随伴行列は、行列式の値で全体を割ると逆行列になるので、逆行列の方が動作が分かりやすいために、現在の線形代数ではあまり触れられていないようです。そのために、この数学用語をトレースするのに苦労しました。
この随伴行列と幾何学での双対の概念との対比は面白そうですが、私は今のところ完全理解に届いていないので、この部分は後回しにして、とりあえず、n-1次元単体と直交する(n次元)ベクトルの算出方法のみを記念として記録しておきます。
これは、コンピュータグラフィックスで、元のn次元図形をぐるぐる動かしたときに、演算精度の限界のために形が崩れるのを防ぐ時に役立ちます。つまり、稜が互いに直交しているn次元超立方体の形を整える、ということ。これを基準のベクトルとして、元の物体の位置は動かさずに超立方体の方を逆回転させて、いわゆる単位ベクトルの正確に直交するn本を用意し、物体の位置ベクトルと内積を取って行くと、回転後の座標が算出できます。言葉で言うとややこしいですが、出てくる図は明らかです。
ところで、行列や行列式は数字などが二次元に並ぶので、いちいちgifファイルを貼るのも面倒なので、とりあえずの書き方をやっておきます。
a11 a12 a13
a21 a22 a23
a31 a32 a33
のように、添え字を付ける場合は行番号を先に、列番号を後に書きます。これは普通でしょう。次元が大きくなった場合はどうするのだ、ですが、本ブログではおそらく8次元までしか扱わないので、それ以上扱うことになったらその時点で改めて考えます。
これらを要素とする行列を2重括弧で、
((a11 a12 a13)(a21 a22 a23)(a31 a32 a33))
と表現します。行列式は、
|(a11 a12 a13)(a21 a22 a23)(a31 a32 a33)|
と、最外側の括弧を縦棒にします。
行ベクトルは、カンマを使い、
,(a11 a12 a13) または ,a1
とし、列ベクトルはバッククォートを使い、
`(a11 a21 a31) または `a1
とします。行列全体は、
A
と大文字で示し、行列式は、
|A|
と縦棒で囲みます。もちろん、行列式の中身は常に正方行列です。
ふむ、この程度の説明で字数が増えてしまいました。多分、続きます。
ところで、この部分を調べている過程で、行列式の方が行列よりも先に考えられた概念だとの説明を見ました。つまり、行列式はおそらく多元連立一次方程式の解法で出てきて、縦横に数字が並びますから、行列式の中身を行列として考察の対象にした、みたいな書き方でした。
思い出話で恐縮ですが、私は小学校高学年だったか中学時代だったか、講談社ブルーバックスでドイツ語の数学辞典の翻訳書が気に入っていて、たぶん、その中に行列式の記述があったので、何のことかは良く知っていました。しかし、高校や大学初年度の線形代数での行列式の扱いは傍流の感じで、NHK教養講座のコンピュータ入門でも行列ばかりが取り上げられていましたから、すでに1970年頃には随伴行列のような中間段階は省略傾向にあったのだと思います。
この頃はコンピュータサイエンスの向上に躍起だった時代で、その成果は確かに素晴らしいもので、現在のスーパーコンピュータやPS5等のグラフィック処理に活かされていると思います。
何度も言って申し訳ないですけど、しかしこの近代線形代数の勃興により、西洋数学の元の香りが薄められてしまっていると思います。幾何学分野では、楕円関数や群論方向で何とか生き残っている感じで、きらびやかな伝統は本当に古典になってしまったようです。その袋小路に陥った古典幾何学方向は何となく和算の感じに似ているのは、偶然なのか何なのか。