■April In Paris / Charlie Paker With Strings (Verve)
もろちんチャーリー・パーカーはモダンジャズを創成した偉大な天才ですから、その閃きはアドリブだけでなく、自らの音楽性全般多岐にわたり、いつまでも滅びることがありません。
つまり何時如何なる場合に聴いても、チャーリー・パーカーはチャーリー・パーカーであって、それは本人が一番認識していたはずですから、例えストリングスとの共演企画であっても、なんら躊躇すること無く己の音楽を貫けば、周囲は自ずと納得させられる真実が本日ご紹介のLPにもぎっしりと収められています。
A-1 April In Paris
A-2 Summertime
A-3 If I Should Lose You
A-4 I Didn't Know What Time It Was
A-5 Everything Happens To Me
A-6 Just Friends
B-1 They Can't Take That Away From Me
B-2 You Came Along (From Out Of Nowhere)
B-3 East Of The Sun (West Of The Moon)
B-4 Easy To Love
B-5 I'm In The Mood For Love
B-6 I'll Remember April
しかし例によって初っ端から大上段に構えた文章を綴るサイケおやじにしても、ジャズを聴き始め、それなりに概要輪郭が分かり始めてきた頃は、チャーリー・パーカーともあろう天才が、何故にストリングス入りのスタンダード演奏という軟弱路線をやったのか? その迎合主義に失望を覚えたのも確かです。
なにしろジャズ評論家の先生方が解説して下さる諸々によれば、チャーリー・パーカーはビバップと称されるモダンジャズを牽引した、所謂「尖がりまくった」ミュージシャンであり、そのヒップな感覚で演じるところは黒人アングラ音楽でありながら、白人にファンが多かったという文化的素養の凄さに結びついている実相さえありましたから、何も大衆に媚びる必要があったのか??
なぁ~んていう、結局それは世間知らずの独善しか思いつかない若気の至り……。
チャーリー・パーカーにしてみれば、もっと多くの人々に自分の音楽を楽しんで欲しかったはずで、当然ながら経済的な欲望も否定出来ないでしょうし、それはレコード会社や興行エージェントの思惑でもあったはずです。
そしてチャーリー・パーカーであれば、人種差別や進み過ぎた音楽性の壁なんか、絶対に乗り越えられる確信があったんじゃないでしょうか。
そして勉強不足のサイケおやじには確かな事は言えませんが、とにかくストリングをバックにした元祖イージーリスニングジャズの企画が持ち上がった時、おそらくはチャーリー・パーカー本人が一番ヤル気満々だったように推察しています。
さて、そこでこのアルバムのA面にはストリングスと共演した公式スタジオセッションの最も早い時期の記録である1949年11月30日の演奏が、またB面には翌年7月5日の録音から6曲を抜粋して収めた構成になっています。
ちなみに説明不要とは思いますが、各々のトラックはこれが初出ではなく、当然ながら最初はSPに収録されての発売から、アルバム単位に纏められた経緯にしても、まずは10吋盤があり、この12吋盤はその後という事になりますが、それにしてもアルバムタイトルを強くイメージ化したジャケットデザインは、なかなか秀逸ですよねぇ~♪
で、肝心の演目は上記したとおり、良く知られたスタンダード曲ばかりとあって、チャーリー・パーカーはストレートにメロディを吹奏しつつも、天才ならではの鋭いファーリングでそれをフェイクしたり、当然の如く用意されたアドリブパートでは、あのドライヴしまくったグイノリフレーズや抜群のタイム感覚による跳躍とウネリを堪能させてくれますよ♪♪~♪
そして気になるストリングスセクションとの関係については、必ずしも上手くいっているとは個人的に言い難いものがあって、なにかチャーリー・パーカー率いるジャズバンド側とストリングスグループの存在が遊離しているように聞こえるんですねぇ……。
このあたりは時代的な録音技術の問題もあるでしょうが、おそらくは同じスタジオでの一発録りだったと思われる状況の中、モノラルミックスにしては妙に両者の分離が良すぎるという贅沢(?)を言いたくなるのです。
ただし、これは特にA面のセッションに顕著なんですが、その両者の媒介となっているが如きオーボエによる彩りのアンレンジが、ちょいと捨て難い魅力になっていますよ。
ちなみにレコーディングセッション参加のメンバーはチャーリー・パーカー(as) 以下、レイ・ブラウン(b)、バディ・リッチ(ds)、スタン・フリーマン(p) 等々のジャズ系名人が基本のバンド構成に、全体のアレンジをジミー・キャロルやジョー・リップマンという、あまりジャズ者には馴染みの無い人達が担当したというところにも、その解明の秘密があるのかもしれません。
その意味で前述した印象的なオーボエがミッチー・ミラーによって演じられたのも意味深というところでしょうか。
それとチャーリー・パーカーが本格的にアレンジされた大編成のバックを使っての大衆音楽寄りの録音は、決してこれが初めてではなく、ヴァーヴと契約した後では既に1年ほど前からラテンやセミクラシック調のセッションを完成させていましたし、何よりも本人の駆け出し時代はR&B系のビッグバンドで研鑽を積んでいたのですから、殊更の意識は不必要!?
なんとっ! リアルタイムでのチャーリー・パーカーは、この「With Strings」の企画を実際のライプ興業でも実践し、公式&非公式に残されたそれらの音源を聴く限りでも、モダンジャズ本流の味わいはきっちりと楽しめるところにチャーリー・パーカーの天才性は証明されていますが、常に自分本位の結果が強烈に打ち出されてしまうのも流石だと思います。
と言うか、それはチャーリー・パーカーを聴く、あるいは聴けるという至福の前では本当に瑣末な事なんでしょうねぇ~~♪
ということで、このジャケ写を眺めつつ楽しむ天才の歌心は、また別格です。
繰り返しますが、まずチャーリー・パーカーがそこに存在し、リズム隊やストリングスセクション等々が後付け的になって聞こえるのも、素直に「良」として認める他はなく、これはおそらく現在最先端のレコーディング技術で同じものを録ったとしても、結果は同じに決まっています。
そう断言して後悔致しませんが、つまらない理屈をグダグダ書き連ねている自分が情けなるほど、懐の深~~い音楽が聴けるのは確かなのでした。