愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

分からないと答える教員

2017年06月20日 | 募集
大学は中学・高校とは教育上違うということを十分に理解していない学生が全国的に蔓延しています。違いがあるとすれば,中学・高校よりも大学のほうが学習上楽になったということぐらいという認識の学生が多数かもしれません。

中学・高校と大学の教育上の違いは,教員の学生対応を見てみるとよく分かります。中学・高校では,生徒が教科学習で分からない箇所を質問に行くと,教員はきちんと答えを導いてくれます。ところが,大学では必ずしもそうではありません。教員によっては,「その問題は難しいので答えは簡単には出ない」「自分はそれを専門的に研究したことがないから分からない」という返答することがあります。私もそのような返答を過去何度もしました。

中学・高校で,生徒の質問に対して,教員が「分からない」と答えることは通常はないでしょう。そのような応答した先生に対して生徒は信頼感を損ねるかもしれません。しかし,大学では,学生の質問に対して,教員が「分からない」と答えることはおかしなことではありません。「分からない」と答えた先生に対して学生が信頼感を損ねることは必ずしもありません。

なぜならば,簡単には答えが出ない問題を探究し続けるのが大学の学問だからです。分からないことを何とか分かるようなする営みです。一度答えが出た場合でも,その後状況がひっくり返り,別の答えが定説になることもよくあります。分からないことがあって当然なのです。そもそも,問題も自分で見つけ出さなくてはなりません。したがって,各教員は狭い専門領域を追究することになります。幅広く扱っていては,深く探究することができないからです。

せっかく大学に入学したのであるなら,簡単には答えが出ない問題を探究し続ける活動に少しでも触れて欲しいと思います。そのための場として,多くの大学では,演習,実習と呼ばれる授業や研究室が用意されています。

通常の授業では,ただ椅子に座って,教員の説明をノートに書きとり,それを正しいものとして,覚えこむばかりです。それは学問をしていることにはなりません。自分で問題を設定し,自分なりの答えを探し出し続ける過程が含まれていなければなりません。最近アクティブラーニングという言葉が教育界で流行しています。能動的学習という翻訳で,革新的な新概念のように捉えられますが,実は,大学で昔からきちんと行われてきた学問に学生を向かわせれば実現します。

今商学部ではゼミ生募集期間(秋学期から始まる演習の選択期間)に入っています。座学の講義と同じく,週に1度ゼミの授業日に教室で座っていれば単位が取れるゼミを選ぼうとする学生がいて,げんなりします。不人気ゼミのうちでは,他のゼミを落ちてしかたなく2次3次募集で申し込んでくる学生が毎年いますが,そのなかにそういう料簡の学生が混じっています。そういう学生はうちのゼミを選択しないで欲しい。

うちのゼミでは,週に1度教室にいれば単位が取れるようなことはありません。簡単には答えが出ない問題を探究し続ける活動に取り組んでもらいます。自分で決めたテーマで毎日毎日頭を悩ませなければならない状況に自ら追い込んでもらいます。

「先生これが分からないので教えてください」「それは難しい問題なので自分もよく分からない。一緒に答えを探して見よう」。これがゼミのポリシーです。

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10年

2017年06月03日 | 運営
このブログの開始日は2007年4月11日。始めてから10年が経過しました。過去10年,学生の就職状況には大きな変化がありました。2007年ごろは愛知万博後の人出不足が継続していたので,就職状況は良かったのですが,その翌年リーマンショックが起き,2009年度から悪化しました。その年度冬になっても就職活動を続けていた4年生のことをよく覚えています。ところが2013年ごろから状況が好転し,ここ3年間はほとんどの4年生は夏ごろに就職活動を終えてしまうようになりました。2016年度はバブル期にも匹敵する好調さ。2017年度も同様でしょう。

就職状況が教育上どのような影響があるのか見定めることはなかなか難しい。ここ3年間は,4年生にとって,早く就職活動が収束するので,卒論に時間を注ぐことが以前よりもできるようになっています。しかし,実際に力を入れてくれるかというと,どうもそうはいかないようです。就職活動が長引いた時でも,きちんと卒論に取り組む学生がいた一方で,素早く内定が出ても卒論にとりかからない学生がいました。3年生にとっては,就職状況の良さは,就職に意識を向ける機会が多くなる一方で,自らの将来を楽観視して勉学に力を入れない傾向を生みます。


大学における教育は短期的には役に立たないものです。ゼミにおける研究発表や卒論もそうです。ただ,長期的に見れば,十分役に立つ能力を身に着けるきっかけが得られます。すなわち,自立して論理的に思考する能力を高めるきっかけです。

10年間を振り返ってみると,ゼミで行っていること,教育上配慮していることは基本的に変化していません。2007年4月のブログを見ると,図書館をきちんと利用することを学生に指示しています。その背景には,安直にネット検索で調査を済ませ文献をきちんと読まない学生の実態がありました。10年経って,その実態は変化ありません。スマートフォンの普及でむしろ悪化しているといえます。

文献をきちんと調査し,それを読み込み,批判的に検討することことは,自立して論理的に思考する能力向上には欠かせない学習です。

10年経て感じることは,社会の変化に対応しつつも,教育の基本を維持することの重要性です。4年生は6月に入って就職活動の最盛期を迎えました。早く内定がとれ,時間的に余裕が生まれることがあるのなら,それに浮かれないで,卒論にじっくりと取り組むとともに,自分の10年後の姿を思い描いて欲しいと思います。3年生はその姿勢を見て,今後の学生生活をいかに充実させるか考えて欲しいと思います。

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