OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ソニー・ロリンズの大らかな初心

2011-01-15 16:32:48 | Jazz

Sonny Rollins with The Modern Jazz Quartet,
                                                      Art Blakey, Kenny Drew
(Prestige)

世の中には「天才」と呼ばれる人が数多存在しますが、ソニー・ロリンズはその前に「真の」という修飾語が付けられるジャズミュージシャン!

それはアドリブという瞬間芸が命ともいえる世界において、単にテクニックとか音楽的知識を超えたとしか思えない天性のリズム感や豊かなインスピレーション、また何よりもテナーサックスという楽器を逞しく鳴らすという魅力は絶大です。

そこで本日ご紹介のアルバムは、ソニー・ロリンズが1950年代前半に吹き込んだ初期リーダーセッションを纏めたものですが、随所に未完成な部分は感じられるものの、既にして「ローリン節」と称賛された躍動感と閃きに満ちたスタイルが顕著になっているのは流石に天才の証明でしょう。

☆1953年10月7日録音
 A-1 The Stopper
 A-2 Almost Like Being In Love
 A-3 No More
 A-4 In A Sentimental Mood
 ソニー・ロリンズにとっては3回目の公式リーダーセッションになりますが、ここまでのキャリアの中では1940年代中頃からテナーサックスの巨匠たるコールマン・ホーキンスの薫陶を受け、バド・パウエル、マイルス・デイビス、J.J.ジョンソン等々のレコーディングに参加しては確固たる評価を得ていたので、当時は急速に注目を集めていたモダン・ジャズ・カルテット=MJQとの共演も泰然自若の演奏が繰り広げられています。
 それはソニー・ロリンズ(ts)、ミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、ケニー・クラーク(ds) という説明不要のメンバーにより、後にハードバップと称される東海岸ジャズ確立期の記録としても、最高のひとつでしょう。
 とにかく冒頭、ソニー・ロリンズが書いた如何にも「らしい」リフ曲の「The Stopper」からして、そのストップタイムを上手く使った躍動感は唯一無二! アップテンポで一糸乱れぬバックアップを展開するMJQの結束力には凄味さえ感じられますし、また同時にミルト・ジャクソンの奔放に暴れるヴァイブラフォンも、決してソニーロリンズに負けていません。
 ですから有名スタンダード曲を豪快にスイングさせた「Almost Like Being In Love」にしても、その基本になっている歌心が、このメンバーならではの素晴らしいジャズセンスで、ある意味では拡大解釈されていくんですが、実はそれこそが最高の瞬間を提供してくれますよ♪♪~♪
 あぁ、こんなに楽しいモダンジャズって!!?!
 このあたりがソニー・ロリンズの真骨頂として、後々まで貫き通される魅力なのでしょう。
 それは再びのオリジナル曲「No More」のストレートなハードバップスタイルとユーモア精神の融合、さらにデューク・エリントンの有名曲「In A Sentimental Mood」における堂々とした歌心の発露にも絶大で、特に後者は同曲の決定的なバージョンとして、モダンジャズでは十指に入るんじゃないでしょうか。ミルト・ジャクソンのアドリブも、まさに珠玉だと思います♪♪~♪
 ちなみに話しは前後しますが、この4曲は当然ながらSPやシングル盤での発売が先にあって、この12吋LPに収録されたのは1956年中頃だと思われますが、アルバム裏ジャケットに「Remastered by Van Gelder」と明記されているのは、所謂「再発」においてもモダンジャズの音作りが如何にして成立していったかを立証するものだと思います。

