今日2月6日はブログの日なんだそうです。2が「ブ」を表し、6が「ログ」を表しているからだそうです。10年以上ブログを書き続けてきましたが、初めて本日知りました。
記念日に記事をアップしようとしても、大学やゼミについては書くことが思い当たらないので、今読んでいる本の紹介をします。消費行動に関する本です。
マット・ジョンソン、プリンス・ギューマン『「欲しい」はこうしてつくられる』白楊社、2022年です。
原題は Blindsight: The (mostly) Hidden Ways Marketing Reshapes Our Brains
原題を直訳すると、『盲視 マーケティングが我々の脳を作り変える隠された方法』となります。
盲視というのは、見えていないはずなのに人が視覚情報を得るという現象を指すそうです。最初にこの現象を指摘した後、この本は、消費行動ではこれに似たことが実際に起きているとして、様々な事例や研究を紹介します。例えば、白ワインとそれを着色料で赤く染めただけの偽赤ワインをソムリエに飲んでもらって、両者を評価してもらうと、白と赤では違った味であると評するそうです。本来同じ味であるはずなのに、味の分かるプロでも違いを感じてしまう。人は無自覚のうちに持っている思い込み(メンタル・モデル)を用いて状況判断を行うからだといいます。メンタル・モデルは過去の経験から形成されます。人は食物を食べたとき、食物そのものを体験するのではなく、こうあるべきだとという脳の推測を体験しているといいます。
有名なペプシの実験を紹介して、この本は、ブランドはこのメンタル・モデルに入り込んでいると指摘します。ペプシコーラとコカコーラ両方を消費者に飲んでもらって、味の評価をしてもらう実験がありました。ブランド名が分からない状態では50%以上がペプシをおいしいと評したが、ブランド名が分かった状態では80%がコカコーラをおいしいと評した。しかも、消費者はコカコーラが好きなのは味が良いからであると答えた。ブラインド・テストでは明確にその結果が出なかったにもかかわらず。結局これはメンタル・モデルが味覚に影響を与えたということを意味しているといいます。コカコーラは様々なプロモーションを通じて、消費者の脳内に意味のネットワークを張り巡らせ、おいしさの知覚を作り上げていると。
第1章はこのようにメンタル・モデルに関する解説ですが、第2章以降は、アンカリング効果(比較対象)、記憶が消費に与える効果、快が作り出される過程と購買への効果、好みの形成などが取り上げられています。神経科学や心理学の知見を紹介しながら、消費現象を読み解いているのです。専門書とは違い、一般人(非専門家)が気軽に読めるような記述になっています。マーケティングを専攻している大学生(当然うちのゼミ生含む)にはお勧めです。
ただ、アメリカの専門家がアメリカの読者向けに書いているため、アメリカ人が良く知る人物や会社の事例(日本人にはなじみがない)がたくさん登場します。私などはこれが今一つ理解できずに、たびたび読むのを中断してしまいます。学生の皆さんが読む場合、隅から隅まで読むのではなく、興味を引く章のみ取り出して、理解できない事例を飛ばして、読んでいけばいいでしょう。
記念日に記事をアップしようとしても、大学やゼミについては書くことが思い当たらないので、今読んでいる本の紹介をします。消費行動に関する本です。
マット・ジョンソン、プリンス・ギューマン『「欲しい」はこうしてつくられる』白楊社、2022年です。
原題は Blindsight: The (mostly) Hidden Ways Marketing Reshapes Our Brains
原題を直訳すると、『盲視 マーケティングが我々の脳を作り変える隠された方法』となります。
盲視というのは、見えていないはずなのに人が視覚情報を得るという現象を指すそうです。最初にこの現象を指摘した後、この本は、消費行動ではこれに似たことが実際に起きているとして、様々な事例や研究を紹介します。例えば、白ワインとそれを着色料で赤く染めただけの偽赤ワインをソムリエに飲んでもらって、両者を評価してもらうと、白と赤では違った味であると評するそうです。本来同じ味であるはずなのに、味の分かるプロでも違いを感じてしまう。人は無自覚のうちに持っている思い込み(メンタル・モデル)を用いて状況判断を行うからだといいます。メンタル・モデルは過去の経験から形成されます。人は食物を食べたとき、食物そのものを体験するのではなく、こうあるべきだとという脳の推測を体験しているといいます。
有名なペプシの実験を紹介して、この本は、ブランドはこのメンタル・モデルに入り込んでいると指摘します。ペプシコーラとコカコーラ両方を消費者に飲んでもらって、味の評価をしてもらう実験がありました。ブランド名が分からない状態では50%以上がペプシをおいしいと評したが、ブランド名が分かった状態では80%がコカコーラをおいしいと評した。しかも、消費者はコカコーラが好きなのは味が良いからであると答えた。ブラインド・テストでは明確にその結果が出なかったにもかかわらず。結局これはメンタル・モデルが味覚に影響を与えたということを意味しているといいます。コカコーラは様々なプロモーションを通じて、消費者の脳内に意味のネットワークを張り巡らせ、おいしさの知覚を作り上げていると。
第1章はこのようにメンタル・モデルに関する解説ですが、第2章以降は、アンカリング効果(比較対象)、記憶が消費に与える効果、快が作り出される過程と購買への効果、好みの形成などが取り上げられています。神経科学や心理学の知見を紹介しながら、消費現象を読み解いているのです。専門書とは違い、一般人(非専門家)が気軽に読めるような記述になっています。マーケティングを専攻している大学生(当然うちのゼミ生含む)にはお勧めです。
ただ、アメリカの専門家がアメリカの読者向けに書いているため、アメリカ人が良く知る人物や会社の事例(日本人にはなじみがない)がたくさん登場します。私などはこれが今一つ理解できずに、たびたび読むのを中断してしまいます。学生の皆さんが読む場合、隅から隅まで読むのではなく、興味を引く章のみ取り出して、理解できない事例を飛ばして、読んでいけばいいでしょう。