愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

おすすめ映画

2017年03月31日 | Weblog
先日,イギリスがEUからの離脱をEU側に正式に通告して,離脱交渉が始まりました。前代未聞の出来事ですが,イギリスは近現代史のなかで数々の先行事例を提供してきた国です。今回の離脱も政治・経済における先行事例となるかもしれません。ゼミの専門とは異なりますが,ゼミ生には注目して欲しいと思います。新聞や雑誌の関連記事をよく読んでください。

今回の事件でイギリスという国に関心を持った人が多いようです。私は,僅差の投票で離脱が決まれば,分裂を抱えながらも,すぐさまそちらに動いていくその国の政治の大胆さに驚き,その背景となる社会制度や文化に関心を持ちました。

イギリス文化・社会に関心のある学生におすすめの映画があります。「炎のランナー」(Chariots of Fire)です。封切られたのは1981年(日本では1982年)とずいぶん昔なので,それを観たことがある学生はごく少数かもしれません。私は,中学生の頃この映画が封切られ,ヴァンゲリスが作曲したそのサウンドトラックがヒットしたことを記憶しています。実際に映画を観たのは大学生の時です。

この映画の主人公は,1924年パリ・オリンピックで金メダルを取った2人のアスリートです(実在の人物)。一人は移民の子でケンブリッジ大に所属するユダヤ人学生,もう一人はスコットランドのプロテスタント聖職者。ユダヤ人学生は,人種差別・偏見に憤り,周囲を見返し,イギリス人としてのアイデンティティーを獲得するために走ります。プロテスタント聖職者は,信仰の発露,布教活動の一環として走ります。

ユダヤ人選手は,アメリカチームに倣って,プロのコーチについて訓練しますが,それがアマチュアリズムに反するとして大学学長から批判されます。それでも,そのコーチと二人三脚でオリンピックに挑みます。聖職者選手は,安息日に走ることを拒否し,国家の威信をにおわせる皇太子の説得にも応じず,日曜日開催のオリンピック予選出場をキャンセルします。同チームメンバーの貴族の選手が,自分の出場枠を譲り,聖職者選手はその枠で専門ではない種目に出場することになります。こういうエピソードが続き,最終的にユダヤ人選手と聖職者選手は,それぞれ100メートル走と400メートル走で金メダルを獲得します。

最初この映画を観た時には,つまらないという感想を持ちました。アスリートが主役なのに,暗く,ゆっくり,淡々と物語が進むからです。主人公2人が競い合うシーンはほとんどありません。いわゆるスポ根ものではないのです。しかし,最近再度観てその面白さに気づきました。この映画は,アスリートを通して,イギリス社会を描いているのだと。

人種,宗教,階級が入り組んで社会が構成されていることが暗に示されています。異端者である移民の子のユダヤ人学生とスコットランド人のプロテスタント聖職者が,周囲との軋轢と助力を経験しながら,イギリス(大英帝国)を代表してメダルをとるということこそ,当時のイギリス社会の複雑さ,緊張,寛容を示しています。

この映画で最も印象的なシーンは,ヴァンゲリスの曲が流れるなか,聖職者,貴族,ユダヤ人を含む選手たちが,雲が垂れ込めた灰色の空の下,海岸を一斉に走る冒頭と最後です。選手たちは様々な表情しながら,国旗のしるしの入ったユニフォームを着て,走ります。炎の戦車(chariots of fire)が行く。イギリス社会を象徴しているようなシーンです。

DVDや動画配信等で手軽に鑑賞可能です。時間があるときにぜひ観てください。私が最初に観た時のように,学生の感性ではつまらないかもしれませんが,観て損はありません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アルバム

2017年03月19日 | 運営
2016年度卒業式後のゼミの集まりを撮った写真をアルバム(フォトチャネル)にしてアップしました。また卒業生が作ってくれた寄せ書きも写真にとってアップしました。さらに,名古屋ウイメンズマラソン完走記念ペンダントを着けた倉地さんも追加しました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

卒業にあたって

2017年03月15日 | 運営
「下足番を命じられたら,日本一の下足番になってみろ。そうしたら,誰も君を下足番にしておかぬ。」

「成功の道は信用を得ることである。どんなに才能や手腕があっても,平凡なことを忠実に実行できないような若者は将来の見込みはない。」

以上は阪急グループの創業者小林一三の名言です。この言葉を本日卒業したゼミ生に贈ります。

小林さんは,阪急電鉄を核に,宅地開発,百貨店,ホテル,プロ野球,歌劇など,大衆向けビジネスをいくつも創業しました。鉄道会社の成長戦略パターンを確立した人でもあります。

その小林さんが残した名言は凡事徹底を説いています。つまらないと思われる雑用をきちんとやり通すということです。業務というものは,華やかに見える部分はわずかで,ほとんどが外からは見えない地味で決まりきった作業で構成されています。その作業は一見変わることなく,繰り返されます。誰しも,注目を集めない,繰り返しの地味な作業を担当したくはありません。しかし,それを誰かが行わなければ,業務は進行しません。組織人に求められることは,組織業務の全体像を見極め,そのなかで自分の役割を確実に果たして,組織に貢献することです。つまらなそうな作業であっても,業務の一部になっているのならば,それを確実に担当する必要があるのです。

小林さんの言葉にある下足番というのは,店舗や旅館でクツなどの履物を預かる役のことです。昔は,たいていの店舗は土足禁止で,顧客が店内に入るときには,履物を脱がなくてはなりませんでした。その履物を預かり整理するのが下足番です。来る日も来る日も,汚れた履物を扱うのはつまらない雑用のように思えます。しかし,この下足番が,顧客のファーストコンタクト,店舗で最初に接する店員だと考えるとどうでしょう。しかも,店舖を出るときに顧客が最後に接するのも下足番です。その店員の働きぶりで,顧客の店舗に対する印象は決定的に左右されるといえます。そう考えると,つまらぬ役ではなく,組織にとって重大な貢献をする役であることが分かります。

小林さんは,大衆の心理と行動を知るために,駅の改札やレストランの入口に立ち,顧客を観察し続けたといいます。小林さんに範を求め,小売業界でトップに立った中内功さん(ダイエー創業者)は小林さんのことをつぎのように評しています。「徹頭徹尾,大衆の動向を把握し,そこからマーケティングを進めた商人中の商人。」

『逸翁自叙伝』(講談社学術文庫) など小林さんの著作はいくつか出版されています。また小林さんの評伝は,小島直記『鬼才縦横上下』(日経ビジネス人文庫)など多数発表されています。マーケティングを学んだ皆さんには是非薦めます。きっと,今後の仕事に役立つアイディアが得られるでしょう。

追伸
今年度の卒業生で思い出すのは,名城公園キャンパス一期生ということです。彼らの受験時,新キャンパスが人気を呼び,入試倍率は例年よりも高く,入試は難化しました。したがって,近年最も学力水準の高い学生たちでした。いつもは不人気のうちのゼミは,この学年では志望者が多く出て,定員を充足しました。ゼミ生は男女半々で,仲の良さと緊張感のある人間関係が結べたと思います。ゼミらしい雰囲気が醸し出された2年半だったでしょう。卒業後,時間が空いた時には,気軽にキャンパスを訪ねて欲しいと思います。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする