愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

学会での出来事

2015年06月22日 | Weblog
先週末,明治大学で開かれた消費経済学会に出席しました。そこでの出来事。

懇親会の席で,手伝いの大学院生数名に,私が手伝いのお礼を言うと,院生たちは「先生のお名前は以前から存じています。先生が書かれた小売マーケティング・ハンドブックを読んでいますよ」と返答しました。私の書いた本の名を知っているだけでも稀有なことなのに,読んでくれているとは驚きました。大学院の授業で使用しているといいます。さらに,「分かりやすい内容で良い本だと思います」と付け加えてくれました。社交辞令でもうれしいものです。

翌日,学会の受付で,院生に呼び止められました。近づくと,前日会話した院生1人と,会話しなかった院生1人が,私の書いた本を差し出し,「サインをください」といいました。

社交辞令かどうかは別にして,とにかく大変うれしいものですが,そんなことをした経験のない私は緊張してしまい,何を書いていいのか困ってしまいました。2人の名前を聞いて,それを書き,自分の名前とメッセージを添えました。サインをした後,私は院生たちに,「明治大学は商業経営研究の中心だった大学です。商業経営研究では大家の先生が昔活躍されました。それを受けて,今も現役の先生が活躍されています。良い大学を選びましたよ」という話をしました。

自分の院生時代,明治大学の先生たちがお書きになった本を,いくつも読みました。その時のことを思いだしています。商業経営研究の中心大学の一つである明治大学で,自分の商業経営に関する著書が読まれているなんて,大変光栄なことです。

学会の手伝いをしていた明治大学商学研究科院生の皆さん。ありがとうございました。上手に私を喜ばせてくれましたね(笑)。ただ,下手な字で,名前を書き,意味のないメッセージを添えたことを後悔しています。その点は許してください。このブログを読むことはないでしょうが,陰ながら皆さんの勉学を応援しています。

帰宅時,新幹線のなかでしみじみつぎのように思いました。残念なことに,所属大学では,学生たちは,授業のためにしかたなく私の本を買い,試験のためにしかたなく読み,試験が終われば,さっさと本のことは忘れてしまうという現状があります。しかし,一人でもいいから,卒業時に,学生がその本を私のところに持ってきて,記念にサインとメッセージをくださいとお願いされるような教育を展開しようと。

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キャリア

2015年06月10日 | 就職
先日12年前に本学商学部を卒業した森島さんが,名城公園キャンパスを訪ねてきました。当日はゼミ担当の先生が留守だったので,見知った教員を探して,たまたま研究室にいた私を訪ねてきたようです。うちのゼミの卒業生ではないのですが,私の少人数実習型授業を履修していたので,彼女のことををよく覚えています。

住まいのある関西からせっかく新キャンパスを訪ねてくれたので,キャンパス案内をしました。彼女は「愛知学院大じゃないみたい。あの時,こんないい椅子や机があれば,授業を楽に受けられたのに」という感想を漏らしていました。また,「学生は昔と比べて,行儀がいい」と指摘しました。「12年前と比べて,学部の学生数は半分以下なので,教職員の監視の目が行き届くようになったから,今の学生は行儀よくふるまうようになったかもしれない」と私は返答しました。

図書館が好きだというので,そこを案内した時,森島さんは経済小説を大々的に紹介する小説コーナーを見つけて,「大学の図書館じゃないみたい。商学部や経済学部の図書館で,小説があるのですか? こんな工夫をしないと学生は図書館を利用しないのですか?」と少し寂しそうにつぶやきました。つぎに,専門書や雑誌の詰まった書架を見つけた時には,「これが大学の図書館の典型です。私は学生時代,今しかチャンスがないと思い,難しい専門書を,訳が分からないまま必死で読みました。いい思い出です」と語ってくれました。

そのやり取りを思い出して,私は,大学でしかできない学生時代の経験というものは,意外に,当たり前の地味な日常に潜んでいるのだなと感じました。学生が図書館で専門の学問に関係する本を借りて読む。大学ならば当たり前の行為が,大学教育の核心であり,その後の人生の基盤を作るかもしれない。しかし,今やそれが当たり前ではなくなってしまっている。ゼミ生にはきちんと図書館活用を指導しなければいけないなと改めて思いました。

森島さんについて,学生時代,アクティブで,どこにでも顔を出している元気な学生という印象を持っていましたが,今でもアクティブな女性として活躍している様子です。正社員としての仕事を持ちながら,2人の子供を育てています。その過程で,保育所保護者・学童保育所保護者のリーダーとしても活動しているとのこと。この立場で,大学の頃にもっとしたかった友達と勉強を楽しむことを,今児童福祉を切り口にできているのが楽しいといいます。そしてその勉強成果を研究発表会でプレゼンテーションする機会も持ているそうです。

