■僕と君のブー / Lobo (Big Tree / 日本フォノグラム)
洋楽を好んで聴いていると、いや、だからこそと言うべきでしょうが、日本人にはど~しても越えられない壁が言語の違いというやつでしょう。
それはもちろん歌詞の中身もそうですが、もうひとつ直截的に困ったのが曲名や歌手名&グループ名が、主にラジオで1回聞いただけでは覚えられず、おっ、素敵なメロディ♪♪~♪ と惹きつけられても、それをリクエストしたり、レコードを買ったりする時の目標を間違えてしまう危険性は常にあったのです。
まあ、平たく言うと、例えば「ホール&オーツ」という「男性デュオ」をラジオでヒアリングすると、「ホーランローズ」という所謂「ソラミミ」状態に陥り、それはもしかしたら「バンド」名と思い込まれる事もあるんじゃなかろうか……。
ですから、とりあえず覚えづらい原曲名にはレコード会社によって邦題がつけられ、またバンド名にしても、例えば「Dave Dee, Dozy, Beaky, Mick & Tick」な~んていう超長ったらしいものは「デイブ・ディー・グループ」とする潔さが、それこそヒットする条件のひとつでもありました。
さて、そこで本日掲載の1枚は輝かしき1970年代ポップスのひとつとして、我国でもラジオをメインにヒットしたハートウォームな人気曲ですが、そのひとつのポイントが既に述べてきたような事情を証明していると思います。
まず、なにしろ歌っているのが、ロボという、これ以上ないほど簡素な芸名ですし、その語呂の響きは「ロボット」「ジャイアント・ロボ」「ロバ」等々に共通するものとして、日本人には非常に馴染み易いものです。
また曲名についても、原題は「Me And You And A Dog Named Boo」という、比較的分かり易い英語でありながら、あえて「僕と君のブー」という、ドリフターズの木ブーに挨拶はしたのか? なぁ~んて、そんな関係無いことまで心に浮かぶほどの痛快さ(?)がありますから、そのウキウキしたメロディとアコースティックな感触も心地良いポップスフィーリングがさらに増幅され、ヒットに結びついたんじゃないでしょうか。
そして、その意味で上手く出来ているのがサビメロと歌詞の語感の気持良さで、曲タイトルとなっているフレーズを極めてシンプルにロックビートに乗せた冴えは絶品!
ちなみに特にアメリカの職業作家は、1950年代末頃からのR&R系白人ポップスを書くにあたって、作詞家には8ビートに乗り易い言葉使いが要求されていたそうですし、それは同様に所謂歌物ジャズスタンダード曲の歌詞が4ビートを意識して作られていた事の証左でもあるのでしょう。
閑話休題。
肝心の歌っているロボは、この日本盤ジャケットには本人の顔写真が無く、また裏解説にも履歴等々について、全く書いてありませんが、どうやらギリシャ系の白人シンガーソングライターらしいですね。
しかし当時は、とりあえず素敵なメロディとカタカナでも歌い易いビート感のあるリフレインがあれば、それがラジオ中心の洋楽ヒットに成り得る要因だったと思います。
こうして昭和46(1971)年の初夏~秋にかけて、この「僕と君のブー / Me And You And A Dog Named Boo」は見事に我国でもヒットし、忘れじの1970年代ポップスのひとつになりましたが、ロボ本人については、それほどの存在感が認識されていない現状は???
第一、このヒット曲にクレジットされている作者の「K.Lavoie」が、ロボ本人なのか? という疑問さえ、未だサイケおやじには知る由もありません。
また、これに続いて幾つかのシングル盤やアルバムも出たと記憶していますし、現実的にはアメリカでの活動はもっと華々しくて、1970年代前半だけでも、10曲以上の大ヒットを放っているので、きっと我国のラジオからもそれらが流れていたはずなのに、その中身についての鑑賞体験を覚えていないのですから、逆に言えば「僕と君のブー / Me And You And A Dog Named Boo」だけが突出してという事かもしれませんねぇ。
ということで、ポップスヒットに理屈は要らず、耳に心地良いフィーリングが優先されれば、OK!
と頭ではわかっているサイケおやじも、しかし納得出来るバックグラウンドがなければ、それを本気で聴くことが出来ないという体質も露わです。情けない……。