■横須賀 17 エレジー / 早川めぐみ (EASTWORLD / 東芝)
すっかり今では忘れらている「女にロックはできねぇ~」という間違えた常識に挑戦し、果敢に打ち破った女傑は大勢登場していますが、だからこそ、それを堂々のアイドル路線でやらかしたって、批判される筋合いは絶対にありません。
例えば昭和60(1985)年新春に本日掲載のシングル盤A面曲「横須賀 17 エレジー」で颯爽と芸能界にデビューした早川めぐみは、いきなりのウリが「歌謡メタル・エンジェル」でしたからねぇ~~~!?!
しかもファンは彼女の事を「めぐみちゃん」と呼んでいたというよりも、制作側や事務所サイドから、それを強要(?)されていたんじゃ~なかろうか!?!
と、まあ……、そんな勢いで発売されたのが作詞:売野雅勇&作曲:芹澤廣明という、その頃のローティーンに爆発的な人気があったチェッカーズに諸作を提供しているヒットメーカーコンビが書いた「横須賀 17 エレジー」でしたから、本来ならば普通のアイドル歌謡ポップスであるはずが、それに中島正雄が強引で痛快なアレンジを施してみれば、狙いがドンズバっ!
当然ながら、早川めぐみはルックスもキュートで可愛いもんですから、我が国のヘビメタ好きの青少年や野郎どもからは忽ちの熱視線でありました。
ちなみに、ここまでの日本ロック界においては、本城未沙子や浜田麻里がヘビメタ女王のトップ争いを繰り広げており、幾分マイナーではありますが、杉本誘里や早瀬ルミナ等々もレコードデビューしていたんですが、彼女達はアイドル性よりは本格派のボーカリストを標榜していたわけで、もちろんアイドル人気も当て込んでいた事はミエミエながら、レコードでもライブの現場でも、バックバンドの演奏は所謂「ジャパメタ」そのものでしたし、ボーカルスタイルはハイトーン主体でキンキン声の節回しばっかり……。
それゆえに好き嫌いが確かにあり、だからこそ無個性に思えたのがサイケおやじの偽りのない気持ちでした。
尤も、そのあたりは基本的にヘビメタがNGな体質もあるんですが、そんな中で登場した早川めぐみは、土台がモロに歌謡曲である事を隠そうともしない雰囲気が、サイケおやじには好ましかったんですねぇ~~♪
実際、件の「横須賀 17 エレジー」は聴けば一発!
歌謡ロックのヘビメタ的展開であり、バックの演奏メンバーにしても、 山本恭司(g), 北島健二(g)、難波弘之(key)、鳴瀬喜博(b)、青山 純(ds) 等々が参加しているもんですから、一瞬の緩みも無く、イントロのギターがブリティッシュロック王道の泣きメロを弾きまくれば、それに導かれて熱唱する早川めぐみの節回しが歌謡曲にどっぷりなんですねぇ~~~♪
あぁ~~、思わずカラオケやっちまいそうな、キャッチーな曲メロにせつない歌詞のバランスの良さは素晴らし過ぎますよっ!
ですから、局地的ではありましたが、それなりにヒットしたのは言わずもがな、続けて発売されたアルバムも好セールスを記録したのは、当時の状況を鑑みれば、ひとつのミラクルに近いものがあったと感じていましたですねぇ~~♪
ちなみに、ここでアレンジを担当した中島正雄は本職がギタリストで、確か関西の大御所ブルースバンドだったウエストロードにも在籍していたと記憶しているんですが、実はここまで述べた和製ヘビメタ界の女性ボーカリストの売り出しやプロデュースにも関わっており、後には B'z の売り出しにも大きな役割を果たしていますので、要注意です。
閑話休題。
しかし、肝心の早川めぐみは、この勢いに乗って次々にレコードを発売しながら、ヘビメタ歌謡路線が徐々に薄れ、シンセポップっぽい方向へとシフトしてしまい、なんとっ!?!
翌年にはフェードアウトしたというか、何時の間にか芸能界から消えてしまったんですよ……。
う~ん、僅か……、1年ちょっとしか活動していなかったんですよねぇ~~~!?!
これには、それなりに期待していたサイケおやじも、がっくりというか、この現実は、なんとも勿体無いと思うばかりです。
ということで、こ~ゆ~和製ヘビメタ界の女性ボーカリストの活躍は決してメジャーではありませんでしたが、一方ではアン・ルイスや本田美奈子という歌謡ロック保守本流の大ブレイクと微妙にリンクしていたんじゃ~ないでしょうか?
その意味で、早川めぐみの登場と短い大活躍(?)は、我が国の芸能史に刻まれる必要があるはずです。
昭和も末期の仇花とは思いたくありませんねぇ~~。