アジアと小松

アジアの人々との友好関係を築くために、日本の戦争責任と小松基地の問題について発信します。
小松基地問題研究会

「学校エアコン補助一部廃止」について  

2016年08月17日 | 小松基地(騒音、訴訟)
「学校エアコン補助一部廃止」について  2016年8月

 7・27『北陸中日新聞』で、「『沖縄いじめ』ここまで?―防衛省 学校エアコン補助一部廃止」という記事が掲載され、インターネットで関連記事を探した。『沖縄タイムス』、『琉球新報』がすでに報道していた。

空調維持費補助の現状
 3紙を整理すると、2016年度から米軍や自衛隊基地周辺の騒音対策のための空調(エアコン)維持費への補助を一部(騒音基準3,4級)廃止する(空調設備新設・改修後)。

 2015年度に空調維持費を補助した施設は全国に262施設があり、そのうち沖縄は108施設である。金額では、全国で3億1700万円で、沖縄は2億1800万円(約7割)を占めている。

 この数字を見るだけでも、米軍・自衛隊基地による騒音被害がいかに沖縄に集中しているのかがわかる。

 削減の理由は「昨今の厳しい財政状況を踏まえ、制度の見直しをおこなうこととした」(防衛省広報)、「騒音が発生していなくても空調機を設置して維持費等を負担している公立学校との公平性を考慮した」(中谷元・防衛相)という(5/14【琉球新報】)。「公平性」というが、基地による騒音被害が沖縄に集中・偏在している状態を無視しており、撤回すべきである。

空調維持費補助の基準
 防衛省の防衛施設周辺防音事業補助金交付要綱によると、空調維持費補助の対象は下表のとおり4等級に別れている(表は当会が作成)。



 空調維持費補助は各施設(公共施設も民間施設も)が国(防衛省)に申請し、国が第1級から第4級、そして等級外を決定している。決定に学校(地方自治体)の関与する余地はないようで、国(防衛省)が一方的に決めている(小松市飛行場課の回答)。

 今回の改悪は第3,4級そのものをなくしてしまい、等級外にしてしまうという狙いが見える。要するに、第2級未満(授業1時間あたり80dB上が9回以下、又は85㏈以上が4回以下、1日の授業時間あたり90dB以上が9回以下)の学校を航空機騒音が一切ない学校と同じように扱い、空調維持費を払わないというのである。

 さて、小松基地では具体的にどうなのだろうか?

小松での空調費補助
 2006年度版『基地と小松』(小松市発行)には、「1973年度より行政措置として交付されている補助金で、小学校、中学校、保育所において換気、温度保持、湿度の各設備を使用したことにより、必要とした年間の電気料金、ガス料金または燃料油の代金に3分の2を乗じて得た額の範囲内の額が補助金として支給されている。また2002年度より高等学校にも支給されている」(105p)という説明がある。

 小松市関係の各年度の施設数と金額の一覧表をみると、1973年度は21施設、合計288万3000円、1980年度は46施設(最高)、合計2474万8000円、1984年度は35施設、3146万2000円、2005年度は35施設、2849万2000円、2014年度は28施設、1929万3000円となっている。

 1984年度からは、石川県関係として1施設58万円、2005年度は14施設2132万8000円、2014年度は14施設2135万8000円となっている。

 2014年度の小松市関係は第1級=14施設、第2級=4施設、第3級=4施設、第4級=6施設で合計28施設である。

 2005年度の35施設から2014年度の28施設に減少した理由は、「保育所は統廃合や民営化。学校は太陽光発電設置」(小松市飛行場課)にある。たとえば、安宅小、第一小は防衛省の補助金で太陽光発電設備を設置してあるので申請していない。民間施設は独自に申請しているので、小松市は掌握していないという(28施設以外にあるということ)。



 小松基地周辺の学校施設の3,4級は10校あり、騒音コンター地図で重ね合わせてみると、75コンターの外側に建っている。

 今後、第3,4級に該当する10施設が空調設備を改修すれば、国からの空調維持費補助が削減されることになり、小松市が自前でまかなわなければならなくなる(民間法人、石川県、加賀市、能美市、川北町関係施設は未調査)。

湧き上がる抗議の声
 3等級、4等級の空調維持費補助をカットすれば、基地周辺の子どもたちは静かな環境で勉強することが出来なくなる。沖縄の長い夏を空調もなく、窓を閉め切って授業を受けさせるなど、拷問的措置である。爆音下の沖縄では、空調設備があって、辛うじて教育環境が保持されているのである。

 「厳しい財政状況」を云々するなら、米軍への「思いやり予算」を廃止すればいい。基地を撤去すればいい。そして、騒音のない静かな環境でのびのびと勉強する機会を保証すべきである。政府・防衛省こそが教育の機会均等の原則を破っているという事実から問題を立てるべきである。

 沖縄の浦添市議会では「学校等における米軍航空機等による騒音の軽減を図っていくためにも、3級及び4級防音工事により新たに設置する空調設備の維持管理についても要綱を再度見直し、これまでと同様に補助対象とすること」(6/7)という意見書が採択されている。

 沖縄では激しく抗議の声が上がっているが、本土の基地周辺自治体では問題にもされていないようだ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 加納明弘著『お前の1960年代... | トップ | 食品ロスと事業系ゴミ »
最新の画像もっと見る

小松基地(騒音、訴訟)」カテゴリの最新記事