愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

学者・エコノミスト推薦本

2023年01月06日 | Weblog
先月発売の『週刊東洋経済』2022年12月24日・31日合併号に、2022年ベスト経済書ランキングという記事が掲載されました。毎年末、多数の経済学者・経営学者・エコノミストの推薦・投票に基づき、その数の多さによって当該年の経済書ランキングがこの雑誌に発表されます。

今回堂々の一位は、渡辺 努 『物価とは何か』 (講談社選書メチエ)です。 現在物価の上昇に対して、消費者も企業も政府も喫緊の対応を迫られています。2023年正月には、総理大臣が、企業に対して物価上昇を上回る賃金引き上げを要請しましたが、これも対応の一つです。呼びかけたからすぐに賃金が上がるわけではないのですが、物価上昇への対応の緊急性を多くの人が感じたことでしょう。本書は、そもそも物価とは何か、その考え方や物価を決定づける要因など、物価のメカニズムについて解説しています。メカニズムを知らなければ、企業も、政府も、そして我々消費者も合理的な対応策を考えることはできません。この時期、是非学生に読んで欲しいと思います。経済学に基づいた解説ですので、うちのゼミ生のようなマーケティング専攻の学生にとっては難しく感じるかもしれません。ただ、商学部学生ならば、入門レベルの経済学を学んでいるため、基礎知識はあるはずです。読めないことはないでしょう。

また、本書にはなぜデフレから抜け出せないのかという章も存在していて、日本経済が20年以上もデフレに陥った理由を解説しています。過去、企業は顧客を失うことを恐れるがあまり、原価上昇分を価格転嫁することに躊躇した。さらに、競争者間で牽制し合い、値上げが起きなかったことを分析していますが、今は値上げの気風が整っているように見えます。今後物価がどうなるか、デフレからインフレに安定的に移行するか、スタグフレーション(不況下のインフレ)になってしまうのか、本書の内容を知ったうえで、注視してほしいと思います。

なお、私のところにも、このベスト経済書推薦の依頼が来ました。おそらく経済学部、商学部、経営学部などに所属する全国の多くの大学教員に依頼があったのでしょう。推薦・投票すると雑誌がもらえるというので、私は推薦文を添えて投票しました。『物価とは何か』に1票入れました。そうしたところ、ベスト経済書ランキング記事の本書推薦者欄に私の名前が出ていて、簡単な推薦文が掲載されていました。最近それに気づいて赤面しました。専門外なのに、推薦なんて大それたことをという感じです。ただ、門外漢にもよく分かる、そして興味を引く内容であったのでそうしたのです。専門を問わず必読の書です。

『物価とは何か』の続編として、併せて、渡辺 努 『世界インフレの謎 』(講談社現代新書)も読んでみてください。現下の世界的なインフレについて筆者独自の分析がなされています。興味深い内容です。
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