愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

パブリシティー

2013年05月31日 | Weblog
30年以上前に大ヒットを飛ばした甲斐バンドというロック(Jポップ)バンドがあります。甲斐バンドはあっと驚く場所でコンサートを行うことで有名でした。代表的なものは,東京の新宿駅西口高層ビル群の谷間にある空き地で行ったコンサートです。先端的なオフィス・ゾーンである高層ビル群内で,3万人近くも観客を集めてコンサートをやったということで話題を呼びました。ちなみに,そのコンサート会場跡には今は東京都庁が建っています。それ以外にも,大阪の花園ラグビー場,両国の新国技館(こけら落とし)など,あっと驚く場所でコンサート開きました。

なぜそんな突飛なことをするのかと訊ねられた時,バンドはこう答えています。「マスメディアは自分たちのようなロックバンドをなかなか取り上げてはくれない。しかし,あっと驚く場所でコンサートをすると取り上げてもらえる」と。

日本食研という調味料を製造する食品メーカーは,愛媛県今治市に宮殿のような工場を持っていることで有名です。オーストリアのベルベデーレ宮殿をモチーフに,80億円もかけて建てたそうです。食品工場が宮殿?という疑問から大きな話題を呼びました。見学者が引きも切らず,メディアの取材も殺到したそうです。

元々日本食研の会長の思い入れで建てたそうですが,マスメディアの取材や見学者の増加によって会社の知名度は向上し,社員のモチベーションも上がったそうです。会社側は「元がとれた」と考えているそうです。


それらは,マーケティング的にいえば,パブリシティー活動を中核に据えた事業活動の展開といえるでしょう。通常,メディアによる報道は,事業活動の過程で意図せずに起きることが多いでしょう。パブリシティー活動を積極的に展開する場合でも,事業活動に付随して行われるのが普通です。しかし,以上のケースではパブリシティー活動と事業活動が一体化しています。

近年,大学業界では広報活動(パブリシティー活動含む)が非常に重視されるようになっています。明治大学が,ブランド力ナンバーワンのおしゃれな大学に様変わりしたと報じられて久しいですが,その陰には,キャンパス整備,学部改革,芸能人の多数入学に並んで,それらを活用した広報活動の充実があったことが指摘されています。多数の芸能人の積極的入学やその広報活用については賛否あるでしょう。ただ,キャンパス整備や学部改革をきちんと進めたうえでの広報活動展開には,高い評価が与えられるでしょう。

今,愛知学院大学は,新キャンパス開設を控え,広報活動,とりわけパブリシティー活動が重要になっていると私は認識しています。なぜならば,スタート時のイメージ形成は,後々まで尾を引くからです。そして,そのイメージ形成には,メディア報道が大きな影響を与えるのです。広告活動などよりも大きな影響を持つかもしれません。

うちの学部は,どのようなパブリシティー活動を展開できるでしょうか。受け身の姿勢で,取材の要請が来たら対応するというではなく,教育・研究活動そのものがメディアにとって良い伝達材料になるように,積極的な話題つくりをするという姿勢が必要になってくるのではないでしょうか。私たちは,今まで,そんなことを考えて教育・研究活動を行ってきませんでした。メディア報道を狙った教育・研究活動なんて大学のやることではないという批判は根強くあるでしょう。しかし,少子化による大学破綻時代到来まで秒読み段階に入っている現在,なりふり構っていられないのが現実です。
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読書ノート

2013年05月21日 | Weblog
最近読んだ本の簡単な感想文を載せます。基本的に取り上げる本は学生にお勧めのものです。

オーデット・シェンカー『コピーキャット』東洋経済新報社。

 経営学の通説では,イノベーションこそが,企業の発展を決定づけることになっています。それは果たして本当なのか。通説を疑って,企業経営における模倣の重要性を論じたのがこの本です。大きく発展した企業は実はイノベーターではなく,模倣者であることが多いことを示して,模倣の重要性を説き,さらには模倣に必要な能力,模倣の在り方を示す戦略などを説明しています。模倣という言葉の使い方がややあいまいなのが気になるところですが,事例が多くちりばめられているので,一気に読めます。

