愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

読書2

2010年02月24日 | Weblog
春休み中の読書案内パート2です。今回は企業事例を取り上げたビジネス書を紹介します。

今もっとも日本で注目されている企業といえばファーストリテイリング(ユニクロ)です。それを取り上げたビジネス書は書店にたくさんに並んでいます。私がお勧めするのは,ファーストリテイリング現会長・社長柳井正さんが書いた『成功は一日で捨て去れ』新潮社です。

これには,2005年に3年ぶりに社長に復帰してから最近までのトップの目から見た事業活動の足跡が書かれています。単に活動事例が記述されているだけでなく,それに対するトップの思いや,活動の成果が出た後の評価が書かれている点が興味を引きます。

ユニクロの成功事例が書かれ,それに対するトップの感想や内部事情が語られているのは興味深いでしょう。しかし,とくに面白いのが,ユニクロの危機として安定志向病が蔓延していることが指摘され,これを如何に払拭していくかということがしつこく語られている点です。また,野菜販売,海外進出,企業買収での失敗を率直に失敗と認めその原因と影響について当事者の視点で語られている点も目を引きます。

この手の本ではことさらに成功事例が強調されるものです。今破竹の勢いで成長を続けるファーストリテイリングなら成功事例のオンパレードになってもおかしくありません。しかし,現役のトップにしてみれば,成功に酔うような余裕や隙はないのでしょう。本のなかに企業の自戒・叱咤が染み渡っています。執筆の最後箇所に次のような文があります。「経営は『砂上の楼閣』と同じである。自己点検,自己変革しなくなったら,その時点で終わる」と。柳井さんは自らと社員を奮い立たせるためにこの本を書いたのでしょう。

組織外部にいるジャーナリストや学者が書いた本と違い,この本は内容があまり整理されていません。すこし読みづらい印象を持ちます。しかしそれがかえって,緊迫感を得させてくれます。経営の厳しさが伝わってくるのです。

なお,柳井さんがかつて書いた『一勝九敗』新潮社を併せて読むと,ファーストリテイリングの事業活動の道筋がもっと詳しく理解できます。
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対応のまずさ

2010年02月07日 | Weblog
連日,経済関連ニュースのトップはトヨタのリコール問題です。とうとう戦略車のプリウスまでが国内でリコールということになってしまいました。5日には社長がお詫び会見をしました。しかし,事態は沈静化せず,批判の声は高まるばかりです。

この問題でのトヨタの対応を見ていると,過去,不祥事を起こして破綻にまで追い込まれた企業のまずい対応に共通することがあります。

一つは,情報が小出し。日を追って,新たな故障や苦情情報がメディアに出てきます。一度に悪い情報が皆出てくるのではないのです。こうなると,これで悪い情報は最後です,対策を打ち出しましたから安心してくださいといわれても,「また悪い情報が後に出てくるのではないか」と消費者はかんぐってしまいます。企業は信用されないのです。

もう一つは,トップが出てくるのが遅い。リコール問題が発生した時,最初に会見したのがアメリカ子会社の社長,つぎに出てきたのが日本本体の品質管理責任の副社長,そしてつぎにやっと本体社長が会見しました。当初アメリカにおいて問題が噴出したのでしたが,数百万台という膨大な車をリコールするわけですから,トヨタ全社(および多くのグループ企業)挙げての対応になるはずです。しかし,最初に本体のトップでなしにアメリカの子会社社長が会見したということで,トヨタはこの問題を軽く考えているというメッセージを暗に流してしまったのです。

アメリカのメディアはトヨタに対して辛辣で,あるアメリカのメディアは「毎週のように新しい女の話が出てくるタイガー・ウッズのようだ」と批判したとか。リコールの規模を考えれば,当然かもしれません。

一つ残念な(少々妙な)批判がありました。社長の会見場所が名古屋だったことに対して,「なぜ東京じゃないんだ?東京から2時間もかかるような場所で会見するのだ?」と,あるメディアが批判したそうです。アメリカ・メディアの特派員やジャーナリストはたいてい東京にいるので,その人たちの便宜を考えれば,名古屋で会見というのは自己本位的な感じがしたのかもしれません。私は地方分権が叫ばれている今,東京一極集中を脱して,本社を構えている名古屋で会見を開いたトヨタをすがすがしく思ったのですが・・・。

ともかく,マーケティングの中心である顧客対応の生きた教材(良くも悪くも)をトヨタは提供してくれています。学生の皆さんも是非注目してください。
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