ZOMETOOLのボールは正式にはノード、つまり節(せつ・ふし)と呼ばれ、棒はストラット(支柱)と呼ばれています。見たままですが、ここしばらくはZOMEボールと棒の表現で行きます。
今回は棒の方の紹介です。
以下で黄金比がよく出てきます。1:1.618...の比で、この小数は正確には(1+√5)/2です。短辺と長辺がこの比の長方形は古代から均整が取れているとされ、いろんな場面で見いだされる、…と言われています。この比は正五角形の辺と一つおきの頂点を結んだ線分の長さの比で、こちらは直角では無く斜めに交わっています。
ですから、正五角形の対称性を元にしたZOMEボールからは自然にこの比が出てくる、と言う塩梅。なので、解説書ではこの定数をτ(タウ。ギリシア文字の小文字)で表しています。改めて書くと、
τ = (1+√5)/2 ≒ 1.618...
で、この逆数と2乗が小数で表現すると面白くて、
1/τ ≒ 0.618...
τ^2 ≒ 2.618...
と、小数点以下が一致している冗談みたいな事になっていますが、しっかりとその数学的根拠はあります。
もちろん、直接の棒の長さでは無く、両端にZOMEボールを接続したときの、ボールの中心点間の距離が問題です。その距離が棒の長さで決定される、ということ。
ボールの形は一種類だけですが、形が複雑なこともあって、棒の種類は基本10種、さらに6種が追加されています。
まず、長方形の穴を繋ぐ青(B)の棒は3つの長さが用意されていて、隣接する球間の距離は、
B0: τ^0、 B1: τ^1、 B2: τ^2
の比だそうです。ZOMETOOLの世界では拡大・縮小したときに黄金比になるので、シリーズになっています。B0による球間の距離は46mm程度、B1は75mm程度、B2は121mm程度です。
つまり、B0による球間の距離がこの世界の単位となります。
ところで、46mm + 75mm = 121mmになっているのは偶然ではありません。黄金比はいわゆるフィボナッチ数の極限であり、
φ(n+1) = φ(n) + φ(n-1)
の関係があります。ZOMETOOLの棒はいずれも直線に配置できるので、隣接する長さのペアを持っていれば、いくらでも拡大が可能、ということ(途中にノードが来ますが)。公式などの巨大モデルは、この原理で作成されているようです。
次は正三角形の穴を繋ぐ黄(Y)の棒。こちらも長さは3つで、
Y0: τ^0×(cos 30°)、 Y1: τ^1×(cos 30°)、 Y2: τ^2×(cos 30°)
ここで、
cos 30° = (√3)/2 ≒ 0.8660...
ですから、同じ番号の黄色の棒は青の棒よりも少し短いです。
ただし、この説明ではB1による立方体の対角線が、直線で繋いだY1の2本で繋がることは分かっても、正五角形対称であるZOMETOOLとの関係ははっきりしません。
正12面体の外接球の半径と辺の比は、(√3×τ)/2なので、隣接する正三角形のY1による球間はB0で正確に繋ぐことができます。こちらが多分、設計の意図です。
正五角形の穴を繋ぐ赤(R)の棒は4つの長さが用意されていて、
R00: τ^-1×(cos 18°)、 R0: τ^0×(cos 18°)、
R1: τ^1×(cos 18°)、 R2: τ^2×(cos 18°)
ここで、
cos 18° = (√(5+√5))/(2√2) ≒ 0.9510...
なので、同じ番号の青の棒よりは少し短く、黄色の棒よりは少し長いです。R00はHyperdoと呼ばれるセットでは大活躍しますし、プラトン立体のセットにも少し入っています。
cos 18°はτを使っても表すことができます。
cos 18° = (√√5×√τ)/2
こちらの表現は正20面体の外接球の半径と辺の長さの比で出てきます。つまり、隣接する正五角形のR0による球間はB0で正確に繋ぐことができます。
元々の考えではここまで、つまりCreator 1で完結だったのだと思います。しかし、前述したように、これだけでは正四面体と正八面体が組めません。そこで、緑(G)の棒が用意されました。まず、距離ですが、
G0: τ^0×2×(cos 45°)、 G1: τ^1×2×(cos 45°)、 G2: τ^2×2×(cos 45°)
ここで、
2×cos 45° = 2×1/√2 ≒ 1.4142...
ですから、素直にBnの√2倍です。つまり、青の棒は直角に配置できるので、その対角線を繋ぐ棒です。
なのですけど、この方向の穴はZOMEボールにはありません。しかたが無いので、近くの正五角形の穴を借用します。なので、緑の棒は端の首のところが少々傾いています。
なぜ正五角形の穴かというと、正三角形の黄色の棒(√3系)と共存することが多いから干渉しないように、だと思います。
ですから、この緑の棒には正しい方向、というのがあって、そうでないとどうにもはまりません。補助線みたいに青の棒で直角を作り、その中間の45°に向かって伸ばすのが分かりやすいです。変形立方体みたいな左右非対称性があるかどうかは、しばらく考えてみます。
さらに面心立方格子の面心の部分に球を持ってくるために、半分の長さシリーズの、
HG0: τ^0×(cos 45°)、 HG1: τ^1×(cos 45°)、 HG2: τ^2×(cos 45°)
というのが用意されているようです。ただし、私の手元にあるキットでは、G0、G1、HG1だけがあって、その他は持っていません。HG1の2本で3つの球を直線で繋ぐと、G1一本で繋いだ2つの球の距離と(正確に)一致します。