本日令和7年度(2025年度)愛知学院大学入学式が日進キャンパス講堂にて挙行されました。2700名を超える新入生が集いました。式は2部制で,256名の商学部新入生は午前の第1部に出席しました。私は教務部長という役職上,壇上で式に参加しました。
学長の式辞は,仏教の教えを取り入れた内容でした。もちろんその中には本学の建学理念「行学一体・報恩感謝」の解説も含まれます。真面目なのか,退屈なのか,緊張のためなのか,表情を変えずに学生たちは聞いていました。そういえば,式終了後会場外で「この大学は宗教色強め!」と話していた学生を何人もみましたので,本学が仏教系大学なのを知らずに入学して,式中あっけにとられていたのかもしれません。しかし,仏教とりわけ禅を基盤とするのが本学なので,これを大学アイデンティティーの大事な要素だと受けとめて慣れて欲しいと思います。
今回式の前と後に,学生によるアトラクションが催されました。前にはジャズバンドの演奏,後にはダンスや太鼓のパフォーマンスと各種部サークルの紹介が行われました。全行事終了後は会場の講堂出入り口付近で,新入生に対して上級生が部サークルの勧誘をしていました。名城公園キャンパスの学生は日進キャンパスで展開される部サークル活動に関わらない傾向にありますが,これも学生生活を彩る重要な要素です。興味があれば,部サークル活動に関わってみてください。
学生たちの勧誘活動の合間に写真を撮りました。これは桜と講堂とが重なり合う風景です。桜は残念ながら満開ではなく五分咲きといったところです。明日からはオリエンテーションが始まります。7日からは授業が始まります。
学長の式辞は,仏教の教えを取り入れた内容でした。もちろんその中には本学の建学理念「行学一体・報恩感謝」の解説も含まれます。真面目なのか,退屈なのか,緊張のためなのか,表情を変えずに学生たちは聞いていました。そういえば,式終了後会場外で「この大学は宗教色強め!」と話していた学生を何人もみましたので,本学が仏教系大学なのを知らずに入学して,式中あっけにとられていたのかもしれません。しかし,仏教とりわけ禅を基盤とするのが本学なので,これを大学アイデンティティーの大事な要素だと受けとめて慣れて欲しいと思います。
今回式の前と後に,学生によるアトラクションが催されました。前にはジャズバンドの演奏,後にはダンスや太鼓のパフォーマンスと各種部サークルの紹介が行われました。全行事終了後は会場の講堂出入り口付近で,新入生に対して上級生が部サークルの勧誘をしていました。名城公園キャンパスの学生は日進キャンパスで展開される部サークル活動に関わらない傾向にありますが,これも学生生活を彩る重要な要素です。興味があれば,部サークル活動に関わってみてください。
学生たちの勧誘活動の合間に写真を撮りました。これは桜と講堂とが重なり合う風景です。桜は残念ながら満開ではなく五分咲きといったところです。明日からはオリエンテーションが始まります。7日からは授業が始まります。
正月3日に,高校の同級会が大阪で開催されました。中高一貫校だったので,6年間ともに過ごした同級生たちの集まりです。当時の恩師も参加してくれました。同級会のことを英語でclass reunionといいますが,まさに昔のクラス再結成という感じになりました。強い結びつきが感じられました。
昔話と近況を織り交ぜて会話が弾みましたが,ある同級生が私に向かってこんな話をしてきました。「自分の息子が君の後輩になったよ。君の通っていた大学学部と同じところに今通っている」と。そして,母校の施設やサークル活動のことをあれこれ「今こうなっているんだよ」と私に話してきました。私は「昔はこうだったので変わってないな」などと返しましたが,驚きました。
何に驚いたかというと,同級生が自分が入学したわけではないのに,その大学の学生でないと知らないような施設やサークルのことを話していたからです。子供の教育に親が関心を持つのは当然ですが,親が自分も入学したかのように子供の大学生活に関与しているのです。
帰宅後,同級生との会話を振り返りながら,愛知学院大学が「親子入学」という考え方の下で後援会(大学版PTA)を展開していることを思い出しました。子供が大学に入学した際には,保護者も入学したものとして大学教育に関与していくという趣旨です。毎年保護者には年会費を払っていただき,その資金を学生の課外活動の補助や奨学金等に拠出しています。
現在私は副学長・教務部長として,後援会の役員会や懇談会等に出席して,保護者の方々と懇談することを中心にその活動に関わっています。学部長時代にも同じように関わってきました。しかし,正直言って,「親子入学」をよく理解できていませんでした。
同級生との会話をきっかけに,本学学生の保護者の中にも,私の同級生同様,子供(あるいは親族)の学生生活に深い関心を持っていただいている方がいると思い至りました。後援会という組織の活動に熱心な保護者はそれほど多くありません。しかし,実際には高い熱量で大学を見つめている保護者が多く存在するかもしれない。
この保護者の方々にどのように対応するべきか。個人的には,何か特別な対応をする必要はないと考えています。学生が生き生きとした学生生活を送れば,それを通じて,保護者の方に,大学について強い印象を持ってもらえると思います。保護者の関心は何より自身の子供(あるいは親族)の充実した学生生活であると思います。何か対応をとるとすれば,学生が生き生きとした学生生活が送れるように我々教職員が基盤整備をして,後押しをすることだと思います。それが「親子入学」を実りあるものするのだと考えています。
