愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

安直さ

2009年11月30日 | 名古屋マーケティング・インカレ
昨日に続き,名古屋マーケティング・インカレの話です。

私は自分のゼミ生には,勝ち負けにこだわるのではなく,堂々とした,恥をかかない発表をして欲しいと繰り返し話していました。どのブロックに入るかによって採点は変わってしまうものです。また,そもそも人によって何を重視して評価をするのかが違っています。したがって,勝ったチームは,たまたま運よく,ライバルとの差を認めてもらって勝ち上がったに過ぎないのかもしれません。そんなことよりも,「あいつらすごかったな」「よくやったな」と周囲に言ってもらえる発表をしてくれればいいのです。悪くしても,「あいつらバカだな」と陰口を叩かれない,恥をかかない発表をしてくれればいいのです。その声の方が自然で,本音の,心に残る評価になります。

今回残念なことに,うちのゼミの4チームのうち2チームは,堂々としていない,恥をかいた発表をしました。発表前からそうなることは分かっていました。おろかなことに,本大会の数日前に内容を大幅に変更してしまったのです。とても本大会でまともな発表ができるはずがないことは明らかです。今回,評価の高かったチームの研究内容は,春学期の時点で決めた方向性を着実に深化させていました。細かな概念の操作,データの収集・処理,論理の構築をしつこいぐらいに繰り返し見直してきていました。おろかなことに,その2チームは直前に「テーマを深めるアイディアが浮かばないので,変えます」「資料がありません」といって内容を変えたのでした。

彼らはアイディアが浮かばないといった訳ですが,元々たいした専門知識を持たない学生のレベルで,すごいアイディアが浮かぶはずがありません。アイディアというのはまずは他から借りてくるのです。それもいくつもです。そしてそれらをどのように組み合わせるか,修正するのかを突き詰めることによって,やっと少し自分達のアイディアが出てくるのです。

資料がないともいっていた訳ですが,本当にそうなのか疑問です。資料(2次データ)はインターネットで検索をして引っかかるものだけではありません。研究のための資料探しというのは,本,雑誌,新聞など何百から何千と当ってみて(検索できないものは直接ブラウジングして),欲しいものが少し手に入るのだという心構えで行わなくてはなりません。簡単には手に入りません。そして,それでもいい資料・データが収集できなければ,つぎは「足を使って」1次データを収集する努力をしなければなりません。アンケート調査,ヒヤリング調査,観察調査などを行うのです。一度やってうまくいかなければ,何度も手を変えてやるしかありません。これらはアイディアを借りてくるため,アイディアを組み合わせるために必要な作業です。

ゼミのほかの学生達は口々に「元に戻した方がいい」「最初の内容とつながるようにしないとだめだ」とアドバイスしていました。耳を傾けてはいない様子でした。彼らの先輩は,「企業ヒヤリングをした方がいい」とアドバイスしましたが,何のアクションもありませんでした。11月に入り,どうにもこうにもならなくなって,間に合いそうもなかったので,私はとにかく2次データをきちんと集めることをやっと欲しいといいました。しかし,方向性の変更に関してははっきりとは指示しませんでした。なぜならば,内容に責任を持つのは(恥をかくのは)学生達だから,あえて引いて見守ることにしよう,その方が実は厳しい指導になると考えたからです。

学生による研究発表会といえども,安直さはすぐに見抜かれてしまいます。これが社会に出てからの仕事だったらどうでしょう。安直さは通用しないということを学んでくれたなら,今回恥をかいた意義があったのだと思います。
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第4回名古屋マーケティング・インカレ本大会

2009年11月29日 | 名古屋マーケティング・インカレ
第4回名古屋マーケティング・インカレ本大会が11月28日に名城大で開催されました。今回は,愛知大,名城大,名古屋学院大,愛知学院大から20チーム90名を超える学生が参加しました。そして協賛いただいている日経ビジネスより3名の特別審査員をお迎えしました。

午前中5ブロックに分かれて予選の研究発表が行われ,学生の相互評価(採点)によって,決勝進出チーム(優秀賞)を決めました。そして午後に各ブロックから勝ち上がったチームによる決勝の研究発表が行われました。

優秀賞に選ばれたのはつぎのチーム。
 愛知大おしゃれイズム
 愛知大でっどおああらいぶ
 愛知大I Love Surf
 愛知大ユニclothes
 名城大OGC~オーガニック
 名城大2ブロック
 名城大のべーず