☆1951年12月12日録音
 A-5 Scoops
 A-6 With A Song In My Heart
 B-1 Newk's Fadeaway
 B-2 Time On My Hands
 B-3 This Love Of Mine
 B-4 Shadrack
 B-5 On A Slow Boat To China
 B-6 Mambo Bounce
 ソニー・ロリンズの公式では2回目のリーダーセッションですが、一般的にはプレスティッジと正式契約を結んだのは、ここからと言われているようです。つまりそれまではワンショット契約だったわけですから、ソニー・ロリンズが業界で完全に認められた成果が記録されているのも当然という、素晴らしい演奏が堪能出来ます。
 しかもソニー・ロリンズ(ts) 以下、参集したメンバーがケニー・ドリュー(p)、パーシー・ヒース(b)、アート・ブレイキー(ds) なんですから、ハードバップな勢いは保証付き!
 ちなみに、このセッションもSP等々で発売された後、LPとして完全に纏められたのは、この12吋盤が最初だと思われますから、やはり再発物の意義を確認したいところでしょう。
 そして肝心の中身は駄演がひとつも無いと断言して、これは絶対に後悔しないほどです。
 特に歌物スタンダードの「With A Song In My Heart」と「On A Slow Boat To China」は、ジャズの歴史本やガイド本では決定的な名演として必ず取り上げられている名演の中の大名演として、サイケおやじも完全KOされるトラックです。とにかく大きなウネリの中で発揮される歌心満点のアドリブとフェイクの妙技は必聴でしょうねぇ~♪ 一瞬、小節単位の曲構成を無視したかのような跳躍的なフレーズが出るスリルは、まさに快感♪♪~♪
 もちろん、そのあたりの独得のノリがセッション全曲で完全披露されていることは言うまでもなく、既にしてファンキーなフィーリングが滲むブルースの「Scoops」、あるいは曲全体を俯瞰したような大きな躍動感が凄すぎる「Newk's Fadeaway」といった自らのオリジナルにおいても、その怯むことないアドリブとアドリブから作り出したようなテーマリフの相関関係は痛快至極です。
 また「Time On My Hands」「This Love Of Mine」「Shadrack」といった、ちょいと地味なスタンダード曲においては、オリジナルメロディよりも素敵なアドリブフレーズが出てしまうんですねぇ~♪ もはやテンポ設定とかコード進行とか、そういう約束事がそのまんま全て、ソニー・ロリンズという音楽になっている感じでしょうか。
 その度量の大きさは、モダンジャズでは理想のひとつだと思います。
 また当然ながらリズム隊の堅実な助演も印象的で、時にはハードエッジなビートで鋭く攻め込み、またある時には膨らみのあるグルーヴを作り出しては、見事に天才をバックアップするですから、この3人も本当に偉大で、殊更「Mambo Bounce」におけるラテンビートとモダンジャズの融合が強靭なハードバップに昇華される展開はお見事! ハードドライヴィグな胡散臭さが実に良い感じです。

☆1951年1月17日録音
 B-7 I Know
 これこそがソニー・ロリンズの最初のリーダーセッションとされる名演で、おそらくはチャーリー・パーカーが十八番にしていた「Confirmation」の変奏なんでしょうが、初っ端からソニー・ロリンズがモロ出しのフレーズを大サービス♪♪~♪ もう全てがアドリブで作られているんでしょうねぇ~♪ 最高ですっ!
 ちなみに有名な伝説になっていますが、この1曲が残されたのはマイルス・デイビスの強い推薦によるものらしく、以前からソニー・ロリンズの才能と実力を高く評価していたマイルス・デイビスが自身のリーダーセッションに参加したソニー・ロリンズをこの機会にレコーディングしてくれるよう、制作者側に頼み込んだ結果だったとか!?
 ですから、メンバーはソニー・ロリンズも含めて、その居残り組がメインのパーシー・ヒース(b) とロイ・ヘインズ(ds) に加え、マイルス・デイビスがピアノで参加しています。
 そして堂々の主役を見事に演じきったソニー・ロリンズは、後の完成されたスタイルからすれば些か未熟な部分をモダンジャズならば許される豪放な味わいに変換させるという、若さゆえの特権で押し切るんですから、やっぱり天才は違います。
 この時、なんと21歳!
 個人的にも非常に好きな演奏です。

ということで、全てが3分前後のトラックばかりなのが物足りないと思う本音もありますが、しかし短い演奏時間であればこその集中力が密度の濃い仕上がりに直結したという結論も導かれるでしょう。

既に述べたように、モダンジャズはアドリブ命ゆえに、下手したら自己満足&ジコチュウな表現に長々と時間を費やすだけの音楽になる危険性もありますから、限られたスペースの中で、どれだけ自分の主張を展開出来るか!?

そうした点もジャズを楽しくする大切な要点かもしれません。

ですから、このアルバムに収められた優れた演奏がソニー・ロリンズの天才性を十分に証明しているのは当然の事であり、ソニー・ロリンズもまた、ここに記録された初心を忘れない姿勢を貫いているのは、皆様が良くご存じのとおり♪♪~♪

その大らかさが、最高の魅力なのでした。

コメント
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