昔話と近況を織り交ぜて会話が弾みましたが,ある同級生が私に向かってこんな話をしてきました。「自分の息子が君の後輩になったよ。君の通っていた大学学部と同じところに今通っている」と。そして,母校の施設やサークル活動のことをあれこれ「今こうなっているんだよ」と私に話してきました。私は「昔はこうだったので変わってないな」などと返しましたが,驚きました。
何に驚いたかというと,同級生が自分が入学したわけではないのに,その大学の学生でないと知らないような施設やサークルのことを話していたからです。子供の教育に親が関心を持つのは当然ですが,親が自分も入学したかのように子供の大学生活に関与しているのです。
帰宅後,同級生との会話を振り返りながら,愛知学院大学が「親子入学」という考え方の下で後援会(大学版PTA)を展開していることを思い出しました。子供が大学に入学した際には,保護者も入学したものとして大学教育に関与していくという趣旨です。毎年保護者には年会費を払っていただき,その資金を学生の課外活動の補助や奨学金等に拠出しています。
現在私は副学長・教務部長として,後援会の役員会や懇談会等に出席して,保護者の方々と懇談することを中心にその活動に関わっています。学部長時代にも同じように関わってきました。しかし,正直言って,「親子入学」をよく理解できていませんでした。
同級生との会話をきっかけに,本学学生の保護者の中にも,私の同級生同様,子供(あるいは親族)の学生生活に深い関心を持っていただいている方がいると思い至りました。後援会という組織の活動に熱心な保護者はそれほど多くありません。しかし,実際には高い熱量で大学を見つめている保護者が多く存在するかもしれない。
この保護者の方々にどのように対応するべきか。個人的には,何か特別な対応をする必要はないと考えています。学生が生き生きとした学生生活を送れば,それを通じて,保護者の方に,大学について強い印象を持ってもらえると思います。保護者の関心は何より自身の子供(あるいは親族)の充実した学生生活であると思います。何か対応をとるとすれば,学生が生き生きとした学生生活が送れるように我々教職員が基盤整備をして,後押しをすることだと思います。それが「親子入学」を実りあるものするのだと考えています。
2025年が幕開けました。21世紀は4分の1を消化しているわけです。ところで,2024年末にはゼミ卒業生たちと忘年会を催しました。昨年に続いて2回目です。参加者は昨年の半分ぐらいでしたが,卒業生個々と色々な話ができて,楽しく過ごすことができました。
昔のゼミの飲み会のように,話の大半が他愛もない事柄でした。昔を懐かしみながら,他愛もない話ができるというのが同窓生の集まりの楽しみです。また,ふとその合間に卒業生の近況を聞くことができました。こちらから大学の最近の動きも簡単に話すことができました。参加してくれた卒業生の皆さんには感謝いたします。
2次会で,卒業生の1人が,大学学部の公式同窓会(商経会)の懇親パーティーに出席したことを話題にし,自分以外の若い卒業生がほんの数人しか出席していない現状を憂いていました。実際,その懇親パーティー出席者の平均年齢は例年私より高いのです。今年の商経会懇親パーティーには是非うちのゼミ卒業が何人も出席して,若い出席者を増やすきっかけにしようという会話で2次会の締めとなりました。
青木ゼミ卒業生の皆さん。例年7月に開催される商経会懇親パーティーに是非出席してください。また,年末のゼミ卒業生忘年会を恒例行事にしたいと思いますので,これにも出席してください。年始のお願いです。
昔のゼミの飲み会のように,話の大半が他愛もない事柄でした。昔を懐かしみながら,他愛もない話ができるというのが同窓生の集まりの楽しみです。また,ふとその合間に卒業生の近況を聞くことができました。こちらから大学の最近の動きも簡単に話すことができました。参加してくれた卒業生の皆さんには感謝いたします。
2次会で,卒業生の1人が,大学学部の公式同窓会(商経会)の懇親パーティーに出席したことを話題にし,自分以外の若い卒業生がほんの数人しか出席していない現状を憂いていました。実際,その懇親パーティー出席者の平均年齢は例年私より高いのです。今年の商経会懇親パーティーには是非うちのゼミ卒業が何人も出席して,若い出席者を増やすきっかけにしようという会話で2次会の締めとなりました。
青木ゼミ卒業生の皆さん。例年7月に開催される商経会懇親パーティーに是非出席してください。また,年末のゼミ卒業生忘年会を恒例行事にしたいと思いますので,これにも出席してください。年始のお願いです。
7月の後半から今まで3週間以上猛暑日が続いています。自分の経験上,体温と同じかそれを超える気温がこんなにも長い期間続いたことはありませんでした。8月10日から大学は休暇に入っています。その休暇はもう終わりになりますが,休暇中暑さのため外に出かける気になれず,自宅に閉じこもっていました。
閉じこもって何をしていたかといえば,仕事(書類作成)と読書です。仕事は,昨今大学業界で定着したPDCAサイクルに基づいて反省と改善を図るという,内部質保証に関する報告書の執筆です。現在教務部長・副学長を務めていてそれに伴うものです。企業に倣って大学もPDCAサイクルを回せと上位機関から指示されて,多くの大学はそのような動きを見せています。問題なのは,厳格にPDCAサイクルに基づいて運営可能なのは閉じたシステム(外部環境の影響を受けない状況)だけだということです。大学のように(企業も同じ),開いたシステムとして,常に変動する外部環境(コントロール不可)に対応しなければならない状況下,どこまで実効性のある改善活動になるのか不明なのです。そう思いながらも,PDCAを踏まえて報告書をまとめています。
