愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

2次データ

2019年09月27日 | Weblog
ゼミ生に,自らの主張に対して根拠づけることを求めると,ゼミ生はたいていアンケート調査の実施を検討し始めます。そして,「アンケート項目を考えてきたので,確認してください」と私の研究室にそのゼミ生が訪ねてきます。ほとんどの場合そのアンケート項目は,調査対象者にあいまいな日本語表現でYESかNOを答えさせる単純なもので,現象の背後にある要因を突き止めることができない設計になっています。その単純なアンケート調査を,サンプリングを考えずに,自分の身近にいる学生対象に実施するわけです。

私は,そういうアンケート調査はやるだけ無駄,時間と労力の浪費なので止めたほうがよいとアドバイスします。今年度も,秋学期に入ると,研究発表会や卒論のため,そのようなアンケート調査をやるというゼミ生が続出すると思われます。

そこで,ここで2次データを積極的に活用にすべきというアドバイスをあらかじめしておきます。2次データというのは既に収集されて公表されているデータのことです。他者が,その人や組織の目的に沿って収集・分析したものです。定量データの例では,政府が政策立案の参考にするために公刊している国勢調査や家計調査などがあげられます。

それらは経済政策や福祉政策等に用いられるものなので,マーケティングを学ぶ自分たちには利用可能性がないとゼミ生は考えるのかもしれません。しかし,家計における具体的な支出データを扱っている家計調査や,所得および生活意識に関するデータを扱っている国民生活基礎調査などは,消費者の購買行動に関するデータが含まれているので、ゼミ生の関心に関係しています。また,政府の統計データは比較的信頼度が高いといえます(最近一部不正が見つかりましたが,学生のアンケート調査データよりははるかに信頼できる)。

この政府をはじめとする公的機関が発表した統計データを使いこなして,自らの主張の根拠の一つとするよう,ゼミ生には検討してほしいと思います。

最近,2次データを駆使して,日本社会の動態を分析した興味深い本に出合いました。木川裕『なぜ,男子は突然,草食化したのか――統計データが解き明かす日本の変化』(日本経済新聞社,2019)です。第1章では,日本の若い男性が女性への興味を失いつつある草食化がなぜ起きたのか,関連するデータを分析することで,仮説を導き出しています。筆者は,行動の草食化の進行を「一番生きがいを感じるのは,職場以外で,親しい異性といるとき」と答えた新入社員割合の低下と捉え,その低下と同様の傾向を示すデータはないかと探しました。そして,日本人のたんぱく質の摂取量が同様の傾向を示していることを見つけ出しました。すなわち,行動の草食化は栄養の草食化と関連するというのです。そして,両データの変化の近似を取り上げて,単なる偶然か,疑似相関か(別の要因が両者に影響を与えて,あたかも両者が関係あるように見えてしまうこと),因果関係があるかどうかを議論しています。最後に,栄養摂取の変化が行動の変化をもたらしたという因果関係を仮説的に論じています。

この章以外にも,食べ物の都道府県別消費額を検討する「なぜ金沢が和菓子・洋菓子ともに一番の消費都市なのか」や,貯蓄率の国際比較や都道府県別比較から日本人の貯蓄行動の変化を検討する「日本人はいつから貯蓄しなくなったのか」など,日本社会の変化を2次データの分析からあぶりだす論稿がいくつも含まれています。専門書ではないので,空き時間にさらりと読むことができます。

ゼミの発表準備に疲れたら,この本を一読し,公的機関の2次データの活用を重要視して,実際に2次データ収集に目を向けてほしいと思います。

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合宿

2019年09月20日 | 運営
9月17日と18日にゼミ3年生と4年生は合宿のため,石川県と福井県を訪ねました。2年生の希望者1名も一向に加わりました。

初日は,名古屋から高速バスで金沢市に行きました。金沢市内の観光地や商業施設を自由に見て回りました。夕方,山代温泉に電車で移動し,温泉旅館に投宿しました。

夕食後,旅館の会議室で,3,4年生は研究発表の中間報告を行いました。3年生はチーム発表,4年生は卒論の個人発表でした。今年度は,3年生が2チーム,4年生が8名の発表を行いました。当初は,全員コンパクトにまとまった発表を行ってもらい,その夜ですべて終える予定でしたが,時間が足らず,翌朝会議室を延長して借りて,発表を継続してもらいました。

その発表を見ていて感心したのは,毎年グダグダな4年生の卒論発表が,今回きちんとしていることでした。ほとんどの4年生は卒論で何をしたいのか自分たちなりに伝えていました。すべての発表で,論理的におかしな点や調査が不十分な点が見つかりましたが,何をしたいのか不明なものはわずかでした。全員プレゼンテーションをしっかり準備してきていました。そのため,各自持ち時間を超過してしまい,2日目の午前中に延長せざるを得なくなったのでした。

4年生の卒論において,ほとんどのゼミ生が秋学期前にテーマを絞り,プレゼンテーションがきちんとできるようになっているのは,うちのゼミが始まって以来かもしれません。

発表会後はエンドレスの酒盛り。これは代り映えしない光景でした。

2日目は,各自昼間山代温泉の周辺を散策し,午後福井に移動,夕方福井から名古屋に高速バスで帰りました。金沢や福井の冷涼な気候と,3年生副ゼミ長の用意周到さによって,スケジュールが円滑に消化できました。よい2日間が送れました。

ゼミの集合写真を,金沢や山代温泉の有名観光スポットで撮り忘れたため,帰りの高速バス乗車前に,福井駅の新幹線ホーム工事現場前であわてて撮ることになったのは,唯一の残念な出来事でした。


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