マジョルカピンク

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万引き家族

2018-06-25 19:30:05 | 映画
カンヌで最高賞のパルムドールを受賞し、ただ今大ヒット中の本作。
いやーさすがですね。
これまでの是枝監督作品の中で最高傑作といえるかもしれません。
現代の日本が抱える闇やどうしようもない鬱屈としたもの、貧困、虐待、高齢化社会などあらゆる社会問題を凝縮して詰め込み、なお退屈させず話も面白いという。もうなんか凄いというか、一つ一つの場面、セリフに深い意味があり、深く考えされました。感動というより見て自分の立ち位置が不安になるような、足元がぐらつくような危うさを感じて正直鑑賞後の気分は良くない(笑)でも目を背けてはいけない、と言われているような、何かね日本人として他人事ではないと思わせる、なんともやるせなく切ない作品でした。
まずね。宣伝で謳っているのとちょっと違って、決して一家は万引きで生計を立てているというわけではないのよね。なんか上辺の宣伝文句とタイトルのインパクトがありすぎて、なんか痛快な映画かと勘違いした方はいませんかね。
何週間も興行成績1位なので、ネタばれしてももう構わないと思うのですけど、この家族、全員他人なんだよね。ベタベタ仲良くしている祖母と孫とおぼしき樹木希林と松岡茉優でさえ実は血のつながりがない。でも端からみれば3世代ぐらいの家族なのかなと思わせる。
ここ数年、妙な事件の陰に実は親子・家族に見えていた同居人たちが実は家族ではなくて…みたいな不気味な背景があることが多いように思う。こういうのは偽家族とか偽装家族といって、日本で密かに増えている問題なのだという。
この物語。前半と後半で印象が異なってくる。事件が発覚したところから追っていくとすれば異様でセンセーショナルな事件であり、犯罪者の夫婦がアカの他人の老婆の家を乗っ取り、子どもを誘拐してきて万引きの手伝いなどをさせる、というとんでもない常識外れの悪党・異常者ということになると思う。
でもその実態は、貧しかったり家族に見捨てられ寄る辺ない人たちが身を寄せ合って生きていたということなのだ。その暮らしぶりは一見、幸福な家族そのものだ。夕方の惣菜屋の揚げたてのコロッケ、白菜だらけの鍋、電車で出かけた夏の海、縁側で音だけ聞く隅田川の花火、そうめん、茹でたてのとうもろこし、少しだけ降った雪で作った雪だるま。豊かさとはちょっと違うけど、お互い干渉しすぎないように傷つけあわないように距離をとりながらの家族ごっこ。
どう考えても未来はないしいつかは詰むのに、なんとかなるかもしれないともがいて結局この疑似家族は壊れてしまった。でも多分、監督はみんなの未来までは提示せず淡々と描いているだけなので我々観客は想像するのみだが、賢そうなあの少年も可愛らしいあの少女も親もとへ帰ったとしてもとても幸せな将来が待っているとは思えない。幼い時、この偽装家族と暮らした幸せな日々をいつかまた思い出すだろうか。そう思うととても切なくなる。
個人的に実の親に育てられるのが最善なのかというと、子ども好きで虐待とかのニュースを見るたびに気が狂いそうになる私は、「NO」と言いたい。そりゃ完璧な親なんていないかもしれないが、母性というのは幻想で眉唾だと自分は思う。生んでみたら可愛かったという人もいれば、そう思えないと悩む人もいる。子供を嫌う母親などいない、という思い込みがそうでない人を追い込んでいるんじゃ?人それぞれとしか言いようがないと思う。
劇中でも子供のいない安藤サクラに、警察の女性が実の親のことを批判する資格ない、産めない嫉妬でしょうと言われ肩を落とすシーンがありましたが、あれは私には堪えた(泣)
確かに母親になったことはないけど、可愛い子に暴力を振るう気持ちなんてわかりたくもない。
でも親になったことがないあなたにはわからないでしょうと言われると、それが負い目のように感じているからぐうの音も出ないのだ。でも経験してないなら黙っててと言われると世間に対して何も言えなくなるし、社会に参画できなくなると思うのだ。
子は親を選べない。リリー・フランキーと安藤サクラの夫婦も、多くは語らないまでも二人とも虐待または放置され、親の愛情を受けられない人生だったのだろうと思う。教育もちゃんと受けられず、愛情表現もわからず。子供たちを拾ってきたのも、単なる優しさより自分自身の子供時代を慰撫するような思いがあったのだと思う。本当に悲しいなあ。
おばあちゃんの人生もなあ。自分の本当の子たち孫たちはどうしたんだろう。おばあちゃん自身にも闇があったのが怖かった。誰にでもまあ…秘密はあるわな。

自分は一つだけ他人に自慢できることがある。
うちは家族みんな仲が良い。父親も母親も善良な人間で、夫婦仲も良くお互い思いやりを持って助け合って生きてる。私と妹も仲良しだ。友人より妹といる方が楽しいぐらいだし、妹の子供たち甥と姪は実の子のように可愛い。妹の旦那とも友人のような感覚。
家族の問題で悩んだりしている人の話を見聞きするたび、自分は幸せななんだろうなと思う。
なんつーか、昔は家族が仲良いのは当たり前のことだと思ってたから、特になんとも思わなかった。そんなことより賢い親やお金持ちの家に生まれたかったなどと思ったこともありました(笑)でも違うなあ。一番は家族が仲良く相手を思いやりながら暮らすこと。そして健康であること。これじゃないかな?あーでもある程度余裕がなければ人には優しくなれないし文化的な生活もできないか。あれ?それは憲法で保障されているはずなのにね。
簡単なようだけど今の日本はそんな平凡な幸せも贅沢なことかもしれないね。貧困は暴力や不幸を伴って連鎖する。


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