読書については専門外の本を読んでいました。最近読んだ本はつぎの通り。学生に参考にして欲しく,紹介します。
尾原宏之『「反・東大」の思想史』新潮社。この本は,絶対的存在である東京大学に反発して,存在を確立しようともがいてきた様々な大学の物語を描いています。慶應,早稲田,一橋,京都,同志社など現在名門校として名声を得ている各大学のアイデンティティーの裏には,東大への反発があったことが分かります。そして,実際に様々な反東大の闘争が起きていたことを知ることができます。大学史以外にも,労働運動や右翼思想にも触れています。大学人として,大学史に関心があったので,純粋に面白く読めました。
イザベル・ウィルカーソン『カーストーアメリカに渦巻く不満の根源ー』岩波書店。400頁を超える大著です。数年前アメリカにおいてアフリカ系の人が警官に殺され,それに対してブラック・ライブズ・マター運動が起きた背景をある程度把握することができました。インドのカースト制,ドイツのユダヤ人迫害と対比しながら,アメリカの人種差別の状況を説明しています。歴史上の迫害事件,著者自身の差別の経験などが,気が滅入る記述になっています。民主主義国アメリカの一断面を知ることができます。
三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』集英社。この本は最近の新書のベストセラーです。タイトルと内容に少し齟齬があり,実際の内容は,明治時代から現在に至る読書の在り方の歴史です。各時代のベストセラー(人気の雑誌も含む)を取り上げ,それが生まれた時代背景を解説しています。例えば,自分の学生時代である1980年代では,『サラダ記念日』『窓際のとっとちゃん』『ノルウェイの森』を取り上げ,これらが僕と私の視点の物語であり,コミュニケーション能力が労働市場で重視されたことがその背景にあると指摘しています。
閉じこもって何をしていたかといえば,仕事(書類作成)と読書です。仕事は,昨今大学業界で定着したPDCAサイクルに基づいて反省と改善を図るという,内部質保証に関する報告書の執筆です。現在教務部長・副学長を務めていてそれに伴うものです。企業に倣って大学もPDCAサイクルを回せと上位機関から指示されて,多くの大学はそのような動きを見せています。問題なのは,厳格にPDCAサイクルに基づいて運営可能なのは閉じたシステム(外部環境の影響を受けない状況)だけだということです。大学のように(企業も同じ),開いたシステムとして,常に変動する外部環境(コントロール不可)に対応しなければならない状況下,どこまで実効性のある改善活動になるのか不明なのです。そう思いながらも,PDCAを踏まえて報告書をまとめています。
読書については専門外の本を読んでいました。最近読んだ本はつぎの通り。学生に参考にして欲しく,紹介します。
尾原宏之『「反・東大」の思想史』新潮社。この本は,絶対的存在である東京大学に反発して,存在を確立しようともがいてきた様々な大学の物語を描いています。慶應,早稲田,一橋,京都,同志社など現在名門校として名声を得ている各大学のアイデンティティーの裏には,東大への反発があったことが分かります。そして,実際に様々な反東大の闘争が起きていたことを知ることができます。大学史以外にも,労働運動や右翼思想にも触れています。大学人として,大学史に関心があったので,純粋に面白く読めました。
イザベル・ウィルカーソン『カーストーアメリカに渦巻く不満の根源ー』岩波書店。400頁を超える大著です。数年前アメリカにおいてアフリカ系の人が警官に殺され,それに対してブラック・ライブズ・マター運動が起きた背景をある程度把握することができました。インドのカースト制,ドイツのユダヤ人迫害と対比しながら,アメリカの人種差別の状況を説明しています。歴史上の迫害事件,著者自身の差別の経験などが,気が滅入る記述になっています。民主主義国アメリカの一断面を知ることができます。
三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』集英社。この本は最近の新書のベストセラーです。タイトルと内容に少し齟齬があり,実際の内容は,明治時代から現在に至る読書の在り方の歴史です。各時代のベストセラー(人気の雑誌も含む)を取り上げ,それが生まれた時代背景を解説しています。例えば,自分の学生時代である1980年代では,『サラダ記念日』『窓際のとっとちゃん』『ノルウェイの森』を取り上げ,これらが僕と私の視点の物語であり,コミュニケーション能力が労働市場で重視されたことがその背景にあると指摘しています。
以下の記事において,注目論文を出した研究者の多くが研究の目的としたのは「自らの知的好奇心に応えること」(中略)日本の科学研究力を高めるには、研究者の知的好奇心に基づく研究を後押しする取り組みが必要だと書いてあります。この内容は,大学に所属している研究者にとって本来「当たり前」「分かり切ったこと」でしょう。
しかし,過去20年間の「競争的」「選択と集中」という文部科学行政によって,知的好奇心に応えることは日本の研究者にとって当たり前ではなくなってしまいました。研究資金獲得の競争を強いる行政によって,研究者たちは目先の資金獲得のための研究に注力せざるを得なくなりました。資金が得られる研究が研究者にとって面白い研究とは限りません。知的好奇心に応えるどころではないのです。競争によって日本の研究力を底上げするという目論見でしたが,研究者たちは疲弊しています。このことは過去20年間の日本の研究力弱体化につながっています。
