愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

ノートの問題

2009年02月08日 | Weblog
『東大合格生のノートはかならず美しい 』という本がヒットしています。成績の良い学生のノートはきれいで内容がきちんと整理されているという事実は,現場教師にはよく理解できます。私は大学教員になったときから成績とノートとの関係に気づいていました。

今,ノートをとれない大学生が激増しています。1年生対象の入門科目で,ノートのとり方を教える大学がいくつもあります。しかも,入学難易度の低い私立大学だけでなく,比較的学力が高い学生が集まる国立大学においてもです。私のように難関ではない大学の教員はずいぶん前からこれに手を焼いてきました。最近ビジネス・マンに大学におけるノートとりの問題を話すと,「実は若い社員でメモをとらない者が増えた。上司が指示してもぼうっと聞いているだけでメモをとらない。分かっているのかと思って様子を見ていると,全然分かっていない。とても仕事を任せられない」という返答がありました。企業の現場でも問題にしているところがあるようです。

大学生や若い社会人がノートをとれない大きな理由は,耳で聞いたことを文章に書き起こせないことです(口述筆記できない)。小中高では先生が詳細に授業内容を板書してくれました。ところが大学では教員はきちんと板書しません。キーワードを書く程度の授業もあります。企業では上司がきちんと板書で詳細に仕事の指示をすることは珍しいでしょう。そうなると,口述筆記する必要があります。しかし,これは,ボキャブラリーの豊富さ,記憶力の高さ,頭の回転の速さを要求しますので,学力低下が起きている今できない若い人が増えているのです。

かつてダイエー創業者である中内功さんの自筆ノートを見せていただく機会がありました。勲一等を受賞し,経団連副会長まで勤めた大経営者のノートは,地位にふさわしくおおまかなものであろうと勝手に想像していたので,見たときには驚きました。小売経営に関する実に詳細な事柄がきれいな字でびっしり書かれていたのです。よく整理されていました。中内さんはメモ魔で,とにかく聞いた話を徹底して書き込んで,ノートを作成したそうです。頭を働かせ,知識を記憶させるためにノートをとっていたそうです。知識に対する貪欲さとノートとりで鍛えた明晰な頭脳が中内さんを大経営者にしたのかもしれません。

ゼミ生はじめ学生の皆さんはノートとりをばかばかしがらずに練習してみてください。高度な知的訓練になります。ノートのとり方を指南した本が沢山出ていますので,それらを参考にしてください。今多くの大学ではFDの一環で黒板等(パワーポイント含む)できちんと授業内容を呈示することを教員に要求しています。口述筆記させるような授業は評価されないという雰囲気もあります。しかし,学生の知的訓練を考えると,口述筆記は重要です。とくに大学卒業後のことを考えると,口述筆記は必須の技術になるでしょう。なぜならば,上司や顧客が自らの指示・要求をきれいに板書して説明してくれる職場が多くあるとは思えないからです。
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コミュニケーション能力の問題

2009年02月03日 | 就職
秋学期の定期試験が終わりました。定期試験が終わると本格化するのが,我々教員にとっては入試,そして学生(3年生)にとっては就職活動です。3年生たちは連日セミナー・説明会の参加に追われているようです。迷ったら,参加する,出かけるという気構えで,今はとにかく行動的であって欲しいと思います。

就職活動ではよくコミュニケーション能力が話題になります。コミュニケーション能力というと,堂々と自己アピールできる,立て板に水のごとくすらすらと説明ができるというように,学生が思い浮かべることは情報発信の巧みさかもしれません。しかし,コミュニケーションというのは,情報の発信と受信両方の繰り返しです。つまり,コミュニケーション能力には情報の受信に関する能力も含まれるのです。

コミュニケーション能力が就職活動等で話題になるのは,それが低い学生が多いからですが,情報発信よりも情報受信に問題がある学生が多いようです。つまり,他人の発言や指示を理解できない,周囲の状況をうまく整理して読み取ることができない学生が多いのです。大学では試験でこのことが端的に現れます。試験で問いかけていることとは関係のない事柄をだらだらと答案として書いてくる学生が見受けられます。当然不合格なのですが,困ったことに,そういう学生に限ってなぜ不合格なのかとクレームをつけてきます。「一生懸命たくさん答案を書きました。出席もきちんとしています。なのに,なぜ不合格なのですか?私は合格しているはずです」と。唖然とする言い分です。いくら本人ががんばっていようと,要求された内容とレベルで結果を出さなくては通用しないということが理解できていません。そしてきちんと情報の受信ができていないのです。スーパーで,大根をくださいというお客に,にんじんを渡すようなものです。いくらにんじんの質が高かろうと,おまけのにんじんをサービスしようと,値引きして提供しようと,お客の要求には応えていないので,商売は成り立ちません。それと同じことです。

ラグビーの日本代表選手として活躍された平尾誠二さんはいい選手は情報をとるのがうまいといいます。監督やリーダーの指示をきちんと理解し,同じチームの他の選手の動き,相手チームの選手の動き,ボールの動きなど,瞬間ごとに周囲の状況をきちんと把握することができる情報受信能力が重要なのだといいます。

就職活動でも同じではないでしょうか。ゼミ生はじめ学生の皆さんは,企業の発信している情報をきちんと受け止めているか,人事担当者の説明を早合点せずに理解することができるか,周囲の受験生の状況を把握しているか,そういう情報受信についてセミナーや面接時に確認してみてください。上司や顧客の指示・要求をきちんと聞けない(あるいは理解できない)で,自己本位の情報発信をする人物を企業が人材として雇い続けるとは思えません。
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