愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

読書

2017年08月10日 | Weblog
夏休みには,ゼミ生にはいろいろな活動で充実した時を過ごして欲しいと思います。私がいつも勧めるのは,旅行と読書です。働くようになると,なかなかできなくなるこの2つにじっくり取り組んで欲しいと思います。

今日は夏休み中の読書にふさわしい本を紹介します。もちろんゼミの学びに関連した本です。杉原淳一・染原睦美『誰がアパレルを殺すのか』日経BP社が今回のお勧めです。

これは流通に焦点をおいた日本の衣料品産業の詳細なレポートです。処分業者に集められた大量の不良在庫衣料品の写真から始まるこの本では,ワールドやオンワードのような大手のアパレル企業が危機に陥り,それを販売する百貨店が低迷している状況が描かれています。さらには近年好調だったSPA企業の中にも低迷するものが現れたことが指摘されています。そして,アパレル業界の集団自殺という刺激的な言葉を使いながら,その原因を探っています。

その大元の原因は過去の成功体験であることが明らかにされています。さかのぼれば,高度経済成長期の作れば売れる時代にその萌芽があったとされています。各社がその思考を引きづったままバブル崩壊を迎えます。その後の市場が縮小する景気低迷期に各社が採った策が,数うてばあたる散弾銃型の商品開発でした。規制緩和後のショッピングセンターの増加に合わせた出店増加にもそれは応えていました。数をうつために,商品企画は商社に丸投げし,OEMに踏み込み,ブランド名が違うだけの似た服があふれる状況を作り出しました。麻薬のような安直な大量生産モデルです。しかも,その生産は安く速く大量に作るために中国に依存し,生産地日本を疲弊させました。今この策が全く行き詰まりを迎えていることが記されています。

日本の衣料品産業の惨状が描かれた後には,未来の復活を探るために,新しい動きをレポートしています。日本産にこだわったブランド,レンタルサービス,オーダーメイドなどで注目を集める新興企業の動きが紹介されています。私が興味深いと思ったのは,生地からデザインまで一つの企業が責任を持ち,シーズンごとにつぎつぎと新商品を投入せず,同じデザインの服を長期間売るミナぺルホネンの姿勢です。短期間に大量の商品を作らない,特定店舗では数年前の商品も売り続ける,セールでの値引き販売はしない,大量の商品売れ残りや廃棄を出さないというこの企業の姿勢は,今の散弾銃型マーケティングのアンチテーゼです。成熟した経済で求められるマーケティングのあり方を模索しているといえます。

散弾銃型マーケティングの構図は他の産業にも当てはまるでしょう。ひょっとすると,訳の分からない名称の学部学科を乱造してきた大学業界にも一部当てはまるのかもしれません。そうなると,ミナぺルホネンの姿勢は大学業界を含む他の産業でもきちんと受け止める必要があるでしょう。

この本の著者は『日経ビジネス』の記者です。この本に関連する記事が『日経ビジネス』に掲載されてきました。ゼミ生たちは日経ビジネスを定期購読していますが,バックナンバーがあれば読み直してみてください。また,日経ビジネスオンラインに登録可能なはずですが,そのオンライン記事の中で関連するものを検索してみてください。この著書と併せてそれらの記事を読むと,日本の衣料品流通に対する理解が深まります。そして,今後の就職活動の予備知識を得ることができます。
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