ところで,「自らの知的好奇心に応える」というのは,学生指導においても重要であると感じます。うちのゼミでは,卒業論文の指導において,こちらからテーマを与えることはしません。テーマを学生個々に案出してもらいます。学生の中には,「書きやすい」テーマを探しだして,それを自らの卒業論文テーマとする者がいます。これまでの学生の状況を見ていると,そういう卒業論文はあまり出来がよくなく,円滑に調査や執筆が進まない印象です。
自らが面白いと感じたテーマを選んだ学生は,こちらがいくらダメ出しをしても,簡単にあきらめずに,繰り返し調査や思考を繰り返します。なぜダメ出しされたのか,自分なりに受けとめて探索します。そして,安易に結論を導こうとしません。その結果,学部内で優秀賞をとった例がいくつもあります。
第一線の研究者にとっても,学部学生にとっても,知的好奇心に応えるというのは大学という高等教育機関において最重要の運営軸なのだと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
研究者が注目度の高い論文を生み出すには何が必要か。文部科学省の研究所が3000人規模の大規模な調査を実施したところ、理工農分野では好奇心を重視して研究できる環境を整えることが重要だった。
科学技術・学術政策研究所は2020年度から大学の研究室などの環境や論文に代表されるアウトプットの情報を収集している。このほど自然科学に携わる大学の教員3000人以上を対象に研究の目的などについてアンケート調査し、約6割の回答を得た。
ほかの研究者の論文で引用された回数が上位10%に入る論文を注目度の高い論文と定義し、注目度の高くない論文を書いた一般的な研究者らの回答と比較した。
注目論文を出した研究者の多くが研究の目的としたのは「自らの知的好奇心に応えること」だった。理学・工学・農学分野では85%が当てはまると答えた。一般的な研究者の73%より12ポイント高かった。「挑戦的な課題に取り組む」も注目論文を出す研究者が答えた割合のほうが高かった。
一方で、研究の目的を「現実の問題を解決すること」と答えた一般的な研究者の割合は40%と、注目論文を出す研究者の34%を上回った。日本の科学研究力を高めるには、研究者の知的好奇心に基づく研究を後押しする取り組みが必要だ。
(日経新聞 2024年4月21日)
しかし,過去20年間の「競争的」「選択と集中」という文部科学行政によって,知的好奇心に応えることは日本の研究者にとって当たり前ではなくなってしまいました。研究資金獲得の競争を強いる行政によって,研究者たちは目先の資金獲得のための研究に注力せざるを得なくなりました。資金が得られる研究が研究者にとって面白い研究とは限りません。知的好奇心に応えるどころではないのです。競争によって日本の研究力を底上げするという目論見でしたが,研究者たちは疲弊しています。このことは過去20年間の日本の研究力弱体化につながっています。
ところで,「自らの知的好奇心に応える」というのは,学生指導においても重要であると感じます。うちのゼミでは,卒業論文の指導において,こちらからテーマを与えることはしません。テーマを学生個々に案出してもらいます。学生の中には,「書きやすい」テーマを探しだして,それを自らの卒業論文テーマとする者がいます。これまでの学生の状況を見ていると,そういう卒業論文はあまり出来がよくなく,円滑に調査や執筆が進まない印象です。
自らが面白いと感じたテーマを選んだ学生は,こちらがいくらダメ出しをしても,簡単にあきらめずに,繰り返し調査や思考を繰り返します。なぜダメ出しされたのか,自分なりに受けとめて探索します。そして,安易に結論を導こうとしません。その結果,学部内で優秀賞をとった例がいくつもあります。
第一線の研究者にとっても,学部学生にとっても,知的好奇心に応えるというのは大学という高等教育機関において最重要の運営軸なのだと思います。
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研究者が注目度の高い論文を生み出すには何が必要か。文部科学省の研究所が3000人規模の大規模な調査を実施したところ、理工農分野では好奇心を重視して研究できる環境を整えることが重要だった。
科学技術・学術政策研究所は2020年度から大学の研究室などの環境や論文に代表されるアウトプットの情報を収集している。このほど自然科学に携わる大学の教員3000人以上を対象に研究の目的などについてアンケート調査し、約6割の回答を得た。
ほかの研究者の論文で引用された回数が上位10%に入る論文を注目度の高い論文と定義し、注目度の高くない論文を書いた一般的な研究者らの回答と比較した。
注目論文を出した研究者の多くが研究の目的としたのは「自らの知的好奇心に応えること」だった。理学・工学・農学分野では85%が当てはまると答えた。一般的な研究者の73%より12ポイント高かった。「挑戦的な課題に取り組む」も注目論文を出す研究者が答えた割合のほうが高かった。
一方で、研究の目的を「現実の問題を解決すること」と答えた一般的な研究者の割合は40%と、注目論文を出す研究者の34%を上回った。日本の科学研究力を高めるには、研究者の知的好奇心に基づく研究を後押しする取り組みが必要だ。
(日経新聞 2024年4月21日)
今回おすすめは,杉本貴司『ユニクロ』日本経済新聞出版です。最近話題のビジネス書です。タイトルの通り,ユニクロを取り上げた著書です。経営者柳井正さんの学生時代から,最近までのユニクロ発展に関するドキュメンタリーです。450ページを超える大作です。
