例年、授業をしていて気になるのが、学生がきちんとノート・メモを取れないことです。先日も大教室の授業で学生に苦言を呈しました。
学生たちはノートを全く取っていないわけではありません。パワーポイントを活用したディスプレイ上の文字(多くは専門用語とそれに関する箇条書きの簡単な説明)をノートに書き写すことはしています。しかし,教員が口頭で説明している内容,黒板に追記した文字をノートにメモ書きする学生は少数です。大教室の授業ではいつも,学生にディスプレイの文字を書き写してもらった後,この専門用語にどのような意味があるのか,箇条書きの説明を卑近な言葉で言い換えるとどのような表現になるのか,専門用語に関連する実例にはどのようなものがあるのか,私は口頭で説明します。しかしながら,その口頭説明の間,多くの学生はぼーと黙って聞いているだけです。ひどい場合にはスマートフォンをいじって説明を聞きません。
もう分りきったことだから聞かないのか,一度聞けばすぐさま記憶できるからメモを取らないのか。残念ながら,それほど理解力と記憶力の高い人物はまれな存在です。
実はこの口頭説明のメモが重要なのです。特に,学期末の試験対策上重要です。学期末に,ディスプレイからノートに書き写した箇条書きの文字を見ただけで,授業の内容をきちんと把握できる学生は,まれにみる高い記憶力の持ち主か,授業内容に関する自学自習を欠かさない勉強家以外にはいないでしょう。
口頭説明を簡単にでもメモしておくと,試験前に専門用語や理論と実例との結びつきを大まかに確認することができます。専門用語の身近な言葉への言い換えによって理論の理解も進みます。また,同じ項目について繰り返ししつこく口頭説明している状況をメモしておくと,それが重要項目であることが分かります。私の授業の場合,口頭説明のメモが試験対策に直結しているのです。
このメモ書きやノート取りは以下の記事のように,企業における実務能力に直結しています。特に口頭説明のメモ書き。在学中きちんと身に着けるべきであることは論を待たないでしょう。
入学前に推薦入試合格者に受けてもらっている入学前教育に関する報告書を先日読む機会がありました。それには,入学前教育を委託している業者による試験結果やアンケート調査結果が盛り込まれています。それによれば,うちの合格者と当該業者が請け負っているすべての大学合格者の平均との比較をすると,うちの合格者は,ノートについて,黒板の文字を書き写すだけにとどまっている者がより多く,教員の口頭説明をメモする者はより少ないことが判明しています。私の印象論という訳ではなさそうです。この先,しつこくノート取りを指導する必要がありそうです。
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今、本屋さんに行くと「メモ関係の本」がたくさん並んでいる。あなたも目にしたことがあるだろう。その中でも若手の起業家が書いた本はベストセラーになっている。その著者はテレビなどに出演し、メモの方法を公開したりしており、注目を集めている。ちょっとした「メモブーム」といってもいい。
基本的にメモ関係の本は「大切な内容はそのままにせずメモした方がいい」といったことが書いてある。実は、どの著者の本もそれほど変わった内容は書いていない。私もその1人であるが…。メモ自体は難しいノウハウではないのだ。
「メモは大切だ」と聞いて否定する人はいないだろう。実際、メモの効果を知らない人はほぼいない。やれば間違いなく効果があり、結果も出る。にもかかわらず、実行率は低い。メモほど「知っているのにやっていない」というノウハウはない。
実際の話、お客様にヒアリングする際、「手帳やノートにメモを取る」といった行為がきちんとできる人がどれほどいるだろうか? 以前、顧客管理ソフトの営業マンと商談した時のことだ。カフェでお会いし、要望をお伝えした。目をよく見てしっかり聞いてくれたが、メモはしない。大事なことを話しながらも、ちょっとだけ《大丈夫かなぁ…》と心配になった。ただ、そんなに要望は多くない。まあ《この程度の内容ならば、大丈夫だろう》と思いながらその日は別れた。
そして後日、提案書が事務所へ郵送されていた。その提案書を見てガッカリした。まったく、見当はずれの提案だったからだ。
この営業マンは悪い人ではない。人が良くて、営業トークもあまり上手ではない。誠実そうであり、私の好きなタイプの営業マンでもある。しかし、この提案はいただけない。すぐさま「もう一度出し直しますから」と言ってきたが、頼む気にはなれなかった。当然のことながら、この話はお断りした。
