ちょっとはしゃぎすぎたか。もしかしてマイコンに興味があって、この手の小型液晶表示器に興味のある方がいらっしゃるかもしれないのでヒントを書いておきます。購入した製品の型番などは表示がしっかり成功してから明かします。でないと無責任な感じがしますから。
横240ドット×縦64ドットの白黒液晶グラフィック表示器です。LEDによるバックライト付きで、その電源は別に供給する必要があり、しかし表示には直接関係が無いので以下省略します。感じとして電流制限素子が入っているので単に5V (0.2A程度か)を加えるだけです。
表示エリアは横127mm、縦34mmほどで、ドットピッチ0.53mmの正方画素のようです。このあたりのドットの大きさが英数字表示(5×7ドット)などには最も分かりやすいと思います。もちろんいわゆるドット感は大いにあります。
私の世代だとポケコン最盛期の表示を思い出します。代表例としてカシオのPB-1000という機種には192×32ドットの白黒液晶画面がありました。1987年に発売だそうです。
今回購入した(まだ届いてない)液晶グラフィック表示器のドライバICは東芝製のT6A40とT6A39です。webで出てきたマニュアル(1997年)は英文ですが、内容はすぐに分かります。T6A40が行担当で1個、T6A39が列担当で3個採用されています。電圧や電流や信号のタイミングはこれで分かります。ただし、後述するように表示器の説明書とは端子の名前がややずれています。
表示器の回路は公開されておらず、しかし本来のコントローラであるT6963Cのマニュアル(英文)はすぐに手に入り、その37ページに載っている推奨接続例がそのまま採用されているようです。
まず、T6A40のDUAL端子はL(0V/VSS)に接続され、DIRとTSWはH(5V/VDD)に接続されています。T6A39ではDUAL/DIR/DF1/DF2/DI1/DI2/DI3がLに接続されています。これでドライバICがどのモードで動いているかが分かります。
T6963Cからは5本の信号線がドライバICに接続されています。表示器の説明書の信号名と微妙に違っているので、一覧表にします。
(表示器の説明書の)FLM = (T6963CのCDATA) → T6A40のDIO1
LP = (LP) → T6A40のSCP → 最初のT6A39のEIO1とすべてのT6A39のLP
M = (FR) → FR → FR
CP = (HSCP) →→ SCP
DI = (ED) →→ DI4
です。つまりドットデータ(DI)はすべてのT6A39に行っていて、しかしEIO1からのLPパルス(データラッチ)の伝搬で採用するかどうかが決まり、結果として1ライン分240個のCPパルス(ドットデータ取り込みクロック)で各T6A39の内部シフトレジスタに適切なデータが揃います(T6A39のマニュアル、4ページと5ページの図)。
LPパルスがHになるとT6A39のシフトレジスタから行ラッチにデータが転送され、これはそのまま表示されます。つまり1行が完成した合図ですから、縦担当のT6A40のクロック(SCP。マニュアルでLPと同じと分かる)になっていて、表示器の電圧制御が1ライン次に行きます。1行目のLPパルスの時には普段はLのFLM(垂直同期信号)をHにして先頭行の合図にします(T6A40のマニュアル、5ページの図)。
Mは液晶に加える電圧の正逆を制御する信号で、マニュアルでは1フレームごとに逆転しています。先に挙げた成功例では非同期で1kHz程度で任意のタイミングで切り替えています。
以上はロジック、つまり制御用のICの話でした。画面の液晶に加える電圧はまた別です。参考文献は、
トランジスタ技術編集部。グラフィック表示モジュール応用製作集。CQ出版、2012年
です。多数の応用例が載っていて、コントローラICのあるものもあれば、ドライバICだけの表示器の取り扱い方もあります。
ドライバICが(自動で)液晶に加える電圧切り替えのタイミング図は241ページに表示されていて、ただし上端がVDD(+5V)で下端がVEE(-9V)なのは共通ですが、行(Com)と列(Seg)の中間の2電圧は縦と横で異なります。つまりVDDとVEE以外に中間4電圧の電源が必要となります。この中間電圧発生にはレギュレータやコンバータでは無く、opアンプが用いられるようです。
具体的回路は122ページに表示されています。opアンプはTL064というこの界隈ではよく知られたポピュラーなものです。この回路では30V(V0)と0V(GND)が上下端で4電圧(V1~V4)は(比率がV0に対して)固定です。コントラスト調節にはこの回路ではV0の電圧を調節しています。
中間電圧はopアンプで作るので、外から供給するのは上記のV0だけです。この文献では単体のMOSFETとコイルでDC/DCコンバータを作っています。これに相当するのが、前述の成功例ではLTC1144と呼ばれるマイナス電源発生用ICです。ここを安い従来品で済まそう、というのが私の計画です。
ついでながら、123ページの写真ではフレキシブルフラットケーブルとフラットカラーケーブルの変換にLSI用のピッチ変換基板を用いていて、残念なことにこの方法は今回購入したLCDモジュールでは使えません。専用の変換基板はありますが、比較的に高価です。