学者が書く経営史と違い,事実の客観的記述にはとらわれず,筆者の思いや評価をあちこちに盛り込んだ記述になっています。ただし,ジャーナリスト(日経新聞編集委員)らしく,徹底した取材に基づいて,詳細な物語を書き上げています。これには,成功あり,失敗あり,逆転あり,衝突あり,和解あり,別離あり,様々な人間模様が含まれているので,小説のような面白みがあります。平板な経営史やドキュメンタリーには仕上がらず,躍動感いっぱいの物語なのです。大作にもかかわらず2日ほどで読了しました。
私は本書を自分の専門である流通論のケースブックと捉え,流通システムを革新する先駆的小売業者の足跡として読み始めました。しかし,読み進めるにつれ,地方の個人商店が日本を代表する世界的大企業へと脱皮する過程として,捉えることができると気づきました。つまり組織論のケースブックです。山口県の地方都市にあった社長の個人商店が,東京に進出し,原宿で店舗を構え,フリースブームで飛躍する。ブーム後業績は落ち込んで危機を迎えるが,新しい商品・事業で再浮上のきっかけをつかむ。さらには海外進出を遂げて,世界的存在感を示していく。その過程で,柳井さんと彼を取り巻く幹部たちの衝突が起きる。そして,古参の幹部が脱落したり,新世代の幹部が育ったり,組織編成が変わったりする。
実際,組織が大きくなるにつれ,仕組みが整えられるのはどこも同じで,その過程で様々な混乱が起きます。ユニクロ(ファーストリテーリング)のような急成長企業は,経営者の役割や組織編制の変化,幹部の交代に伴うきしみを捉えるための好例なのでしょう。本書はその好例に切り込んでいます。
ただし,柳井個人商店であった当社が,個人商店を止めて,システマティックでしかも起業家精神あふれる大企業に脱皮したのかどうか,本書はまだ十分描き切っていないと感じました。柳井さんが現役中はそれは難しいのかもしれません。続編を期待します。ともかく,あっという間に読める面白さ。しかも,流通論や組織論の学びにつながる良書です。
学者が書く経営史と違い,事実の客観的記述にはとらわれず,筆者の思いや評価をあちこちに盛り込んだ記述になっています。ただし,ジャーナリスト(日経新聞編集委員)らしく,徹底した取材に基づいて,詳細な物語を書き上げています。これには,成功あり,失敗あり,逆転あり,衝突あり,和解あり,別離あり,様々な人間模様が含まれているので,小説のような面白みがあります。平板な経営史やドキュメンタリーには仕上がらず,躍動感いっぱいの物語なのです。大作にもかかわらず2日ほどで読了しました。
私は本書を自分の専門である流通論のケースブックと捉え,流通システムを革新する先駆的小売業者の足跡として読み始めました。しかし,読み進めるにつれ,地方の個人商店が日本を代表する世界的大企業へと脱皮する過程として,捉えることができると気づきました。つまり組織論のケースブックです。山口県の地方都市にあった社長の個人商店が,東京に進出し,原宿で店舗を構え,フリースブームで飛躍する。ブーム後業績は落ち込んで危機を迎えるが,新しい商品・事業で再浮上のきっかけをつかむ。さらには海外進出を遂げて,世界的存在感を示していく。その過程で,柳井さんと彼を取り巻く幹部たちの衝突が起きる。そして,古参の幹部が脱落したり,新世代の幹部が育ったり,組織編成が変わったりする。
実際,組織が大きくなるにつれ,仕組みが整えられるのはどこも同じで,その過程で様々な混乱が起きます。ユニクロ(ファーストリテーリング)のような急成長企業は,経営者の役割や組織編制の変化,幹部の交代に伴うきしみを捉えるための好例なのでしょう。本書はその好例に切り込んでいます。
ただし,柳井個人商店であった当社が,個人商店を止めて,システマティックでしかも起業家精神あふれる大企業に脱皮したのかどうか,本書はまだ十分描き切っていないと感じました。柳井さんが現役中はそれは難しいのかもしれません。続編を期待します。ともかく,あっという間に読める面白さ。しかも,流通論や組織論の学びにつながる良書です。
デジタル空間の情報との向き合い方を調べるため、読売新聞が日米韓3か国を対象にアンケート調査を実施した結果、米韓に比べ、日本は情報の事実確認をしない人が多く、ネットの仕組みに関する知識も乏しいことがわかった。日本人が偽情報にだまされやすい傾向にある実態が浮かんだ。
調査は昨年12月、国際大の山口真一准教授(経済学)とともに3か国の計3000人(15~69歳)を対象に共同で実施した。情報に接した際、「1次ソース(情報源)を調べる」と回答した人は米国73%、韓国57%に対し、日本は41%だった。「情報がいつ発信されたかを確認する」と答えた人も米国74%、韓国73%だったが、日本は54%にとどまった。
回答者のメディア利用状況なども聞いた結果、偽情報にだまされる傾向が表れたのは「SNSを信頼している人」「ニュースを受動的に受け取る人」だった。一方、だまされにくかったのは「新聞を読む人」「複数メディアから多様な情報を取得している人」だった。新聞を読む人はそうでない人と比べ、偽情報に気付く確率が5%高かった。
(読売新聞オンライン,2024年3月26日)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日本は情報のソース確認をしない人が多いという指摘は,学生の行動を見ていると納得できます。私の周囲では,安易なインターネット検索で情報収集を済ませ,それを研究発表や卒業論文に引用する学生が後を絶ちません。卒論の引用文献がすべてURLというのも珍しくありません。しかも,その引用元が政府の白書,企業のIR情報など確度の高いものならば問題ないのですが,だれが書いたか分からない個人の発信情報や企業のプロモーション関連情報について,1次ソースを確かめもせず使います。
