OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

エレキインストは死ぬまで好きだっ!

2012-01-22 16:17:36 | Rock

Out Of Limits / The Marketts (Worner Bros. / 東芝)

サイケおやじにも確かにあった所謂多感な十代の頃、巷には爆発的なエレキブームがあって、それは実際にはそれほど長くは続かず、直ぐにGSブームに移行したんですが、自分にとってはエレキインストでギターをバリバリに弾きまくりたいという願望が、ずぅ~~っと消えることがありません。

それはサイケおやじの保守的な体質の証明でもありますし、高校に入学してから本格的にエレキを手にし、同好会のバンドでは一丁前の気分になっていながら、本音は「エレキのバカ大将」でありました。

というのも、当時は既にエレキどころかGSブームも去っており、我国芸能界は欧米同様、シンガーソングライターのブームに寄るところの歌謡フォークが全盛で、しかも「四畳半」とまで形容されていたマイナーな歌手やグループによるレコードまでもが、大いに人気を集めていたのですから、普通に音楽を楽しむ若者にはエレキは不要……。

アコースティックギターが主流となったのも、特に我国では未だ「エレキは不良」という因習が消えていなかった事もありますし、なによりも「ロックじゃメシが食えない」というプロ側の事情も大きく、本物のロックバンドが日本に無かったといって過言ではないのが、昭和40年代後半の一般的な現実でした。

ところが同時に洋楽ではプログレを含むニューロックやハードロックが花盛りで、外タレの来日公演も増加の一途であり、アマチュアでも、それ風のコピーバンドが相当にあったという、実にミョウチキリンなパラドックスを現代のお若い皆様はどのように感じられるのでしょうか……。

さて、そんな状況の中、サイケおやじは本当に「密かに」という言葉を用いる他は無い態度で、コツコツと中古盤でエレキインストを集めていたんですが、それはリアルタイムのブーム時に買えなかったリベンジでもあって、殊更本日ご紹介のシングル曲「Out Of Limits」には強い思い入れがあります。

それはご存じのとおり、我国ではエレキの王者だったベンチャーズの人気持ちネタとして、ミステリアスなムードに彩られた魅惑のメロディは誰しも一度は耳にしているはずという有名曲♪♪~♪ 実際、シングル盤発売もされていて、かなりの売り上げがあったはずですし、サイケおやじも聴いた瞬間、本当に全身がシビれるほどの快感を覚えています。

ところが、これは当時から知られていたことですが、「Out Of Limits」は例によってベンチャーズのオリジナルヒットではなく、まさに「いただき屋」と称されていた本領発揮のカパー演奏であり、その本家本元こそが、本日ご紹介のマーケッツによるバージョンでした。

しかも、これがベンチャーズとは似て非なる魅力に満ちた、今日で言うところの「ガレージ」っぽいサウンドで作られていたのですから、これまた少年時代のサイケおやじがラジオで唯一度聴いただけで、心底シビれきったのも無理からん話!? と、ご理解願いたいわけですが、さらに経済的な事情から長らくレコードが買えなかった所為もあるのでしょう、その体験の鮮烈な衝撃度は時が過ぎるほどに大きく、強くなっていくばかり……。

ですから、ジャケットも痛んでいましたし、盤質もイマイチながら、捨値の中古で目標を発見した時は、何の迷いもなく即ゲット♪♪~♪

ちなみに昭和40年代後半の中古盤市場は、未だオールディズブームも本格的に到来しておらず、特にエレキインスト物は時代遅れの象徴として安値が当然であり、またそうであっても売れ残ってしまうのが常態でしたから、今思うと天国でしたねぇ~♪ そんな中でいろんなブツを手に入れられた幸運には、素直に感謝しなければなりません。

で、肝心のマーケッツによる「Out Of Limits」は、1963年末頃から翌年春にかけての全米大ヒットで、洋楽マニアの皆様には、ビートルズがアメリカのチャートでトップを奪った「抱きしめたい」と同時期の1964年2月のライバル曲と認識されているはずです。なにしろその時はチャート3位にランクされているのですから!

しかしマーケッツは例によってというか、実はレコード化されている演奏はスタジオミュージシャンによる企画セッションであって、1950年代半ばから実際の活動を続けている「真」のマーケッツは、この「Out Of Limits」には関わっていません。

それは後にベンチャーズにも深い繋がりを持つこととなる敏腕プロデューサーのジョー・サラシーノのプロジェクトであり、この才人は既に同じ手法を用いてルーターズという架空のバンドによる「Let's Go」を1962年に大ヒットさせていましたから、一応は1961年にデビューしたことが公式化されているマーケッツに対しても自信があったと思われます。

というか、実はルーターズの前にマーケッツ名義として「Surfer's Stomp」という、なかなか楽しいサーフインストを作り出し、見事にヒットさせていた実績も無視できないでしょう。

おそらく起用されたミュージシャンはトミー・テデスコ(g)、レオン・ラッセル(key)、アール・パーマー(ds) 等々のハリウッド芸能界を支えた裏方職人衆でしょうが、これがドンズバのジャストミート!

ベンチャーズのバージョンで強調されていたミステリアスなムードは当然例のイントロに残されていますが、むしろドラムスやギターのビートのストレートさ加減に、ロック性感度が濃厚だと感じます。

ちなみにベンチャーズのカパーバージョンは1964年に発表の傑作アルバム「宇宙に行く / ベンチャーズ・イン・スペース」のA面ド頭に置かれているほどですから、その造り込み方も半端無いわけですし、双方とも同じスタジオワークの結果として、一部のスキもあってはならず、それでも結果的に好き嫌いが出るのは十人十色というやつでしょうねぇ。

ということで、個人的には非常に好きな曲なので、イントロのミステリアスなフレーズやメインのリフ、そして間奏パートのキメ等々を独りエレキで弾いては、周囲に呆れられていたのが、若き日に「エレキのバカ大将」を目指していたサイケおやじの実相です。

まあ、今となっては苦しい言い訳ではありますが、当時だって自分でも「古いだろうなぁ……」とは思っていたんですよっ!

しかし、それでも止められなかったのは、「それが好きっ!」という正直な気持があったからです。

なにも格好つけたって、しょう~~がないですから。

そのあたりを軽く見られたとしても、それはサイケおやじの「OLDWAVE」な本性として、ご理解願えれば幸いでございます。

コメント (3)
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