同一ブロック同点チームがあったので,じゃんけんで決勝進出を決めました。その結果,おしゃれイズムとユニclothesが残念ながら決勝進出を逃しました。決勝後,今回最優秀賞に選ばれたのはOGC~オーガニックでした。このチームは,有機野菜の普及率を向上させるための,企業による普及策(マーケティング戦略)の提案を導き出しました。普及策を案出するために,企業へのヒヤリングと消費者アンケートを実施しています。この中で企業が思うほど消費者は有機野菜の特色である見た目の悪さにこだわっていないことを明らかにしています。したがって,そういう不ぞろいな野菜の積極投入などを提案しています。

OGCが評価されたのは,何より「足を使った」「手間をかけた」調査を行った点だったと思います。複数の企業に数度ヒヤリングを実施し,さらに消費者アンケート調査を行っています。消費者アンケートは,他チームが大学生対象という簡便な方法をとっている中で,彼らは街頭で消費者一般に対して実施しています。このねばっこい手間をかけた調査は最優秀に値すると思います。

名古屋マーケティング・インカレでは,学生の相互評価によって,予選通過が決まります。決勝では日経ビジネスの特別審査員が加わりますが,相互評価が中心であることは変わりません。教員は採点には加わりません。そうした場合,学生達の評価と教員の内々の評価とが違っていることがままあります。学生は分かり易さに重きをおく傾向がありますが,我々教員は着眼点や論理展開など研究そのものの「面白さ」に重点をおきます。そこで,今回,実行委員会特別賞というのを設け,我々教員が面白いと思った研究を表彰することにしました。

特別賞に選ばれたのはI Love Surfでした。このチームはコンサートやスポーツ観戦などのエンターテイメント・サービスの購買に対する阻害要因を明らかにすることを目指していました。彼女達なりに見出した阻害要因はサービス消費の際の消費者の一体感でした。非日常な出来事であるエンターテイメント・サービスの魅力は一体感なのだが,それが新規顧客を獲得することに対して阻害要因になっているというのです。世の中長所が短所に化けるという現象は気づきにくいものの意外に多いものです。魅力が阻害要因になるというロジックを自分達なりに見出したことに研究のおもしろさを感じました。

なお,特別賞を設けるぐらいなら,教員が採点に関わればいいじゃないかという意見があります。しかし,我々はそれをする気はありません。なぜならば,そうすると学生達は教員の方を向いて,教員に気に入られるような活動をしてしまうからです。そうなると,同じ立場の学生間で教えあったり,批判しあったり,刺激しあったり,交流したりすることを遠ざけてしまうかもしれません。このインカレの趣旨からずれてしまうかもしれないのです。相互評価(ピアレビューといいます)こそが,競争を激しくし,相手からの学びを促し,交流を深めるのだと信じています。

今回発表全体を振り返ってみると,ほとんどのチームのレベルは拮抗していた(団子状態)と感じます。飛びぬけた発表をするチームはなかった一方で,下限が上がって,平均レベルは昨年よりも上昇していた印象です。教員が皆指摘したのが,質問のレベルが上がったということです。ゲスト参加の愛知学泉大浦上先生が「言葉足らずなことが多かったが,学生達は適格な質問をしていました。私が聞きたいと思ったことはきちんと質問していました」と述べられました。予選段階から論理展開の矛盾や根拠の不十分さをつく質問がきちんとなされていました。

勝敗を決めたのは少しの差と運だったと思います。全大学の学生には「勝っておごらず,負けてくさらず」という言葉を認識して欲しいと思います。
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カウントダウン

2009年11月25日 | 名古屋マーケティング・インカレ
ゼミの3年生たちは今週末名古屋マーケティング・インカレ本大会を迎えます。先日は大学間で発表レジュメの交換を行いました。事前に競合チームの発表内容を知ることで,質疑応答を実のあるものにする理由からやっています。しかし,現実的には,学生たちは今日現在考え出している発表内容を本大会直前に変更してしまうかもしれない状況に陥っています。しかも,そういう状況なので,他チームの発表内容を検討している余裕は全くありません。それでも,レジュメ交換は,学生たちを追い込み,あせらせるという意味はあるのかもしれません。