「トップ営業マンが「メモ」を絶対におろそかにしない理由」『ダイヤモンド・オンライン』2019.6.19より抜粋。
学生たちはノートを全く取っていないわけではありません。パワーポイントを活用したディスプレイ上の文字(多くは専門用語とそれに関する箇条書きの簡単な説明)をノートに書き写すことはしています。しかし,教員が口頭で説明している内容,黒板に追記した文字をノートにメモ書きする学生は少数です。大教室の授業ではいつも,学生にディスプレイの文字を書き写してもらった後,この専門用語にどのような意味があるのか,箇条書きの説明を卑近な言葉で言い換えるとどのような表現になるのか,専門用語に関連する実例にはどのようなものがあるのか,私は口頭で説明します。しかしながら,その口頭説明の間,多くの学生はぼーと黙って聞いているだけです。ひどい場合にはスマートフォンをいじって説明を聞きません。
もう分りきったことだから聞かないのか,一度聞けばすぐさま記憶できるからメモを取らないのか。残念ながら,それほど理解力と記憶力の高い人物はまれな存在です。
実はこの口頭説明のメモが重要なのです。特に,学期末の試験対策上重要です。学期末に,ディスプレイからノートに書き写した箇条書きの文字を見ただけで,授業の内容をきちんと把握できる学生は,まれにみる高い記憶力の持ち主か,授業内容に関する自学自習を欠かさない勉強家以外にはいないでしょう。
口頭説明を簡単にでもメモしておくと,試験前に専門用語や理論と実例との結びつきを大まかに確認することができます。専門用語の身近な言葉への言い換えによって理論の理解も進みます。また,同じ項目について繰り返ししつこく口頭説明している状況をメモしておくと,それが重要項目であることが分かります。私の授業の場合,口頭説明のメモが試験対策に直結しているのです。
このメモ書きやノート取りは以下の記事のように,企業における実務能力に直結しています。特に口頭説明のメモ書き。在学中きちんと身に着けるべきであることは論を待たないでしょう。
入学前に推薦入試合格者に受けてもらっている入学前教育に関する報告書を先日読む機会がありました。それには,入学前教育を委託している業者による試験結果やアンケート調査結果が盛り込まれています。それによれば,うちの合格者と当該業者が請け負っているすべての大学合格者の平均との比較をすると,うちの合格者は,ノートについて,黒板の文字を書き写すだけにとどまっている者がより多く,教員の口頭説明をメモする者はより少ないことが判明しています。私の印象論という訳ではなさそうです。この先,しつこくノート取りを指導する必要がありそうです。
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今、本屋さんに行くと「メモ関係の本」がたくさん並んでいる。あなたも目にしたことがあるだろう。その中でも若手の起業家が書いた本はベストセラーになっている。その著者はテレビなどに出演し、メモの方法を公開したりしており、注目を集めている。ちょっとした「メモブーム」といってもいい。
基本的にメモ関係の本は「大切な内容はそのままにせずメモした方がいい」といったことが書いてある。実は、どの著者の本もそれほど変わった内容は書いていない。私もその1人であるが…。メモ自体は難しいノウハウではないのだ。
「メモは大切だ」と聞いて否定する人はいないだろう。実際、メモの効果を知らない人はほぼいない。やれば間違いなく効果があり、結果も出る。にもかかわらず、実行率は低い。メモほど「知っているのにやっていない」というノウハウはない。
実際の話、お客様にヒアリングする際、「手帳やノートにメモを取る」といった行為がきちんとできる人がどれほどいるだろうか? 以前、顧客管理ソフトの営業マンと商談した時のことだ。カフェでお会いし、要望をお伝えした。目をよく見てしっかり聞いてくれたが、メモはしない。大事なことを話しながらも、ちょっとだけ《大丈夫かなぁ…》と心配になった。ただ、そんなに要望は多くない。まあ《この程度の内容ならば、大丈夫だろう》と思いながらその日は別れた。
そして後日、提案書が事務所へ郵送されていた。その提案書を見てガッカリした。まったく、見当はずれの提案だったからだ。
この営業マンは悪い人ではない。人が良くて、営業トークもあまり上手ではない。誠実そうであり、私の好きなタイプの営業マンでもある。しかし、この提案はいただけない。すぐさま「もう一度出し直しますから」と言ってきたが、頼む気にはなれなかった。当然のことながら、この話はお断りした。
「トップ営業マンが「メモ」を絶対におろそかにしない理由」『ダイヤモンド・オンライン』2019.6.19より抜粋。