遠藤功『現場女子』日本経済新聞出版社。

 この本は,働く女性のうち,販売,開発,生産,運送という,財やサービスの提供に直接かかわる仕事,すなわち現場仕事に携わっている人の働き方を取り上げています。8人の現場女子に対する著者のインタビューを編集して1冊の本にしています。男性と伍して仕事をする女性の心構え,それでいて女性らしさを出していく方法,自然体で長く仕事を続ける妙味などを知ることができます。就職前の女子学生に是非読んで欲しい本です。

湯谷昇羊『いらっしゃいませと言えない国』新潮文庫。

 
 日本から中国に進出した流通業で最も成功したイトーヨーカ堂の軌跡を取り上げた本です。従業員教育で最も苦心したのが,お客さんに対する挨拶であるというエピソードにちなんでタイトルが付けられています。多くの日本企業が撤退しつつある今,あえて中国に根付いた企業に注目する意義があるでしょう。反日デモが激しい中,現地の消費者に「こんないい店をつぶしてはいけない」と言わしめたヨーカ堂。その現地化やノウハウ移植の苦労に心を奪われます。

西内啓『統計学が最強の学問である』ダイヤモンド社。

 この本は,統計学をテーマにしたビジネス書にもかかわらず,現時点で20万部以上売れているベストセラーです。統計学の発展史を踏まえながら,仮説検証の考え方,統計手法の使い方や結果の読み方などが分かりやすく記述されています。個人的には,カイ二乗検定から,重回帰分析までを一般化線形モデルとして説明されている点がよかった。専門用語が色々出てくる点や,少々上から目線の表現が出てくる点で,学生は読みづらいと感じてしまうかもしれませんが,研究発表前に読む価値はあります。


 どれもビジネス書として最近出版されたものです。専門書ではないため,平易に書かれています。しかし,専門書と変わらないほど,有用な知識を得ることができるでしょう。私には読みごたえがありました。

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新入生

2013年05月16日 | Weblog
1年生向けの必修科目,流通論(1時限開講)を担当しています。新学期授業開始から1か月半が経ちました。例年この段階に差し掛かると,1時限開講のためか,20~30%の学生が欠席するようになります。しかし,今年度の1年生の欠席率は15%ほどです。不本意入学故に,まったく出席しない学生が例年10%ほど存在するので,それを除けばほとんど出席していると推察できます。

先日,小テストを実施しました。その答案を確認しました。例年,中学レベルの日本語表現すらできない,何を書いているのか不明なものが20%ほど存在します。しかし,今年はそういう答案は皆無です。例年多い誤字脱字も少なかった。

難化した昨年度入試は,従来とは違った層の学生を入学させたため,新入生は従来の学生とは違った行動パターンを示しているようです。

このように感じているのは私だけではないようです。バス通学しているゼミ生の1人は,いつもはゴールデンウィークが過ぎると,朝の藤が丘駅前における大学行きのバス待ち行列は解消するのに,今年は5月半ばでもその行列が解消しないといいます。1年生がきちんと1時限の授業に出席しているようだ,その1年生たちは授業開始時刻のずいぶん前からきちんと並んでいる,昨年とは違うというのです。

軽食を販売するキャンパス内売店(商学部生がよく利用する)のスタッフから,今年度の新入生は,上級生とは違って,きちんと列に並び,こちらの指示を聞いて買い物をしてくれるので,円滑に業務が進むという話を聞きました。上級生たちの中には,よくいえば自由人のような振る舞いをし,列にきちんと並ばず,何度指示を述べても聞いていない学生を何人も見かけるとも聞きました。

学力は,難しい学問が理解できるかどうかに関わるだけでなく,できて当たり前のことがきちんとできるかどうかにも関わっています。学力が高くなれば,できて当たり前の基本的な事柄をきちんと処理できるようになります。そして,それは日常の振る舞いを変えます。また,その振る舞いは社会集団の文化に影響を与えます。

うちの学部では,1990年代半ば以降,入試の易化・学力低下が進み,2000年代半ばには,高校の進路指導担当者から,「横着者の集まり」と指摘されるほど淀んだ雰囲気を生んでしまいました。近年は少し持ち直してきました。今後,今年度の新入生が学部の文化変革の起爆剤になってくれるのでしょうか。

