コンパクトカセットは優れた規格で、テープレコーダの最後まで生き残っていたと思います。日本の貢献もいくつかあって、すぐれたテープデッキの開発、優れたテープの開発、そしてウォークマンが目立っています。
テープではTDKのSDテープが印象的でした。カタログ性能ですが、20kHzまで対応していて、最初見たときはびっくりしました。それまでのカセットは語学学習などの音声用途でした。今のAM放送の感じ。昔の電話は8KB/秒くらいの伝達容量でした。これで充分に実用です。しかし、SDテープは音楽録音を現実化させたと思います。
テープレコーダの欠点は2つあって、走行安定と雑音です。走行の方では、機械で巻く速度がもろに再生音に反映されます。一つは平均速度で、数%の誤差は普通で、録音機器と同じ機械で再生しないと、絶対音感の鋭い方には別の音楽に聞こえていたと思います。まあ、普通は絶対音感と言ってもそれほど大したものではないので、音楽カセットは普通に売られていました。
走行のもう一つはワウ・フラッターと呼ばれる、耳に感じられる音程の揺れです。こちらは普通の相対音感の人(たとえば私)でも感じられて、不愉快感が伴うので、最優先課題の一つだったと思います。テープレコーダの衰退期には誰も気にしなくなったようで、ひどい装置が普通に売られていて、かなりショックでした。
今なら光学マウスの原理でテープ走行を監視して、モーターのサーボとデジタルメモリで強引に水晶精度にしてしまいそうですが、そんな装置、あるのか無いのか。あったとしても、物理テープは伸びたり縮んだりするでしょうから、ううむ、やはりデジタル録音しか根本的解決は無いかも。
雑音はアナログ系にはつきものです。テープレコーダではざっくりヒスノイズと呼ばれていました。しかし、私の経験では、ヒスノイズと呼ばれていた白色雑音の大半は磁気回路由来では無く、初段アンプの雑音と思います。高級デッキでは、何もしなくてもヒスノイズは聞こえますが、気にならない程度でした。
なので、ドルビーBなどの雑音除去システムが出てきたのです。つまり、最初はオールアナログでした。デジタル信号処理が当たり前の今では信じられないでしょうけど。
ドルビーBは簡易システムと呼ばれていましたが、はっきりと分かる程度に雑音が抑えられました。ですから、市販音楽テープでも採用されていたか。安価なテープレコーダでは価格を抑えるためにドルビーBは付いていませんでした。しかし聞いても気になりませんでした。ここが、ドルビーBが普及した理由と思います。ええ、皮肉でも何でもないです。
今はもうビデオデッキも無いし、大型計算機にもごつい磁気テープは無いと思います。
鉄道の切符は今も磁気だったか。クレジットカードにも帯が付いていたような。