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山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

田中陽希、酒田停滞期のインタビュー本『それでも僕は歩き続ける』

2021-05-17 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

田中陽希『それでも僕は歩き続ける』平凡社
 
田中陽希さんの日本3百名山ひと筆書きの旅は、コロナの非常事態宣言で一時中断し、山形県の酒田市で3か月ほど停滞を余儀なくされた。その間フリーライターの千葉弓子さんがロングインタビューを行い、まとめられたのがこの本だ。
 
田中陽希さんの今までの番組を見たり、本を読んだりしていれば、新しい情報が少なくて残念な感じは否めないが、ほほえましい子供時代の写真を見られるし、大学時代やアドベンチャーレースのスナップ、もちろん百名山ひと筆書きから現在までの、茶目っ気たっぷりの陽希さんらしい山登りカットも多く収録しているので永久保存版としての価値がある(?)。ついでにいうと、陽希さんのあの独特なイラストも要所要所に入っていて陽希ワールドを演出している。
 
それはさておき、本のなかで最も印象的なのは、2百名山のときに大勢のファンに追いかけられ、精神的に追い詰められた顛末。これは「グレートトラバース」の番組内でも紹介されていたけれども、もっと詳細な状況が書かれている。ファンが一人、二人来るなら、うれしいだろうけど、行く先々に大挙押し寄せ、山はおろか沿道にもいて、好物と公言したポテチをもってくる。話かけられて立ち止まり、一緒に写真をと言われてポーズをとり、サインをくださいと言われてペンを執る。それが連日時間や所かまわずとなると、さすがに気が休まらない。さらには行程の遅れにも結び付き、途中からGPSのリアルタイムの位置情報公開をやめることになる。いやはや。
 
行動食の選び方も紹介していて興味をそそった。行程が長いからだろうけれど、同じ重さならカロリーが高いほうを採用するという。よく食べるのは、焼き菓子でカロリーは高い。フィナンシェがベスト、マドレーヌやバームクーヘンもいいという。ただし菓子パンは、高カロリーではあるけれども、高所で袋がパンパンになったり、添加物を多く含むことから控えているとのことだ。冬場は、亀田製菓の柿の種、明治のアーモンドチョコレートを開口部の大きな500ミリリットルのペットボトルに詰め替えて持ち運ぶ。歩きながらでも取り出しやすく便利なのだとか。
 
総じてわたしのような年配者ではなく、若者に向けてのメッセージが多くつまっているのがこの本の特徴だ。読む人によって、印象が変わるだろうけど、陽希さんの人となり、人生への向き合い方、考え方がよくわかる本であることは間違いない。「グレートトラバース」を見ている人は手にとって損はない本、ぜひご一読のほどを。
 
 

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