さて,そんな彼女が後日私にメールでメッセ―ジを送ってくれました。後輩である現学生のキャリア形成について,つぎのアドバイスを述べてくれました。

「就職活動においては,一定レベルの評価の企業に身を置くことを目指して欲しい。もし後にそこを退職することになったとしても,その経歴はその後の人物評価に影響を与える。つまり,あの会社で働いていたのだから能力が高いだろうと推察してもらえる。また,女子学生には,波があってもキャリアは途切れさせないことを心掛けてほしい。キャリアのブランクが生じると,余程の縁がない限り,能力の問題ではなく,再度正社員に返り咲くのは困難。したがって,パートや派遣の時期があったとしても,とにかく仕事を続けることが重要。なお,採用側は,採用のタイミングと組織の都合に合う人物かどうかを重視するので,能力が高くても不採用になる可能性はある。そういう時には縁がなかったとあきらめ,悲観しない。」


彼女は,大学卒業後東証一部上場企業で営業職を務め,子育てを機に事務職に転じ,今はとある組織で正社員として総務の仕事をしているそうです。10年以上のそのキャリアの中で,得た知見をメッセージとして送ってくれたのでした。ゼミ生には是非参考にして欲しいと思います。

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ありきたりのテーマはだめなのか?

2015年06月05日 | 名古屋マーケティング・インカレ
先日,名古屋マーケティング・インカレのエントリーシート提出日を迎えました。現在,全参加学生と教員間で全てのシートを閲覧できるようになっています。

そのなかで,個人的に注目したものがあります。愛知大学の学生チームによる「なぜ総合スーパーの衣料品は弱いのか」というテーマのシートです。大半の学生チームは自分の生活体験上の興味からテーマを見つけようとするか,外部から依頼された「実践的」テーマに乗っかります。しかし,このテーマはどうもそうではなさそうです。

今どきの学生は総合スーパーで衣料品を買う機会は少ないでしょう。そこを利用したことがあったとしても目立つ存在ではありません。したがって,学生がそれに注目することはあまりないだろうと思います。また,総合スーパーの経営問題は,日経ビジネスのような専門雑誌の記事,学術論文等で散々取り上げられてきていますが,もはや花形の小売業態とは言えないので,未来に目を向ける若者がそれを掘り下げようとは思わないでしょう。以上は私の勝手な推察ですが。ともかく,学生が総合スーパーを取り上げたこと自体に注目しました。

さらに,学生がある意味ありきたりといってよいテーマに切り込もうとしていることにも感心しました。なぜ総合スーパーの衣料品は不振なのかという疑問に対しては,何度もメディアで取り上げられ,すでにジャーナリスト,コンサルタント,学者が答えを出しています。その概略はつぎのような内容です。つまり,何でも扱う総合スーパーに対して,特定カテゴリーに絞り込んで競争力をつけたカテゴリーキラーが,多くの商品分野において,総合スーパーの顧客を奪った。とくに,衣料品分野においてはSPAと呼ばれる専門店小売業者が,商品開発とコスト・コントロールに強みを発揮して,総合スーパーの衣料品分野から顧客を奪い,その分野を落ち込ませた。さらには,企業規模の大きくなった総合スーパー企業は柔軟性を欠き,顧客ニーズをつかみ損ねて,対抗措置をとることができなかった。

既に専門家が定まった答えを出しているように思える問題を,学生が検討する余地はないかもしれません。結局,専門家たちの書いたレポートや記事を読んで,その内容を整理して,作業は終わるかもしれません。しかし,本当にそうでしょうか。専門家たちの言説には,納得のいく根拠が示されているでしょうか。要因間の関係がきちんと提示されているでしょうか。疑ってみることはできるのではないでしょうか。そしてその疑いの果てに,専門家が示した答えとは違ったものを示すことができる可能性があります。あるいは,答えは同じでも,違った視点の説明を提案することができるかもしれません。もし,そのようなことができれば,十分オリジナリティーのある面白い研究発表になります。

一般的に,企業とコラボした新しい商品パッケージや,オタク市場に切り込むゆるキャラなど,学生は,実践的な戦略提案型の研究テーマを志向するか,自分たちに身近で奇抜な現象を取り上げることで,面白い研究発表が出来上がると考えているようです。そして,たいてい,学生のみずみずしい感性を活かして,学生をターゲットとする商品やプロモーションを提案するというのが結論です。メディアでは,優れた大学教育のトピックスとしてそのような活動がよく取り上げられているので,意義あるテーマのように思えます。しかし,これらはすでにあふれかえっていて,私の目からはもはやありきたりの研究発表に見えます。

むしろ,専門家が出した答えを疑って,それをひっくり返す発表をする方がよほど面白いと感じます。今や,学生がそのようなことをするのは,ありきたりではないと思います。なぜ総合スーパーの衣料品は不振なのか,専門家の気づかない,わくわくする答えを期待しています。同様のテーマの名城大学チームによる「立ち上がれGMS」にも期待しています。

うちのゼミでは,コストコはなぜ日本の消費者に受け入れられたのかというテーマを取り上げるチームがあります。これについても,専門家がそれなりに答えを出しています。しかし,本当それでいいのか疑って,自分たちなりの答えを出して,私や他の教員を面白がらせて欲しいと思っています。


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