うちの学生がよくやるのが,専門書(論文もあり)に書かれているはずの理論を,インターネット上の解説を読みそこから引用することです。インターネット上の解説は,個人,企業,協会が掲載しています。そして,元の専門書は読もうとはしないばかりか,図書館OPACの検索すらしません。
このネット上の解説を参考程度に読むのであれば問題ありません。しかし,専門書までたどって,その解説の真偽を確かめ,引用はその専門書から行わなければなりません。なぜならば,それが1次ソースだからです。1次ソースでないと,情報が歪曲されている,あるいは虚偽情報をまぎれているかもしれないのです。
以前,マーケティングのコトラー理論やポーター理論を使うといって,ゼミ生がインターネット上のそれらの解説記事を読み,研究発表に引用しようとしました。私はその内容に大きな違和感を持ったので,ゼミ生にコトラーやポーターの著書を読むように指示するとともに,自分で学生が引用している解説記事を読みました。果たして,解説記事にはコトラーやポータの著書からの引用表示がない上に,そもそも内容が間違っていました。
例えば,コトラー理論を解説するといいながら,コトラーのどの著書の内容を解説しているのか表記がなく,しかもコトラーではなく別の日本人学者の理論をコトラー説として解説しています。おそらくその解説記事を書いた本人はコトラーの著書を読んでいないでしょう。何かの資料の孫引き(ひ孫引きかもしれない)したのでしょう。
真偽を確かめないでインターネット情報に影響を受ける人は,インターネットの奴隷と化してしまうかもしれません。健全な状態ではありません。大学教育を受ける以上,ゼミ生には疑いの目をもってメディア,特にインターネットに接する姿勢を身に着けてほしいと思います。
調査は昨年12月、国際大の山口真一准教授(経済学)とともに3か国の計3000人(15~69歳)を対象に共同で実施した。情報に接した際、「1次ソース(情報源)を調べる」と回答した人は米国73%、韓国57%に対し、日本は41%だった。「情報がいつ発信されたかを確認する」と答えた人も米国74%、韓国73%だったが、日本は54%にとどまった。
回答者のメディア利用状況なども聞いた結果、偽情報にだまされる傾向が表れたのは「SNSを信頼している人」「ニュースを受動的に受け取る人」だった。一方、だまされにくかったのは「新聞を読む人」「複数メディアから多様な情報を取得している人」だった。新聞を読む人はそうでない人と比べ、偽情報に気付く確率が5%高かった。
(読売新聞オンライン,2024年3月26日)
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日本は情報のソース確認をしない人が多いという指摘は,学生の行動を見ていると納得できます。私の周囲では,安易なインターネット検索で情報収集を済ませ,それを研究発表や卒業論文に引用する学生が後を絶ちません。卒論の引用文献がすべてURLというのも珍しくありません。しかも,その引用元が政府の白書,企業のIR情報など確度の高いものならば問題ないのですが,だれが書いたか分からない個人の発信情報や企業のプロモーション関連情報について,1次ソースを確かめもせず使います。
うちの学生がよくやるのが,専門書(論文もあり)に書かれているはずの理論を,インターネット上の解説を読みそこから引用することです。インターネット上の解説は,個人,企業,協会が掲載しています。そして,元の専門書は読もうとはしないばかりか,図書館OPACの検索すらしません。
このネット上の解説を参考程度に読むのであれば問題ありません。しかし,専門書までたどって,その解説の真偽を確かめ,引用はその専門書から行わなければなりません。なぜならば,それが1次ソースだからです。1次ソースでないと,情報が歪曲されている,あるいは虚偽情報をまぎれているかもしれないのです。
以前,マーケティングのコトラー理論やポーター理論を使うといって,ゼミ生がインターネット上のそれらの解説記事を読み,研究発表に引用しようとしました。私はその内容に大きな違和感を持ったので,ゼミ生にコトラーやポーターの著書を読むように指示するとともに,自分で学生が引用している解説記事を読みました。果たして,解説記事にはコトラーやポータの著書からの引用表示がない上に,そもそも内容が間違っていました。
例えば,コトラー理論を解説するといいながら,コトラーのどの著書の内容を解説しているのか表記がなく,しかもコトラーではなく別の日本人学者の理論をコトラー説として解説しています。おそらくその解説記事を書いた本人はコトラーの著書を読んでいないでしょう。何かの資料の孫引き(ひ孫引きかもしれない)したのでしょう。
真偽を確かめないでインターネット情報に影響を受ける人は,インターネットの奴隷と化してしまうかもしれません。健全な状態ではありません。大学教育を受ける以上,ゼミ生には疑いの目をもってメディア,特にインターネットに接する姿勢を身に着けてほしいと思います。
最近,2024年アメリカ大統領選の共和党候補にドナルド・トランプ氏が決定しました。国際ニュースのトップとして扱われました。熱狂的な支持者がアメリカに存在することが浮き彫りになっています。
アメリカでも,日本でも,一期目のアメリカ大統領としてのトランプさんに良い印象を持たない人が多いようです。しかし,大きな政治的支持を得ている。しかも,白人労働者が所属する労働組合は元々民主党支持だったずなのに,多くの白人労働者は共和党のトランプさんを篤く支持している。何故なのか?
