■哀しみのベラドンナ / 橘まゆみ (CineDisc / キャニオン)
アニメ作品はテレビや映画で安定的な業績が期待出来る「打ち出の小槌」ですから、エロスに満ちた劇場用本篇が作られたとて不思議ではないのですが、それが必ずしも成功するとは限らないところに芸術と興行の曖昧なバランスがあるすれば、昭和48(1973)年6月に封切られた「虫プロ」制作による「哀しみのベラドンナ(山本暎一監督)」は、それこそ真っ先に思い出される作品かもしれません。
というか、結果的に、この「哀しみのベラドンナ」は大コケし、その頃既に経営が悪化していた「虫プロ」が倒産する大きな要因となったのですから、尚更と云うしかありません……。
ご存知のとおり、手塚治虫が社長を務めていた「虫プロ」は同系アニメ作品として、「千夜一夜物語」「クレオパトラ」という劇場公開した2本の大人向けアニメ作品をヒットさせていましたので、さらにエロスに傾いた「哀しみのベラドンナ」を製作した意図は納得出来るんですが、前述したとおり、「虫プロ」の経営不振から手塚治虫が社長を退任していた事で基本的に「哀しみのベラドンナ」の制作には関わっておらず、だからでしょうか、殊更「クレオパトラ」で成功していた娯楽性の高いポルノチックな面白さが後退し、むしろ耽美的なエロスが描かれていたのは、ど~にも香りが高いわけで…… (^^;
ちなみに原作はフランスの歴史文学作家らしいジュール・ミシュレの「魔女」という事になっていますが、サイケおやじは全く読んだ事が無かったので、その深い面白さが理解出来なかったのかもしれません (^^;
しかし本篇のクレジットロールを確認すると、声優としては仲代達也、長山藍子、山谷初男、高橋昌也、中山千夏、しめぎしがこ等々、実力派の有名俳優が名を連ねておりますし、動画と静止画をミックスさせた映像手法はサイケデリックの残滓とも思えるところがあり、だからこそ賛否両論が渦巻いてしまった感は否めません。
また、佐藤允彦が担当したサウンドトラックや劇伴音楽が幾分勿体ぶったイメージだった気もしています。
さて、そこで本日掲載したのは、その「哀しみのベラドンナ」の主題歌になっていた同名曲をA面に入れたシングル盤で、これが作詞:阿久悠&作曲:小林亜星から提供された、映画本篇よりもエロいフレンチ演歌ポップスなんですよっ!
歌っている橘まゆみは、このアニメ主題歌のために、わざわざオーディションで選ばれたというスクールメイツ出身の新人という触れ込みなんですが、とにかく初っ端からのセクシーな喘ぎ声による節回しが川口真が十八番の欧州系ポップスアレンジによって増幅され、かなりファジーな制作方針が普通だった当時のテレビ歌番組でも、これは放送不可だったと思いますねぇ~~ (^^;
ですから、ラジオの深夜放送では、それなりに流れていた記憶もあるんですよ (^^♪
ちなみにアニメ本篇では、中山千夏が歌った楽曲もあったはずなんですが、レコード化されているのかなぁ~~~?
ということで、最近はコロナ禍の所為もあり、なかなか惹きつけられるエロ映画なんてものは絶滅状態……。もちろんネット配信やVシネ系作品も同様に停滞しているとあれば、ここは往年の「成人向けアニメ」っていう路線も復活するやもしれませんねぇ~~。
そんな期待を込めて、本日は拙文を綴ってしまったというわけです。
失礼致しました <(_ _)>