目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

山からの絵本

2013-11-09 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

001 『山からの絵本』辻まこと(ヤマケイ文庫)

ドイツ文学者の池内紀氏推薦の本で、なんとなく頭の片隅にあったのだが、紀伊国屋書店で見かけて、衝動買いしてしまった。この手の本は、地元では入手しづらいからねえ。もちろんamazonで購入という手っ取りばやい方法はあるのだが。

さて、本の内容紹介に移ろう。この本は他愛のないものから、重大な事件までさまざまな山に関わる小さなストーリーで編まれている。そしてそれぞれのストーリーにピッタリの、カラーだったり、モノクロだったりの挿絵が入っている。これがどれも非常に味があっていいのだ。『山からの絵本』とはいい得て妙だ。無聊をかこっているときに何気なしに眺めるにもうってつけかもしれない。

たとえば、こんな話が出てくる。富士五湖のひとつ、西湖での話。西湖湖畔の小屋に仲間とともに宿泊するのだけれど、その際にメシ当番を決めていて、当番以外の人は山に行ったり、湖で釣りをしていたりする。メシができたときに、大盛りのごはんマークの幟を高々と掲げるんだね。そうしたら皆メシだメシだと集まってくる。ところが、この幟を見たアカの他人のハイカーがてっきり食堂があるものと思い込んで、湖畔をぐるりと長い道のりを歩いてやってくる。何かクスッと笑える話だよね。

こんなのもある。ちょっとばかり深刻な話。重篤な状態の方が登場する。自殺志願者で、山道でヨレヨレの状態で発見される。人助けだと通りすがりの人が、近くの集落に連れていくのだが、これが厄介なことになる。集落の人はみな連れてこられては困るのだ。かといって見殺しにもできない。ジレンマの極致。結局は、その重篤な人を助けるのだが、引き取りにくるはずのお兄さんが一向に現れない。そして……。

辻まことさんが熊に遭遇した話も出てくる。私も鼻曲山で遭遇したけれども、むこうがスタコラサッサと逃げていったので、どうということはなかったのだが、辻さんの場合は、熊と目が合ってしまう。しかも熊はなぜか興奮して突進してくる。あまりにも怖すぎるので、想像は中断したほうがよさそうだ。ただし辻さんがこのエピソードを書いているということは、このときに死ななかったという証である。この話の落ちは、熊遭遇の後、ビクビクしながら、熊よけに大声で歌いながら歩いていて、それを知り合いに目撃されてしまったということだ。なんともほほえましい(?)というか、カッコ悪いというか、そんな告白になっている。

ちびちびと日本酒をなめるかのように、秋の夜長に読むには格好の本のようだ。

山からの絵本 (ヤマケイ文庫)
クリエーター情報なし
山と渓谷社

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