最近この疑問に答えてくれる本を読みました。マイケル・リンド『新しい階級闘争―大都市エリートから民主主義を守るー』東洋経済新報社,2022年です。 かつて政治闘争といえば,左右対決でした。右:保守:資本家VS左:リベラル:労働者という言い方ができるかもしれません。しかし,この本によれば,今は上下対決なのだといいます。上:リベラル:都市のエリートVS下:保守:地元労働者という対決の図式。
ペーパーバック版への序文につぎの文章が記述されています。
「一方に大都市で働く高学歴の管理者 経営者)や専門技術者からなる上流階級が存在し,もう一方には,昔からその国で働いてきた人びとと新しくやってきた移民とに分裂した大多数の労働者階級が存在し,両者のあいだで階級の二極化が進んでいる,ということである。かつて労働者階級の市民の利益を守り代弁していた旧来の機関(労働組合,宗教団体,地域政党など)は弱体化するか壊滅したため,政治・経済・文化という三つの領域 において,管理者(経営者)エリートと彼らが支配する非民主的機関(官僚,司法,企業,メディア,大学,非営利組織など)への権力の集中が進んだ。左派対右派という旧来の政治に取って代わり,新たに誕生したのがインサイダー対アウトサイダーの政治である。」
インサイダーというのは権力者という意味であり,アウトサイダーは非権力者です。インテリの権力者たちは,自分たちの利益のため新自由主義を信奉し,リベラル政策を推し進めます。それでは自分たちの利益が守られない地元労働者たちは,下品な扇動政治家の下に結集して対抗する図式が生まれたといいます。
移民に門戸を開く,人材の多様化を推し進めるなどのリベラル政策を推し進める民主党は,インテリたちの政党であり,労働者の意見を代表しなくなっています。かつてリベラル政策は非権力側が唱えることが多かったのですが事情は変わりました。
アメリカの労働者たちが,トランプさんが唱える移民の取り締まりに賛成するのは,移民が労働市場に参入してくるので,既存の労働者の仕事を奪う可能性が高いからです。インテリたちが移民受け入れを進めるのは,自分たちの仕事が奪われる可能性が低く,しかも安い労働力を自分たちが使う可能性が高まるからでしょう。
アメリカ労働者のトランプ支持は,偏狭なナショナリズムや差別主義というよりは,階級闘争と理解したほうがよいというのが本書の含意です。アメリカだけではなくヨーロッパ各国で似たような動きが見られるようです。
ゼミ生たち(あるいは大半の日本の大学生)にとって,自分たちの生活に直接かかわりのないアメリカ大統領選というのは,全く興味の持てない対岸の出来事かもしれません。しかし,実際には日本の政治や経済に大きな影響をもたらします。政治経済の変化によって,自分たちの今後の生活に影響があるかもしれません。是非ウォッチして欲しいイベントです。興味があれば是非『新しい階級闘争』を読んでみてください。
アメリカでも,日本でも,一期目のアメリカ大統領としてのトランプさんに良い印象を持たない人が多いようです。しかし,大きな政治的支持を得ている。しかも,白人労働者が所属する労働組合は元々民主党支持だったずなのに,多くの白人労働者は共和党のトランプさんを篤く支持している。何故なのか?
最近この疑問に答えてくれる本を読みました。マイケル・リンド『新しい階級闘争―大都市エリートから民主主義を守るー』東洋経済新報社,2022年です。 かつて政治闘争といえば,左右対決でした。右:保守:資本家VS左:リベラル:労働者という言い方ができるかもしれません。しかし,この本によれば,今は上下対決なのだといいます。上:リベラル:都市のエリートVS下:保守:地元労働者という対決の図式。
ペーパーバック版への序文につぎの文章が記述されています。
「一方に大都市で働く高学歴の管理者 経営者)や専門技術者からなる上流階級が存在し,もう一方には,昔からその国で働いてきた人びとと新しくやってきた移民とに分裂した大多数の労働者階級が存在し,両者のあいだで階級の二極化が進んでいる,ということである。かつて労働者階級の市民の利益を守り代弁していた旧来の機関(労働組合,宗教団体,地域政党など)は弱体化するか壊滅したため,政治・経済・文化という三つの領域 において,管理者(経営者)エリートと彼らが支配する非民主的機関(官僚,司法,企業,メディア,大学,非営利組織など)への権力の集中が進んだ。左派対右派という旧来の政治に取って代わり,新たに誕生したのがインサイダー対アウトサイダーの政治である。」
インサイダーというのは権力者という意味であり,アウトサイダーは非権力者です。インテリの権力者たちは,自分たちの利益のため新自由主義を信奉し,リベラル政策を推し進めます。それでは自分たちの利益が守られない地元労働者たちは,下品な扇動政治家の下に結集して対抗する図式が生まれたといいます。
移民に門戸を開く,人材の多様化を推し進めるなどのリベラル政策を推し進める民主党は,インテリたちの政党であり,労働者の意見を代表しなくなっています。かつてリベラル政策は非権力側が唱えることが多かったのですが事情は変わりました。
アメリカの労働者たちが,トランプさんが唱える移民の取り締まりに賛成するのは,移民が労働市場に参入してくるので,既存の労働者の仕事を奪う可能性が高いからです。インテリたちが移民受け入れを進めるのは,自分たちの仕事が奪われる可能性が低く,しかも安い労働力を自分たちが使う可能性が高まるからでしょう。
