なんだか昔の大学の上司から真面目に考察せよ、とのお叱りを受けそうな感じの記事を前項に書いてしまったのでフォローします。
アナログは元は類似とか相似とかの意味で、デジタルは指折り数えるの指のことだったか。なので私はディジットですからディジタルの表記を好むのですが多勢に無勢で本稿ではデジタルと表記します。
この違いはアナログ計算機とデジタル計算機の違いを考えるとはっきりすると思います。
デジタルの方は今ご覧のスマホとかパソコンとか、今やテレビもデジタル処理機ですから説明は後回しにします。
皆様、実物のアナログ計算機を見たことはあります?。私はあります、複数、もちろん大学の研究室で、1980年代のこと。
一つはかなりの大型のアナコンで、タンスを2台くらい並べた大きさで、もう用が無くなったときにこんな貴重な装置は博物館に寄贈すべきだ、とか言っていました。
私が大学院のその教室にいたときにはすでに過去の装置になっていて、私が希望したらわざわざ当時の運用を再現してくださったのを思い出します。教授と講師が脇について、技師がアナコンを操作していました。配線(プログラム)は専用のボードがあって、すでに決まっていてとある計測値の解析です。
出力装置は(真空管の)オシロスコープ(20cm四方もあったか、当時としてはかなりでかい)で、ここにとりあえずの計算結果を表示させます。普通の物理学の常微分方程式のように横軸が時間のこともありますが、この解析は生物学らしくて、ええと何だったかコンパートメント・モデルだったか、これも常微分方程式ですが積分器が複数繋がっていて、その出力で際立つ2個をX-Yプロッタの要領で、ある計算結果と別の計算結果を縦横に表示させていました。画面に線画ですからリサジュー図形みたいなのを想像すれば良いと思います。
技師は7個ほど並んだポテンショメータ、…オーディオアンプやアナログラジオの音量ノブみたいなの(ボリューム)を高級化したもので、今でも秋葉原の電気街などで実物が売られていると思います。複数回回転できるボリュームで、何回転したかが分かるように前段に3桁ほどの十進アナログ(物理)表示装置が付いていました。これの想像は困難なので、何とかweb検索してくださるようお願いします。
余談ですが機械的拡大装置ではバーニア・ダイアルというのをアマチュア無線関係で思い出します。このダイアルの機械的減速装置の先はバリコンと呼ばれる空気(真空)を誘電体とした電子部品で、トランジスタ・ラジオの時代ではポリ・バリコンとかあったか。
こちらは普通のポテンショメータなので、圧膜だったかの抵抗体を螺旋状に配置して、導体の接触体を滑らせて行きます。
技師はそのポテンショメータをぐりぐり動かして、アナコンの表示結果と計測値を一致させて行きます。今から考えるとほぼ神業で、経験がものを言ったと思います。もちろん、その教授か講師が調整方法のコツを自ら開拓したのでしょう、よくやること。
と言うことは、確認のために少なくとも1秒間に5~6回ほど繰り返しの計算結果をアナコンはオシロスコープに表示させていました。これが当時のデジタル計算機よりもアナログコンピュータの方が計算速度が速い、と言われていた根拠と思います。今のGPUの3Dぐりぐりを見たら、そんな感想は容易に吹っ飛ぶと思います。
で、ある程度アナコンのオシロスコープ出力と計測値が一致したと判断したら、そのポテンショメータの位置の数値を報告書に書いて、証拠のためにオシロスコープの出力と相似の図形を、そのアナコンにX-Yプロッタで出力させて添付していました。
つまり、ポテンショメータの表示値が解析結果と言うことです。納得できました?。いや、当時はごく真面目にその「解析結果」を現場に報告していましたから真剣そのものです。
今だったらデジタル計算させて、ボリューム合わせはいわゆる非線形計画法というので解かせると思います。それを人力でやっていた、ということ。
長大な説明に入ったと同時に、技術的な見所が各所にあると思いますが、一旦切り上げます。私が面白いと思ったら続けます。