で基準となる立方体が傾いて行き、結局、「5つの立方体」と呼ばれる図形のような感じとなって、60の角度がすべて役立ってしまいます。