愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

新年度に先立ち

2022年03月24日 | 運営
年度末の今、もう新年度が実質的に始まっています。うちの大学では学位授与式(卒業式)が終われば、その翌日から次年度体制に移行します。在学生のオリエンテーション、健康診断、履修登録等がどんどん進行しています。

自分は授業準備を行う傍ら、次年度学部運営の計画を立てています。近年は文科省などの上位機関からの「上から降りてきた大学改革」対応のため、自分たちの意思で学部改革を進めることが少なくなりました。もはや大学行政は社会主義化しています。しかし、それでは学部の独自性は出せないため、自分たちの意思でカリキュラムや教育方法を見直企図す必要があります。2024年度のカリキュラム変更を企図していて、そのため、2022年度に本格的な改革の議論を行う予定です。そしてその結果を受けて2023年度にカリキュラム表の改訂作業を行う予定です。

さて、先日の卒業式終了後、ゼミの卒業生からプレゼントをいただきました。立派なカードケースです。もったいなくて使えないなと思いつつ、それでは申し訳ないので、名刺を入れてみました。愛知学院大学の文字が映えます。ありがたく使わせていただきます。

卒業生は4月からの新生活において、緊張のため、しばらくはへとへとの毎日だと思います。とにかく健康を心掛けて活躍してください。
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卒業にあたって

2022年03月16日 | 運営
毎年恒例卒業生に贈る言葉。今年は以下の言葉を卒業生に贈ります。

「穴を深く掘るには幅がいる。」
専門家が深く進むのは当然だが、狭くなるとは不可解だ。ほんとうに深まるためには、隣接の領域に立ち入りながら、だんだん幅を広げてゆかなければならない。深さに比例して幅が必要になる。つまり真の専門化とは深く広くすることだ。そうして、この深く広くの極限が総合化になるのだ(土光敏夫『新訂経営の行動指針』産能大学出版部、1996年、128-129ページ)。

土光敏夫さんの名言です。土光さんのことを知る今年度の卒業生はほとんどいないでしょう。しかし、私の世代やその上の世代の方々には大変著名な経済人です。石川島重工業(石川島播磨重工業)社長、東芝社長・会長を歴任し、これらの会社を再建したことで有名です。さらに経団連会長を務めたのちに、1980年代第二次臨時行政調査会長に就任し、政府のご意見番として、財政再建や三公社(国鉄、電電公社、専売公社)の民営化の推進役として活躍しました。JR、NTT、JTはこの三公社の民営化から生まれました。

土光さんは質素倹約を心がけ、華美な生活を避けたことから庶民派の財界リーダーとして人気がありました。大企業のトップにもかかわらず、バス・電車通勤をしていました。また、めざしの土光さんと呼ばれました(夕食にめざしを好んで食べたことから)。土光さんは仕事のあり方について様々な名言を残しています。そのうちの一つが上記の言葉です。

卒業生の皆さんは将来的に何らかの専門家になることを求められます。「この問題だったら、彼に相談すれば解決策が授けられる」「この分野は彼女より詳しい人は周りにいない」。このような評価を得られるようになれば、社会で必要な人材として重宝され、生き残っていけます。

是非専門家になれるように日々努力を重ねてほしいと思います。ただし、その際に留意してほしいのは、狭い領域で経験を積み、知識を蓄積すれば、ひとかどの専門家になれるのかといえば、そうではないということです。併せて、広く様々な分野で経験を積み、知識を得る必要があるのです。

幅広い経験や知識によって、多面的に問題に対する解決策を検討することができるようになります。通常、ある問題の答えを出すための解決策は複数存在します。また解決策は異分野からももたらされます。様々な解決策を客観的に評価してどれが良い解決策となる得るのか検討することが専門家には求められます。しかし、狭い領域の少数の解決策しか知らなければ、それが本当に妥当な解決策なのかどうなのか検討することさえできずに解決を図ることになります。非効率な解決策を採用し続けるかもしれません。公平で客観的な判断のできない専門家は、本当の専門家ではありません。

卒業生の皆さん。様々な知識を得て、多様なものの見方をできるように、様々な経験と勉強を重ねてください。人生に無駄はありません。一見無駄なことも多様なものの見方を獲得するチャンスになります。

最後にもう一つ土光さんの名言を紹介。「自分を他者と比べるな。比較は自分自身とだけやればよい」(前掲書、190ページ)。追い求めてほしいのは自己の成長であり、自己の目標の達成です。
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ビジカン

2022年03月05日 | 卒論
3月2日に商学部の学内研究発表会「ビジカン」の表彰式が開催されました。うちのゼミからは、論文部門流通マーケティング領域で最優秀賞が1つ、優秀賞が1つ、プレゼン部門流通マーケティング・ビジネス情報領域で優秀賞が1つ、入賞が3つ選ばれました。今回は例年よりも全体的に表彰者が多いので、うちのゼミからの表彰者も多くなっています。そのうち、論文最優秀賞に選ばれたのは吉田和磨「高校生が学習塾を選択する上での要因」です。これは本年度の卒論です。

この卒論は、消費者行動理論を応用して、高校生の塾選択行動の分析を試みたものです。まず、学習塾の選択行動に関する先行研究をレビューした後、これを消費者行動の問題として検討することにして、消費者行動の分析枠組みとして、いくつかの消費行動類型を検討しています。つぎに、学習塾の実態を記述し、既存のアンケートから小・中・高校生(および保護者)による塾選択の現状や理由を整理しています。それによれば、重要な教育投資の一つであるにもかかわらず、塾選択において価格や進学実績を超えて、最も考慮されていたのは「近さ」であるといいます。

その後、消費行動類型(Assaelの類型)に沿って、その理由を分析しました。近さを重視する選択は、高関与でありながらブランド間の知覚差異が小さい不協和低減型に整合していると結論付けています。不協和低減型では、消費者は製品に強いこだわりがあるものの、ブランド評価を行うことができない状況にいます。結果として、他のブランドと比較した場合のメリットについて確固たる信念がないまま特定ブランドを選択し、購入時に吟味しなかったために発生する購買後の不協和を感じてしまうといいます。消費者は不協和解消のために、当該ブランドについてポジティブな情報を探したり、選んだブランドに関するネガティブな情報を無視したりして選択を正当化を試みることになります。この卒論は、塾選択おいても、選択者はこのような状況に陥っていると論じています。近さを重要な選択基準にするのは、塾間の教育室評価が十部に行えていないからではないかというのです。

ただし、この結論はあくまでも仮説の導出にとどまっています。理論の新しい解釈を試みているものでもありません。これらの点、不十分さが残ります。後輩たちは、不十分さを認識して、自らの改善に努めるきかっけとして、この卒論を読んで欲しいと思います。

今年度のビジカンは昨年度と比べると低調でした。エントリー数も低調だったし、発表のレベルも高いとはいえませんでした。マーケティング分野に限ると、戦略提案型の発表が多かったのですが、根拠が弱く思い付きに近い提案がいくつも出されていました。また理論的な分析を伴う発表は少なかったといえます。理論的分析があっても、相互評価場面で、学生がそれを評価できずにいたように思います。次年度は、対面のイベントとして実施し、発表の仕方、評価の基準等をきちんと教員が参加学生にレクチャーする必要があると感じました。
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