レジュメ交換が済んで改めて確認したことは,今年度は,例年よりも締め切りが早く来てしまうことです。12月第1週末から11月最終週末というように昨年よりも1週間本大会開催日を前倒ししています。この前倒しは学生からの要望で実現しました。というのも,3年次の秋から始まる就職活動が12月には本格化するので,従来のスケジュールでは就職セミナー等に出席できないという声が出たのです(昨年度の参加学生からも出た)。この前倒しがひょっとしたら発表に影を落とすかもしれません。

今年,ゼミ生たちを見ていると,昨年と比べると,「出来上がりが悪い」,あるいは「遅い」と思うことが多いのです。ゼミ生が本格的に研究内容を具体化し始めたのが10月に入ってからです。何とか,発表内容が形になり,とりあえずプレゼンの練習ができるようになったのが11月も半ばになってからです。これは例年通りです。それから修正を重ねブラッシュ・アップを図らなければならないのですが,その過程が昨年よりも1週間短縮してしまうことになるという印象です。

夏前から研究を本格化し,内容を固めていれば,問題はないのですが,やはり人間というのは土壇場にならないと動かないという習性をもつようです。秋学期が始まってからやっと皆やり始めるのですから・・・。始めるのがいつもと同じなら,大会が1週間前倒しになれば,その分期間は短縮,内容もその分薄まるということなのでしょうか。締め切りが近づかないとやり始めないのは私も同じなので,非難はできません。

今いえることは,参加する全大学の学生は,後数日,精根尽き果てるまで努力してくださいということです。
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データ

2009年11月11日 | 卒論
もうすぐ,3年生は名古屋マーケティング・インカレ本大会,4年生は卒論提出の日を迎えます。今はもう最終的に内容をまとめ上げる時期なのですが,おそろしいことにまだまだ道遠しというグループや学生がいます。たいしてあせっていないのが不思議なぐらいです。誰かが何とかしてくれるということは全く期待できないはずなのです。甘いのが学生の特権とはいっていられません。

内容がいまひとつだと指摘している研究発表や卒論には共通している問題点があります。それは主張を裏づけるデータがないのです。戦略提案を考えるという類の研究が多いのですが,たいてい思いつきで終わっています。思いつきでない論理性のある主張にするためには,根拠が必要なのです。根拠として重要なのが裏づけデータです。

不思議なことに,学生に裏づけデータが必要だと指摘すると,揃いも揃って皆アンケートをとるといい出し,アンケートの質問表を考えてきます。データ収集というとアンケート調査しか手段がないと思い込んでいるようです。彼らが考えたアンケート質問表を見ると,思いつきで書いたあいまいな問いかけが並んでいます。「これは答えようがないな」というものが大半です。思いつきの主張を思いつきのアンケート調査で検証しようというのです。

わざわざ思いつきで,たいして意味のないアンケートをとるよりも,まずやって欲しいのが,既に誰かが調査して公表している二次データの徹底した収集です。日本はデータの宝庫です。日本ほど様々なデータがきちんと収集されて公表されている国はないといっていいぐらいです。数字で表現される定量的なデータも大量に揃っています。定量的なデータは,行政機関や民間シンクタンクが毎年あれこれ公表しているのです。白書のように読み物としても完成した形の中に盛り込まれているものもあります。学生のいい加減なアンケートデータとは比べ物にならない高い信頼度があることはいうまでもありません。しかも,それらはたいてい大学の図書館に揃っています。

行政機関や民間シンクタンクの調査データを加工して分析するだけでもかなりのことが分かり,主張の裏づけになるはずなのに,これをきちんとやろうという学生がいません。こちらが教えてないのならいたし方ないのですが,2年生のときから少しずつデータ収集方法は指導しています。さらに,具体的に「商業統計表を見よ」「家計調査年報を見よ」というように研究内容に合わせて指導もしています。

学生は統計表に専門用語が使われているため難しく感じるのでしょうか。あるいは客観的にとられて抽象的に表現されているデータが,自分たちの生活実感とかけ離れた感じがするのでしょうか。

専門用語は特殊な用語というだけで,難しいことはありません。解説を読めば理解できるものばかりです。また定量データが客観的・抽象的なのは当たり前のことです。そもそも数字で表されるデータが主観に満ちたものならば裏づけデータとして使えないではないですか(そういうのもありますが)。実は定量データは加工次第で生活実態をきちんと探ることができるのです。

ともかくゼミ生はじめ学生には,二次データの収集をきちんとやって欲しいと思います。たいしてお金がかからず,色々なことが分かるのですから。ただし,「分かる」ためには,頭の使いようが試されることにはなります・・・。
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