アメリカ労働者のトランプ支持は,偏狭なナショナリズムや差別主義というよりは,階級闘争と理解したほうがよいというのが本書の含意です。アメリカだけではなくヨーロッパ各国で似たような動きが見られるようです。
ゼミ生たち(あるいは大半の日本の大学生)にとって,自分たちの生活に直接かかわりのないアメリカ大統領選というのは,全く興味の持てない対岸の出来事かもしれません。しかし,実際には日本の政治や経済に大きな影響をもたらします。政治経済の変化によって,自分たちの今後の生活に影響があるかもしれません。是非ウォッチして欲しいイベントです。興味があれば是非『新しい階級闘争』を読んでみてください。
この度,『小売マーケティング・ハンドブック』第2版を同文舘出版より発刊しました。2012年に初版を出していました。10年以上前の内容では,現状に合わなくなっている個所が多々ありましたので,2022年12月から改訂作業に入り,1年程度かけて,内容刷新を図り,第2版を完成させました。
初版からの大きな修正点は,インターネット活用の章を追加したことです。そもそもこの本の目的は,店舗小売業に焦点を当てて,その活動を体系だてて整理し,活動の原理や理論的知見をとりあげることです。したがって,初版では,インターネットを積極的に取り上げませんでした。なぜならば,当時の小売業のインタネット活用はインターネット通販が中心で,店舗小売業と競合する関係にあったからです。ところが現在,店舗とインターネットは,小売業者の視点でも顧客の視点でも,混然一体となり,両者は補完的関係の側面が強くなっています。店舗小売業に焦点を当てることは変えないとしても,インターネット活用を積極的に扱わないのでは,小売活動を捉えきれなくなっているのです。そこで,第2版ではインターネット活用について独立した章を設定して積極的に扱うことにしました。
また,初版の在庫管理の章を発展させて,ロジスティクスと題した章に刷新しました。サプライチェーンの名の下,小売業者がロジスティクスに関心を高める事例が多くなってきたからです。社会全体としても,人手不足,資源高のため,ロジスティクスに関心が高まっています。それ以外の既存の章についても,研究の深まりや社会情勢の変化に応じて,参考すべき文献を渉猟し直し,記述内容を修正しています。
この第2版を,カリキュラム改正によってこの4月に設置される「流通チャネル論(旧小売経営論)」の教科書とする予定です。この本は,小売マーケティングのマネジメントを中心的内容としていますが,小売業者の流通における役割や果たす機能,小売業者と生産者・卸売業者との関係にも目配せしています。したがって,流通チャネル全体を見渡しながら,その主要プレイヤーである小売業者の活動や役割を講じることに適していると,手前味噌ながら考えています。
改訂作業は意外にも手がかかりました。新たに渉猟した国内外の文献は300を越えました。実際に使えたのは,数十程度でしたが,読んだ文献を無駄にすることによって,思考が固まりました。ほぼ毎日原稿の追加・書き直し作業に従事しました。2023年度は久しぶりに管理職から離れた年だったので,煩雑さを感じながらも充実した日々を送ることができました。
初版からの大きな修正点は,インターネット活用の章を追加したことです。そもそもこの本の目的は,店舗小売業に焦点を当てて,その活動を体系だてて整理し,活動の原理や理論的知見をとりあげることです。したがって,初版では,インターネットを積極的に取り上げませんでした。なぜならば,当時の小売業のインタネット活用はインターネット通販が中心で,店舗小売業と競合する関係にあったからです。ところが現在,店舗とインターネットは,小売業者の視点でも顧客の視点でも,混然一体となり,両者は補完的関係の側面が強くなっています。店舗小売業に焦点を当てることは変えないとしても,インターネット活用を積極的に扱わないのでは,小売活動を捉えきれなくなっているのです。そこで,第2版ではインターネット活用について独立した章を設定して積極的に扱うことにしました。
また,初版の在庫管理の章を発展させて,ロジスティクスと題した章に刷新しました。サプライチェーンの名の下,小売業者がロジスティクスに関心を高める事例が多くなってきたからです。社会全体としても,人手不足,資源高のため,ロジスティクスに関心が高まっています。それ以外の既存の章についても,研究の深まりや社会情勢の変化に応じて,参考すべき文献を渉猟し直し,記述内容を修正しています。
この第2版を,カリキュラム改正によってこの4月に設置される「流通チャネル論(旧小売経営論)」の教科書とする予定です。この本は,小売マーケティングのマネジメントを中心的内容としていますが,小売業者の流通における役割や果たす機能,小売業者と生産者・卸売業者との関係にも目配せしています。したがって,流通チャネル全体を見渡しながら,その主要プレイヤーである小売業者の活動や役割を講じることに適していると,手前味噌ながら考えています。
改訂作業は意外にも手がかかりました。新たに渉猟した国内外の文献は300を越えました。実際に使えたのは,数十程度でしたが,読んだ文献を無駄にすることによって,思考が固まりました。ほぼ毎日原稿の追加・書き直し作業に従事しました。2023年度は久しぶりに管理職から離れた年だったので,煩雑さを感じながらも充実した日々を送ることができました。