問題は,新入生たちが,いままで蓄積され,一部の上級生たちが体現している「横着者」の文化に染まってしまう,もしくは,それに嫌気をさして辞めてしまうことです。

逆からとらえれば,新入生たちが,上級生たちの振る舞いを変化させ,「横着者」の文化を変えるかもしれないことが希望になります。私たちはそう望んでいます。

うちの学部の文化変革にとっては来年度が正念場になるでしょう。来年度はいよいよ新キャンパスが誕生し,学生はそこに通うことになります。その一方,来年度入学に向けた入試では,今度の入試難化を嫌って,受験生が大幅に減少することが予想されています。

とりあえず今年度は,1年生が伸び伸びと勉強し,課外活動に励むことができるよう後押しする必要があるようです。

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既存研究を活かす

2013年05月06日 | 運営
現在ゼミ生には,研究発表や卒論作成に向けて,テーマの設定を行ってもらっています。今月に入ってからは,その途中経過をゼミにおいて発表してもらっています。

4月から,しつこく指示したことは,既存研究をきちんと読んで,それを踏まえてテーマを考えるということです。さらに,既存研究を修正するという発想で,研究の方向性を考え出すようにも指示しています。

これまでのゼミ生たちの発表やレポートでは,テーマを自分たちの身近な経験から探そうとしていました。しかし,これはすぐに壁にぶち当たります。なぜならば,学生の経験と思考が浅いからです。たいていは思い付きにとどまり,明快な主張と根拠づけがないまま,体系立たない事例のつぎはぎを報告して終わりです。

今ゼミ生にやってもらっているのは,既存の論文を読んで,その結果や主張が本当に妥当なのか,修正すべき点はないのか,他の分野・対象への応用可能性はないのか,検討することです。ゼミではいつも,「なんで?」「ほんま?」の言葉を繰り返し問いかけるよう指示しています。

先日,あるゼミ4年生が,顧客満足とブランド・ロイヤルティーとの関連を研究した論文を読んで,その修正策をテーマにするという卒論の方針を発表しました。その既存研究は,一般的には,消費者がブランドの購買・消費に対して高い顧客満足を得ることができれば,当該ブランドを繰り返し購買することにつながる,すなわちブランド・ロイヤルティーは高まるとされているが,それは本当なのか疑問に思い,様々なカテゴリーで検討しなおすというものです。そして,いくつかのカテゴリーでは,顧客満足がブランド・ロイヤルティーを高めるとはいえないという結果が得られたというものです。

ゼミ生は,それをレビューしたうえで,何か問題点を見つけ,修正する策を導出し,それをテーマにしようとしていました。そこで,私は次のように指示しました。「なぜ,いくつかのカテゴリーでは,顧客満足がブランド・ロイヤルティーを高める結果を得ることができなかったのか。何かカテゴリー間で共通性はあるのか。また,顧客満足がブランド・ロイヤルティーにつながらないメカニズムは何なのか。さらには,ブランド・ロイヤルティーを生み出すメカニズムはそもそもどのようなものなのか」考えて欲しい。

彼が取り上げた既存研究は,ブランド・ロイヤルティーに関する通説を疑うものです。それを踏まえて,さらにゼミ生にはその既存研究の結果に対して,「なんで?」「ほんま?」を問いかけて欲しいのです。既存研究においては,顧客満足が得られれば,ブランド・ロイヤルティーは高まるというのは本当なのか?という本質的な問いかけをしています。そして,顧客満足が得られてもブランド・ロイヤルティーには結びつかないカテゴリーがあるという結果を導き出しています。しかし,なぜ,そうなるのかについては検討が不足しています。ゼミ生には,そこを追究して欲しいといいました。

その既存研究は高度な統計手法を使用しています。私にもよく分からないものです。しかし,それに幻惑されずに,本質的な問いかけと,その答えを考えてみて欲しいと思っています。経営学やマーケティングの研究では,高度な統計手法は,研究の本丸ではないことが多いでしょう。素朴な検証方法でもよいと思います。大事なことは,本質的な問いかけを見失わないこと,きちんとロジックを示すことができることです。

既存研究の修正でテーマを導出するという課題のおかげか,例年と比べ,ゼミ生の思考は具体的になっています。この先しつこく指示していくつもりです。
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